閑話 戦神の嘆き
南国の黒人皇太子は余の子孫にしてはどう見ても軟弱な口軽男であった。
そのナンパ男が余の大事なクローディアの子孫のクリスに歯の浮くようなセリフを呟いておる。
余としてはそれは許せない事だった。
戦神シャラザールの子孫たるもの、口先よりも実力が伴わねば。
確かにドラフォードの皇太子は軟弱で剣技も魔術も余の子孫にしては全然ダメだった。平民ならばいざしらず、奴は大国の皇太子なのだ。せめてアレクくらいの力を持って欲しい。
アレクでも余にとっては全然満足できる力ではなかったが。
やはりクリスの婿にするにはクリス以上の力がないと。
もっともそんなやつがいるかと言うと地上には見当たらないのだが。
しかし、確かにオーウェンは剣技や魔術は全然だったが、調整力や内政力はあった。
前回、パレルモでジャンヌやアレクに色々やらしたが、あれは最悪だった。
四散した奴隷の家族を探し出して一緒に生活させるようにと命じたのだが、それに1ヶ月以上もかけてくれたのだ。
戦闘ならば少しは役立つ2人だったが、それ以外はからきしダメだ。
その時にオーウェンを連れてこなかったことをとても後悔した。
考えるにクリス以上の戦力はほとんど必要はなかった。
一撃で帝都を破壊できるし、10万の大軍でも一閃だろう。そんなクリスがいるのに、ミニクリスが2人いようが3人いようが同じだ。それよりは占拠後の調整や内政が大切だ。
クリスもある程度は出来たが、その力をクリス以上に持つのがオーウェンかもしれない。
余も戦闘は得意だったが、というか無敵だったが、その勝った後の処理に本当に苦労した。
余の時にオーウエンが一人入れば、とても便利だったろう。あの時は本当に脳筋しかいずに苦労したのだ。
この国もアレク、ジャンヌ、ジャスティンとどちらかと言うと脳筋ばかりだ。
その点オーウェンは貴重だ。戦った後がいかに大変かは千年前でこりたからな。
まあ文官共も余の時に比べればおるが。そう言う意味では婚姻は許可しても良いとは思う。
しばらくオーウエン本人に言うつもりはないが・・・・
で、南国皇太子だが、何をトチ狂ったかクリスにアルコールを飲ませたのじゃ。
そして、いきなり抱きついてきよった。気持ち悪いことこの上ない。
当然張り倒してやった。
そして、更に驚くべきことが判った。
南の国では余の子孫であるという教育がなされておらぬというのだ。
どういうことじゃ。余の偉大な戦闘能力を受け継いでおるにもかかわらず、それを黙っておるとは。
良いところどりではないか。
余を敬えとは言わぬが、いや、余が何も言わずとも敬うのは当然じゃが・・・・、せめて事実は知って然るべきじゃ。
新大陸の奴らですら余のことを先祖として崇め奉っておったのに、黒人共は恩も知らぬのか。
そう思って切れておると、ボケアレクが今頃余の血をひいていないなどとふざけたことを言い出しおった。
あそこはイアンの大ボケがノルデイン第一主義などというふざけたことを言い出しおって余との繋がりの歴史を抹消しおったからじゃ。
それを今まで知らなかったとは。アレクは余がどれだけ気にかけてやったと思っておるのじゃ。本当に恩知らずにもほどがある。
ノルディンやサウスの歴史の教科書も全て元に戻させる必要があろう。
当然表紙は余の肖像画にしたほうが良かろう。
何しろ始祖の母じゃからの。
そう考えておる所に怒りまくったエリザベスがやってきよった。
しばらく会わないようにしておったのに、何ということじゃ。
彼奴の夫については余から迫った記憶はない。
しかし、飲みすぎて余の記憶も曖昧なのは事実じゃが。
飲んだ時のことをとやかく言われても余には責任はない・・・・
と言いたい。
そう言ったら更にエリザベスは切れて余に迫ってきた。
そのエリザベスを撒くのに1時間以上かかってしまいせっかくアレクらに訓練をつけようにも
さすがの余も疲れ切ってその気力も失せてしまった・・・・








