表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
皇太子に婚約破棄されましたーでもただでは済ませません!  作者: 古里@3巻電子書籍化『王子に婚約破棄されたので義理の兄が激怒して
第二章 大国での失恋

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

42/480

赤い死神は外交の餌を差し出す

食事が終わると大使を伴ってアレクが王宮に来た。

アレクのところにいたジャンヌは朝を迎えるとさっさと帰って行った。

アレクとしては珍しく素直にジャンヌが帰って行ったことに驚いたが、

これでじっくりとオーウェンを邪魔出来るとホッとしていた。


「今回はトリポリの国王にも同席してもらいますが、ドラフォートとノルディンの皇太子が中心になって調印するという次代の仲の良さを、印象付けるにこれほどの機会はないと思います」

アレクがいかにも用意周到苦労して整えたように言う。

アレクにとってトリポリなんてノルディンの属国と化していて何でも言う事を聞く

便利な国だった。


「いやあ、さすがに大国ノルディンの皇太子殿下だけはあられますな。私としても、ノルディン国とは今後とも是非とも手を携えて行けたらなあと思っておったのですよ。

いつも貴国の皇帝陛下には相手にされませんでしたがな」

国王は礼を言うが嫌味も言わずにはいられなかった。

「今回の件は皇帝も喜んでくれていますよ」

その嫌味もアレクは流す。

ノルディンの皇帝としてもドラフォードとしばらく事を構えたくはなかったので、この提案にもろ手で賛成していた。


「そうですか。

いやはやノルディン国皇帝陛下は良い令息をお持ちだ。

我が皇太子にも是非ともあなたの爪の垢を飲ませたいですな」

クリスの事で頭が一杯な息子に嫌味を言う。


喜んでいる国王とは対照的にオーウェンは気持ちが落ち込んでいた。

今やる必要がどこにある。

何も初めてクリスがこの国に来てくれたこの時に。

もう少し時間があればもっとクリスと親密になれるのに。

オーウェンはアレクがそこまで邪魔して面白いかと本当に嫌になった。


「で、日程はいつくらいをお考えですか?」

国王が聞く。

「せっかくなので出来る限り早い方が宜しいのではと思うのですが」

「では10日後くらいでは」

オーウェンが言う。

「出来れば向こうの国王には待っていただいておりますし、私としてはこの足でそのまま行きたいくらいなのですが。」

アレクが言う。

「なるほど皇太子殿下もお忙しいですよね」

国王はオーウェンを見る。

トリポリはここから急げば5日くらいでつけるはずだ。

残り5日あれば何とか機会を見てとクリスと親密になって

とオーウェンは思っていたが、こいつは絶対に日にちをくれそうにないなとオーウェンには判った。

往復10日もいなかったらクリスは帰ってしまうだろう。

「出来れば5日後にいかがかと思うのですが。」

「いや、さすがに」

「オーウェン。お前は閑だろう。せっかくアレクサンドル皇太子殿下がお忙しい中、道筋を付けて頂いたのだ。すぐに行ってきなさい」

「御意」

オーウェンは憎しみのこもった眼でアレクを見た。そして、絶対にジャンヌ王女との仲を邪魔してやると心に誓った。ドラフォードの公爵家クラスの息子のうちの年齢的に合いそうな奴を対抗馬として送り込んでやる。

確かバーミンガム公爵の下の息子が軍にいたのを思い出した。あんまり公爵とは仲が良くなかったが、隣国の王女との婚姻なら喜んで乗って来るのではないかと甘い期待をオーウェンは持った。


「いろいろ皇太子殿下にはお骨折りいただき感謝の言葉もありませんな。」

オーウェンは不敵な笑みを浮かべていた。


その不気味な笑顔にアレクは思わず背筋を怖気が走ったのを感じた。

(しまった。やりすぎたか)


そもそもオーウェンは陰険王の息子。

ドラフォードの国王には単細胞な帝国皇帝は今まで散々やられていた。


父を単細胞と馬鹿にしているアレクもこの陰険王とまともにやりあって知力で勝てる気はしなかった。


その息子にも陰謀では勝てる気がしない。

あまりやりすぎると後が怖い。

とんでもないことをやってくれそうだった。


でも、ドラフォードの皇太子とシャラザールの化身とがくっついてくれるのはノルディンとしては絶対に避けたかった。


そうだ、いざとなったらジャンヌに助けてもらおう、とアレクは思った。ジャンヌはクリスと親しいし、何とかしてくれるだろう。

オーウェンが仕返しにそのジャンヌとアレクとの仲を裂こうと画策しだしたのには気づかなかった。



一方その頃クリスは王宮傍の軍の牧場でドーブネル自慢の馬を見せてもらっていた。

「そう、このようにして馬3頭に対して1人の専属の者がおるのです。騎兵ではこの馬の世話が基本ですからな」

得意げにドーブネルは案内している。

「ははは、こいつの馬好きは士官学校にいる時からですからな」

その横では好好爺としたウィンザー将軍がいる。


「こちらにいらっしゃいましたか」

「バーミンガム公爵」

クリスは驚いた。

「よお、フィリップ、久しぶりじゃの」

ウィンザー将軍がバーミンガム公爵に声をかける。

その3人の様子を見てクリスは思い出した。

「お三方は士官学校の同期でしたか」

「流石クリス様。よくご存じですな」

感心してバーミンガム公爵は言う。

その後ろには長身の近衛の服を着た青年が立っていた。


「息子のアルバートです。」

バーミンガム公爵が紹介する。

「アルバート・バーミンガムと申します。」

青年は値踏みするようにクリスを見た。別にどこにでもいる女の子だ。アルバートから見ても頑固な父が篭絡されるようなことは感じなかったが。


「クリスティーナ・ミハイルと申します。」

クリスはあいさつの礼をする。

「アルバート様は近衛で乗馬の達人であるとお伺いしております」

クリスがすらりという。

「いや、乗馬の達人とまで言われるとどうかなと思いますが、得意ではあります」

アルバートは自分の得意な事を即座に言われて驚いた。

「ほう、クリス様はすごいですね。私でもフィリップの息子が近衛にいるのは知っておりましたが、乗馬の達人であるとは失念しておりました」

ドーブネルが言う。

「いえ、ジャルカ様がおっしゃっていらっしゃったので」

「えっあの火の魔導士ジャルカ様がご存じなのですか」

喜んでアルバートが言った。

「なんとあの陰険ジャルカは我が国の若者にも名が知れておるか」

ウィンザー将軍が言う。

「何度かノルディンを撃退されているのを聞き知っている程度ですが」

「一度くらいでは若者も慕ってくれんか」

自嘲気味にドーブネルが言う。

「一度でもすごいですよ」

アルバートが言う。

「そうじゃ。わしなんか一度も勝ったことは無いからな」

ウィンザーが自嘲気味に言う。


「カンネーの籠城戦は見事だったとジャルカ様からお伺いしておりますが」

クリスが口をはさむ。

「あの昔の戦いをお聞き及びか。」

喜んでウィンザーは言う。

でも、ここではしゃぎすぎてもと考えて

「何、わしは怖かったので籠城して籠っていただけと言われておるがな」

と謙遜した。


「あの戦いはいかに長い間ノルディン皇帝をあの位置に引き止めておくのが重要だったと聞き及んでいますが。半年間も引き留めたおかげで兵糧がつきそのあとの行軍が出来なかったとか」

すらすらとクリスは言う。

「それもジャルカが?」

ウィンザーは驚いて聞いた。

「はい。戦の流れを再現していただきました。」

簡単な事のようにクリスは言う。


「いや、失礼ながら軍関係でもないご令嬢がお聞き及びとは存じませんでした」

驚いてウィンザーが言う。

「もう必要ないのですが、王妃教育の一環でジャルカ様が大切な戦いは知っておいた方が良いとお教えいただいたのです。」


「わしも長い間軍にいたが、1つでもジャルカに大切な戦いと認めてもらったか。あのジャルカに認めてもらっても全然うれしくないが、クリス様に知って頂いたとなると嬉しいですな」

「あの、それ以外にもマカロン奇襲とドーミパンの戦いもお教えいただきました」

ウィンザーは驚いていた。他国の令嬢が自分の3っつもの戦いを

それもドーブネルみたいに歴史の教科書に載るような戦いでないのに知ってくれていることに。

そして、横で青い顔をしているアルバートを見た。

「アルバート。お主知らなかったのか?」

フィリップが言う。

「いえ、士官学校では名前は聞いたことがあるのですが…」

アルバートは必死に言い訳をしようとしたが出来なかった。

「自国の近衛の騎士がこのていたらくではもう一度教育を考え直した方が良いかもしれませんな」

重々しくドーブネルは言った。


「しかし、クリス様は聞きしに勝る智謀をお持ちだ」

「師の言うとおりに、いろいろ勉強していただけですわ」

謙遜するクリスの肩越しに年寄り3人組はお互いに目で合図すると頷きあっていた。


もうすぐ クリスがオーウェンに告白されます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
この話の

シリーズ一覧

はこちら

『シャラザール帝国』

https://ncode.syosetu.com/s1987g/
クリスとシャラザールのお話です。

この話が電子書籍化されました

3巻が『王子に婚約破棄されたので、義理の兄が激怒してこの国を滅ぼすと叫び出したんだけど…… そのお義兄様から「エリーゼ、どうか結婚してください」と求婚されました。』

3巻表紙画像

表紙絵はおだやか先生がエリーゼをお義兄様が抱きあげる美しいシーンを描いて頂きました。
こちらの新規書き下ろしは学園に出る幽霊竜退治です。学園時代のお義兄様の幽霊騒動にエリーゼが一緒に冒険します
とても面白いのでぜひとも手にとって頂けたら嬉しいです。

■【10/25シーモア先行配信はこちら、3千字のSS連れ子様の護衛騎士・シーモア特典付き】
https://www.cmoa.jp/title/1101429725/vol/3/


■【11/19発売アマゾンはこちら】
https://www.amazon.co.jp/-ebook/dp/B0DK55BWGS/


■【11/19発売楽天はこちら】https://books.rakuten.co.jp/rk/e9901759f61337b88109b29ff7a5ffb0/

第2巻『王子に婚約破棄されたので、義理の兄が激怒してこの国を滅ぼすと叫び出したんだけど…… 帝国に帰還しての宮廷夜会、お義兄様にキスされてしまいました』

表紙画像

表紙絵はおだやか先生が美しい、お義兄様とエリーゼのキスシーンを描いて頂きました。
こちらの新規書き下ろしはセッシーとの出会いです。皇帝一家でセシール湖にお出かけしたエリーゼはお義兄様たちと湖の地下宮殿に冒険に出かけます。
反逆の陰謀と共にそこにいたのは巨大な水竜で…… とても面白いのでぜひとも手にとって頂けたら嬉しいです。

■第2巻【9/25シーモア先行配信はこちら、3千字のSSドレス工房の主の独り言シーモア特典付き】
https://www.cmoa.jp/title/1101429725/vol/2/


■第2巻【10/19発売アマゾンはこちら】
https://www.amazon.co.jp/dp/B0DGQ7J6VH/


■第2巻【10/19発売楽天はこちら】https://books.rakuten.co.jp/rk/178537d615973d18a4cb8adc53c66c16/


第1巻が『王子に婚約破棄されたので、義理の兄が激怒してこの国を滅ぼすと叫び出したんだけど 卒業パーティーは恐竜皇子と恐れられるお義兄様と一緒に』

表紙画像
上の表紙絵はおだやか先生が可愛いエリーゼを守る格好良いお義兄様を描いて頂きました。
このなろうで書いたのに【お義兄様との洞窟探検】2万字の描き下ろしが追加されています。
小さいヒロインのエリーゼはダンジョンに潜りたいとお義兄様に無理やり連れて行ってもらって、巻き起こす大騒動。
後で知ったお義父様(皇帝)が怒るもエリーゼの前に撃沈、更に行ったダンジョンにはなんとあの…………、とても面白いお話になっています。

■第1巻【8/26シーモア先行配信していたものは、3千字のSS商人の娘の独り言シーモア特典付き】
https://www.cmoa.jp/title/1101429725/


■第1巻【9/20発売アマゾンはこちら】
https://www.amazon.co.jp/dp/B0DD3SHSJV/


■第1巻【9/20発売楽天はこちら】https://books.rakuten.co.jp/rk/86f757d2dd7d3674900eac6783288ad5/

ぜひとも手にとって見ていただければ嬉しいです。

私のお話

【書籍化】

しました!
アルファポリスのレジーナブックスにて

『悪役令嬢に転生したけど、婚約破棄には興味ありません! ~学園生活を満喫するのに忙しいです~』https://ncode.syosetu.com/n3651hp/

6月28日全国1200以上の書店にて発売しました。表紙画像は11ちゃんさんです。
表紙画像
表紙絵をクリックしたらレジーナブックスの説明ページに飛びます。


■アマゾンへのリンク


■楽天ブックスへのリンク


■hontoへのリンク


手に取って読んで頂けたら嬉しいです。

私の

新作小説

はこちら!

『ヒロインに躱されて落ちていく途中で悪役令嬢に転生したのを思い出しました。時遅く断罪・追放されて、冒険者になろうとしたら護衛騎士に馬鹿にされました。護衛騎士と悪役令嬢の恋愛物語』

https://ncode.syosetu.com/n0185hu/

公爵令嬢キャサリンは憎き聖女を王宮の大階段から突き落とそうとして、躱されて、死のダイブをしてしまった。そして、その瞬間前世の記憶を取り戻するのだ。そして、黒服の神様にこの異世界小説の世界の中に悪役令嬢として転移させられたことを思い出したのだ。でも、こんな時に思いしてもどうするのよ! しかし、キャサリンは何とか、チートスキルを見つけ出して命だけはなんとか助かるのだ。しかし、それから断罪が始まってはかない抵抗をするも隣国に追放させられてしまう。
「でも、良いわ。私はこのチートスキルで隣国で冒険者として生きて行くのよ」そのキャサリンを白い目で見る護衛騎士との冒険者生活が今始まる。
冒険者がどんなものか全く知らない公爵令嬢とそれに仕方なしに付き合わされる最強戦士の恋愛物語になるはずです。ハッピーエンドはお約束。毎日更新目指して頑張ります。

私の

イチオシ

の小説はこちら

『好きになったイケメンは王子様でした~失恋から始まるシンデレラ物語・悪役令嬢もヒロインにも負けません』

https://ncode.syosetu.com/n2724hj/

平民で薬屋の娘リアは幼馴染のカートの勧めで特技を生かして王立学園に行くことに。でも、そこには王子様やお貴族様がいて、出来るだけ避けようとしたのに、何故か王子らと親しく?なってドンドン深みにハマっていきます。悪役令嬢や可愛らしい女の子が何を勘違いしたのかリアに絡んでくるけれど、リアが好きなのは王子ではなくカートなのに。でもそのカートの動きも怪しくて・・・・
カートの正体がわかった時、リアは・・・・。
王立学園で繰り広げられるドタバタ恋愛・シンデレラ物語。

ネット小説大賞運営チーム様から感想いただきました。
ハッピーエンド目指して書いていくので読んで頂けると幸いです。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ