無敵の戦神が来臨しました
クリスはゼウスの闇の一撃を躱す自信はなかった。
しかし、今回の作戦の目的はアレクらの救出だ。ゼウスに勝つことではなかった。それで今まで攻撃せずにただただ、耐えてきたのだ。
しかし、防御だけでは限界だった。
闇の奔流がクリスに向かってきた時、クリスは攻撃することを決意した。
真っ黒な塊がクリスに到達する直前クリスは転移した。
「クリス!」
一方ボフミエの宮城ではオーウェンが悲鳴をあげていた。
「クリス様」
今回は全員が画面を見て悲鳴、ないし固唾を飲んでみていた。
クリスが真っ黒な闇の奔流が到達する前に消えて皆ホッとする。
ゼウスの必殺超超スーパー闇の一撃、聞いているだけで恥ずかしいネーミングの必殺技はクリスの転移で行き場を失い、後ろの宮殿を直撃、凄まじい爆発音とともに、宮殿は崩壊した。
「なっ」
ゼウスが思わず声を漏らした時だ。
クリスがゼウスの前に転移してきたのだ。
ゼウスはぎょっとした。
「これでも喰らいなさい」
クリスは残りのすべての力を使って雷撃していた。
凄まじい光の雷撃は至近距離からゼウスを直撃した。
ゼウスは弾き飛ばされた。
普通は弾き飛ばされてまっ黒焦げになるはずが・・・・
たしかにゼウスは弾き飛ばされたが、まっ黒焦げにはなっていなかった。
「うそ」
それを見てオーウェンが唖然としていた。
「クリス様の必殺技が効いていない」
イザベラらは唖然とした。
「クリス、逃げろ」
オーウェンは大画面にかじりついて叫んでいた。
ゼウスはニタリと笑ったのだ。
そして、ゆっくりと立ち上がる。
「わっはっはっはっ」
そして高笑いをあげた。
「小娘よ。余に雷撃など効かんわ。愚か者」
そして、余裕で歩こうとするが、少しよろける。
「んっ?」
ゼウスは焦った。全くの無傷というわけではなく、少しは効いているようだった。何しろ聖女クリスの攻撃には聖魔術も含まれているのだ。
「ふんっ、小娘よ。少しは出来るようじゃな」
しかし、ゼウスはニタリともう一度笑った。これくらいなら大したことはない。
「しかし、これまでじゃ。余の必殺技食らうが良い」
クリスはもう立っているだけで精一杯だった。
横を見ると魔王は親衛隊の大半を倒し、ジャルカはのらりくらりとポセイドンの攻撃を躱しているところだった。
まだ、帰るわけにはいかなかった。
でも、次の一撃を躱すすべは無かった。
(皆、オウ、ごめん、ここまでしか出来なかった)
クリスは心のなかで謝った。
「必殺超超スーパー闇の一撃」
そう叫ぶやゼウスは杖を振り下ろした。
ゼウスの周りに真っ黒悩みの塊が渦巻き、それがクリスに向かって怒濤のごとく殺到した。
もう立っているのもやっとのクリスにそれに対抗する手段はなかった。
真っ黒な奔流はクリスを直撃するとクリスはボロ雑巾のように吹っ飛ばされていた。
「クリス!」
「クリス様」
オーウェンの大声と皆の悲鳴が執務室に響く。
クリスは今までのことが走馬灯のように脳裏を過った。
楽しかったことも苦しかったこともそしてオウのことも。
しかし、クリスは施政者だった。すべてのボフミエの民に責任があり、今回の攻撃軍の総責任者だ。
本来ならばゼウスを倒すかどうにかせねばならなかったのだ。しかし、その力もなかった。クリスは最後に神に祈った。
(シャラザールよ。何卒お力をお貸し下さい!)
(判った、小娘よ。さっさと気を失え!)
(えっ?)
クリスは気を失う前に変な声を聞いたような気がした。
「ふんっ、シャラザールの子分共がどれだけやれるかと期待して来てやったのに、大したことは無かったの」
ゼウスはつぶやいていた。
「さて、残った敵を片付けるか」
そう言うと後ろを見ずに立ち去ろうとした。
その瞬間だ。
ダンっ
凄まじい巨大な威圧感の塊が背後に現れたのだ。
「な、何だ」
慌てて振り向いたゼウスに、凄まじい斬撃が直撃していた。
油断していたゼウスはひとたまりも無かった。
斬撃に吹っ飛ばされて隣の宮殿に頭から突っ込んでいた。
「ふんっ。ゼウスのボケナスめ。長引かせよって、今回も出番が無いかとヒヤヒヤしておったわ」
そこには斬撃を放った剣を持った、巨大な気を纏った戦神シャラザーがやる気満々で、仁王立ちしていたのだった。
ついに真打ち登場です。
帝都は消滅してしまうのか。次話は今夕更新予定です。








