クリスらは雪女討伐に向かうことにしました
異変を感じて飛んできたジャンヌらの前には怒りで我を忘れて興奮しているクリスと黒焦げになった雪女の残滓があり、頬にもみじマークをつけて呆けているオーウェンと氷が溶けて生き返ったチャドウィックが倒れていた。
直ちに現場検証及び事情聴取が行われた。
そして、翌日の朝の閣議で、結果が発表された。
顔にもみじマークをつけたままのオーウェンは閣議の前にクリスに謝ったものの怒っているクリスは全く相手にしてくれなかった。
「オーウェン様はあのような胸の大きな女がお好きなのですね」
ウィルとアルバートが余計なことを言ったので、更に立場が悪化したオーウェンだった。
「クリス様達の証言と記録された画像から、現れたものは雪女ではないかと思われます」
グリフィズが報告した。
「雪女って雪国にいる妖怪だろう。何でこんな暑い所に出てくるんだ」
みんなの疑問をジャンヌが聞いた。
「何でもチャドウィック皇太子殿下らを追いかけてきたのではないかと思われますが」
「チャドウィックはサウスの皇太子だろう。サウスからここまで何千キロも離れているけれど。間にはドラフォードもあるし」
「それにサウス王国もそんなに寒い国ではないんじゃなくて。どちらかと言うと温暖な国だと思うんだけど」
「雪女はどちらかと言うとノルディンのおとぎ話のような気がする」
「ジパグの雪国の昔話にも出てきます」
「マーマレードの北部にもあったと思うけれど」
コレキヨらが自国の伝承伝説を言い合う。
「サウスにも南部には高山があり、その地方には雪女の伝説があるのです」
オコトが言う。
「で」
アレクが促す。
「ここ最近寒波が急激に強くなりまして、今年の冬は王都まで吹雪が吹き荒れるようになったんです」
「えっ、サウスの王都に雪なんか降るのか」
驚いてオーウェンが聞いた。サウスの王都は温暖な気候で有名だった。
「100年ぶりだそうです。それも吹雪いたのは初めてかと」
オコトが言った。
「サウスの方々が言われるには、雪女が原因ではないかと」
「雪女って伝説の妖怪ではないのか」
ジャンヌが言う。
「しかし、あれはたしかに雪女だった」
オーウエンが言う。
「そんなに冷たかったのか?」
「胸に抱かれたが、今考えると凍りそうに冷たかった」
ボソリとオーウェンが本音を呟いた。
「大きな胸に抱かれて気持ちよかったんですよね」
ブスッとしてクリスが言う。
「いや、クリス、俺は決して大きな胸が好きなわけではなくてだな、クリスのほどよいおおきさの・・・・」
「何こんなところで言うのよ。本当に最低」
クリスが切れて叫んでいた。
「クリス様の胸が小さいって言うなんて」
「本当に最低です」
イザベラらがボソボソ言う。
「いや、俺は決してそんなことは」
「そこ、うるさいです」
クリスが目を吊り上げて言う。
「ホッホッホッホッ。クリス様も胸の大きさを気にされるお年頃になられたのですな」
笑ってジャルカが入ってきた。
「ジャルカ様!」
クリスはジャルカを睨みつけたが、年の功か、ジャルカは全く堪えなかった。
「元々チャドウィック様らは雪女を退治する魔導師の派遣を依頼するために、このボフミエ魔導国にいらっしゃったそうですぞ」
「えっ、そうなのですか」
クリスは驚いて聞いた。
「申し訳ありません。チャドウィック様がクリスティーナ様に一目惚れされてなんとしても婚約者としてサウスに来て頂くとおっしゃられて、こちらとして言い出すタイミングを逸してしまいました」
オコトが頭を下げた。
「今や、雪女のせいでサウスの王都は音信不通だそうですぞ」
ジャルカが言う。
「それは本当なのですか」
「はい。色々手を尽くして連絡しようとしたのですが、繋がりません」
クリスの問にグリフィズが答える。
「サウスの派遣した雪女の討伐隊は壊滅、雪女は本土を制圧して、救援を呼びに来た交代殿下らを始末するために分身を送り込んだのではありませんかな」
ジャルカが断定するように言った。
「今まで何も言わずに申し訳ない。ここまで迷惑をかけて申し訳ないが、何とか国の危機を救っていただけないだろうか」
チャドウィックが珍しく頭を下げた。
オコトら側近も頭を下げる。
「ジャルカ様。雪女の正体は妖怪ですか」
クリスはジャルカの方を見て聞いた。
「おそらくそのようなものかと。邪神か何かだと思いますが、変わらんでしょう」
「私で対抗できますか」
「おそらく問題ないかと」
クリスの問にジャルカが答えた。
「では、ジャンヌお姉さまとアレク様ご同行をお願いできますか」
「当然」
「御心のままに」
ジャンヌとアレクが頷く。
「あいや、クリス、俺も」
オーウェンが自薦するが
「オーウェン様はまた誘惑される可能性がありますので、今回はお留守番をお願いします」
「そんなクリス」
「姉様。俺は当然行けるよね」
「クリス様私も」
「ウイルとアルバートは大きなおっぱいに誘惑される可能性があるのであなた達もお留守番です」
「えっ」
「そんな」
二人は呆然とした。口は災いの元なのだ。
「代わりにロルフとビアンカは同行して下さい」
「えっ」
「私もですか」
二人は驚いて聞いた。責めるようにウィルとアルバートを見る。
「はい。ロルフは雪女の位置を特定してほしいのです。ビアンカもたまには遠征も経験して下さい」
「はい」
二人は諦めて頷いた。
「お姉さまの師団からは5名を選抜して下さい。外務からはライナー様ともう一人選抜していただけますか」
「判った」
「承知いたしました」
ジャンヌとアレクが頷く。
「出発は明日。それまでに出来る限り現地の様子を掴めるようにお願いできますか」
クリスは皆を見回して言った。
「アメリア様は女王陛下方の事よろしくお願いします。ウィルとアルバートもアメリア様をお助けするように」
「姉様・・・」
「クリス様・・・」
二人は置いて行かれる犬のような目でクリスを見たがクリスは覚めためで二人を見た。
「こちらの責任者はオーウェン様でお願いいたします」
「いや、クリス・・・」
何か言いたそうなオーウェンを氷のような冷たい目でクリスは見た。
「オーウェン様を大きな胸を武器に誘惑した雪女は私が退治してまいりますわ」
笑ったクリスの目が3人には恐ろしかった・・・・・
もみじマークのオウとウィルとアルバートはお留守番に。
オウを胸に抱いた雪女討伐にクリスは闘志を燃やしています。
やっと復活できた雪女の運命やいかに????
次話は400話記念です。今夜更新予定。
ここまで続けられたのは読者様のおかげです。
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