閑話 南国皇太子の誓い
本日はもう一話更新する予定です。
俺の名はチャドウィック。狩猟民族ヤサイ族の長の息子だ。
ヤサイ族はサウス王国を建国して国を創ったとはいえ、全ての基本は狩猟だ。獣を狩るのが基本。
そして、一人前の戦士の証が一人で陸の王者サーベルタイガーを倒すことなのだ。
俺はそれを10歳でやり遂げて戦士の仲間入りをした。そのへんのやわな白人貴族とは違ってたくましい黒人戦士なのだ。
国も北部に穀倉地帯を持ち、西のボンゴル王国とも友好。その北のドラフォード王国は軟弱な白人王国だが、奴らも勇猛果敢な我が国の兵士たちを恐れてこちらには関わってこない。順風満帆な人生を歩んでいた。
そんな俺の人生で難を言えばまだ婚約者がいないことくらいだった。当然、今まで女どもに苦労したことはない。女どもは声をかければ落ちて、抱きつけば落ちた。女で苦労したことはなかった。
しかし、20も後半になってくるとさすがに父とかがうるさくなってきた。でも、まだ妻に縛られたくない。国内の女どもでは嫌だと、駄々をこねてみると、隣国の王女はどうだということになった。
まだ、身を固めたくはなかったが、父の言うことを聞かないわけにもいかず、とりあえず会うだけは会った。あっさり断って帰ろうと思ったのだが、このリア姫というのが結構美人で体つきも出るところは出て引っ込む所は引っ込んでいて好みだった。
しかし、この姫、何をトチ狂ったかこんな野蛮な人は嫌だ、北のオーウェン様の方が格好いいし素敵だと言いやがったのだ。
北の皇太子のことなら聞いたことがある。剣も魔術も大したことはないが、頭だけは良いという軟弱皇太子だ。
どうしてやろうと考えている時に起こったのが、寒冷化の問題だった。
ここ数年天候不順が続いていたのが、急激に寒冷化が進んで、凶作が起こったのだった。
南部の山岳地帯で、豪雪のためかどうか、雪解けが遅れていると言う。
何でも雪女などという化け物がいるらしい。
討伐隊が編成されたが、彼らは帰って来なかった。
我が国の誇る大魔導師もついて行ったのだが、役に立たなかったそうだ。
俺が何故行かなかったかって?
化け物が恐ろしいからだって。
そんな訳はない。別に化け物は恐ろしくはない。
ただ俺は寒いのが苦手なのだ。暑いのはいくら暑くても耐えられるが、寒いところに行くのだけは勘弁してほしかった。
しかし、このままでは国がやばい。
雪がどんどん降ってきて温暖な王都まで100年ぶりの大雪になっていた。
春になって雪解けにならないと今度こそ国民の多くが飢えるだろう。
援助を求めようにも、ボンゴルとは婚姻の件で揉めているし、ドラフォードとはシャラザールの時から仲が悪い。
いっそのこと新興の魔導国に援助要請に行くことになった。
筆頭魔導師の魔力は魔王にも勝つくらいだと言う。
雪女なんてあっという間に退治してくれるだろう。
そのついでに自分の嫁も見つけてこいとのことだった。
そして、ボフミエの国都ナッツァの桟橋で、俺は女神を見つけた。
強引に同じ桟橋につけさせて、早速求婚しようと抱きついたのだが、それがいけなかったらしい。
我が国で俺に抱きつかれて喜びこそすれ、拒否するやつなんていなかったのに・・・・・・
クリスちゃんは恥ずかしがり屋らしい。
それに、いけ好かない陰険皇太子が横にいて邪魔してきやがる。
リヤ姫との件でも恨みがあったので、挑発したらあっさり乗ってきやがった。馬鹿だ。俺にかなうわけないのに。
最初は軽く受けてやったら喜んで攻撃してきやがった。
でも途中から本気出したら、やっぱり陰険皇太子は敵ではなかった。
しかし、中々降参しないのでサンドバッグにしてやろうとしたら、何故かクリスちゃんが切れて魔術を放ってきた。
それは凄まじいものだった。少しずれていたら間違い無しに俺は地上から消滅しただろう。この魔力なら、雪女にも十二分に対応できるだろう。
俺はそう思っていたらその魔術の余波で弾き飛ばされて城壁に叩きつけられた。
俺はそのクリスちゃん、いや、クリス様の力に圧倒された。
そして、思った。
彼女こそ俺の女神様だと。
どれだけ踏みつけられようとも、頬を張られようとも、絶對に国につれて帰ろうと。
俺は心に誓ったのだった。
変なことに目覚めた勘違い皇太子、しかし、今までのクリスへの態度に切れているクリスの側近たち・・・・強いのはどっち








