転移攻撃を始めました
ジャルカの攻撃によって広場に勢ぞろいしていた魔道師団は大半が消滅していた。
凄まじい爆発が、宮殿に起こる。
それと同時にジャスティン率いる騎士隊と魔道士は地下牢に捕まっているボフミエの官僚を解放に向かった。
ジャンヌとその部隊はアレク救出に飛び出した。
残ったのはクリスとクリスの親衛騎士とジャルカ、あと、一部の魔道士のみになった。
今回のクリスの役割はまず、陽動なので、無事に建っている目立つ建物に向けて手を構えると手当たり次第に雷撃を始めた。
次々に尖塔などに命中して炎上していく。
帝都で目立つ尖塔の多くがこの攻撃にて消滅した。
ビアンカはこのまま、何も現れずに帰りますようにと祈っていた。
今回の作戦のメインはアレクとそれに同行して囚われた人々の救出だった。別にゼウスなんて化け物と戦わなくてもいい。最後はシャラザール様が出てくればなんとかなるという思いもあるが、それまでに自分が無事である保障なんて無いではないか。
しかし、その願いがうまく通るはずもなかった。
「ゼウス様。本当にあやつらは転移攻撃に出てきたみたいですぞ」
魔王がゼウスに報告する。
「ふんっ、シャラザールの子分共か。どれ、どれだけ出来るか、相手をしてやろう。その方も来い」
ゼウスは魔王に命じていた。
ゼウス、魔王、ゼウスの兄のポセイドンの3人は転移してクリスらの真上に現れた。
「クリス様。真打ちが登場しましたぞ」
「そのようですね」
「小娘、殺されに来たのか」
ゼウスがクリスに叫んだ。
「我が同胞を助けに来たのです」
「ふんっ、余に勝てるとでも」
「やってみねば判りますまい」
クリスが言い切った。
「ではこれでも喰らえ」
まず、ゼウスが爆裂魔術をクリスに放った。
クリスは障壁で防ぐ。
「ふんっ。ではこれでどうだ」
ゼウスは杖から雷撃を放った。
しかし、これも、クリスは障壁で防ぐ。
次々に雷撃するが、クリスは全て障壁で防いだ。
「なかなかやるではないか小娘よ」
ゼウスは薄ら笑った。
「準備運動は終わりじゃ。そろそろ本気で行くぞ」
ゼウスは杖を持ちなおした。
「超、スーパー闇の一撃」
ゼウスはいきなり必殺技を使った。
ゼウスから真っ黒なおどろおどろしい暗黒の奔流がクリスを襲う。
しかし、それはクリスの障壁で防がれた。
前回と違い、クリスは自分だけを守れば良いのだ。これくらいならば自分の身を守るくらいは出来る。今回のクリスの役割はゼウスを引き付けて耐えきるというものだ。魔王は親衛隊の面々が、ポセイドンはジャルカがなんとかしてくれるはずだった。
周りには凄まじい被害を受けているが、守るのが自分だけと言うことはなんとかなるはずだった。救出が完了すれば、後は最後の秘密兵器でなんとかなるはずだった。
それまで持ちこたえさえ出来れば良いのだ。
「ほう、その方少しはやるようになったではないか」
しかし、ゼウスはまだまだ余裕だった。
「ではこれではどうだ」
方向を変えて次々に攻撃してくる。
最初は余裕だったクリスだったが、徐々に疲れてきた。
「小娘や。どうしたのじゃ」
ゼウスは余裕だった。
汗一つかいていない。
一方の執務室では、それを見てオーウェンが真っ青になっていた。
「クリス、頑張るんだ」
映し出される大画面の真ん前で必死に叫んでいた。
「あああ、こんなんだったら俺も行くんだった」
「お前が行っても足手まといになるだけだよ」
あまりにも鬱陶しくなってヘルマンが叫んでいた。
「ヘルマン。なにか言ったか」
オーウェンの地獄からの声が聞こえた。
オーウェンは叫びながらもヘルマン以上に仕事を次々にしているのだ。
「いえ、なんでもありません」
「ふんっ、減らず口聞いている暇があるのならばこの仕事回してやるよ」
「えっ、いえ、そんな」
ヘルマンは蒼白になった。今以上の仕事なんて無理だ。
「各国へのノルディン帝国への攻撃依頼文だ。直ちに発送させろ」
「そ、そんな」
ヘルマンは真っ青になっていた。
「グチグチ言わずにやれ。すぐに必要なことだ。回せる手はすべて使う」
固まったヘルマンにオーウエンが無情にも叫んでいた。
「俺は各国の侯爵クラス以上に個別の依頼文を書く。何なら代わってやろうか」
オーウェンの無情な声が響いた。
「あああ、クリス頑張るんだ」
オーウェンはヘルマンを一瞥するとまた悲壮な声を出しだした。
「小娘よ。よくぞここまで頑張ったな。褒めて取らすぞ」
ゼウスはニヤリと笑った。
クリスはハアハア息が荒く、立っているのも既にやっとだった。
次の一撃躱せる自信がない。
しかし、ゼウスは待ってくれなかった。
「喰らえ、必殺超超スーパー闇の一撃」
叫ぶやゼウスの周りから光が無くなった。
どんどん闇がゼウスの周りに集まってくる。
そして、真っ暗闇の中から大量の闇の暗黒の奔流が一気にクリスに襲いかかったのだった。








