晩餐会でクリスはシャンパンを頭からかぶりました
ボフミエ魔導国の大広間は細長く長方形の形に机が整えられていた。
既に貴族の方々とサウス国皇太子が席についていた。
上座の席が空いていた。
「母上、こちらに」
残った上座のお誕生日席に、テレーゼ女王のオリビアが娘のアメリアに案内される。
アメリアが椅子を引いて空間を作るとその場にオリビアが腰掛けた。
キャロラインの椅子はオーウェンが引いて、エリザベスの椅子は何故かアレクが引いた。
シャーロットの椅子はクリスが引く。
そして、その親の横にそれぞれ子供が座る。
オリビアの左右両斜め前にはヘルマンとアメリアが。
ヘルマン側にはキャロラインとその息子オーウェン、シャーロットとその娘クリスが、
アメリアの横にはジャンヌ、エリザベス、アレクが座った。
「皆様。本日はお忙しい中、わざわざこの新興国ボフミエ魔導国にお越し頂きありがとうございます。お子様方はボフミエ魔導国の為に日夜働いていただいており、日頃はお子様方とお話頂ける時間もあまりないと存じます。本日は折角の機会ですので、じっくりとご歓談賜れば幸いです」
そのクリスの挨拶を合図に、子供たちがシャンパンを開ける。
そして、開いたところから親のグラスに次々に注いでいった。
「ジャンヌ、何やってるんだよ」
中々開けられないジャンヌから瓶を取り上げてアレクが尋ねる。
「すまん。日頃は地面に口を叩きつけて割っていたから」
「ジャンヌ何をもったいないことをしているの」
「いやあ、母上、シャンパンは戦勝の縁起物ですから」
エリザベスに白い目で見られながら、ジャンヌは笑って誤魔化す。
クリスのグラスは当然アルコールではなくて白ぶどうジュースに変更されていた。
「では、外務卿、乾杯の合図よろしくお願いします」
クリスの言葉にアレクは頷く。
「では皆様。僭越ながら乾杯の音頭を取らせて頂きます。皆様のご健康とシャラザール様のご健勝を祈って乾杯」
「乾杯!」
アレクの音頭に皆唱和した。しかし、シャラザールのご健勝って伝説の戦神の健勝を祈ってどうすると分かっていない保護者もいた。
「おい、オコト。サウスの皇太子なのに、この席って酷くないか」
一番端のお誕生日席に座らされたチャドウィックが文句を言った。
「まあ、殿下。上座は怖そうなお姉様方がいっぱいですから、こちらの席で宜しいではないですか」
口から先に生まれてきたチャドウィックが、女王陛下らに何を言い出すか不安に思っていたオコトは安心して言った。
「そうか。彼奴等サウス王国が辺境の国だからって舐めていないか」
ブツブツチャドウィックは文句を言っていた。
その乾杯が終わると料理が運ばれてきた。まずフカヒレのスープだ。
スープ皿をヘルマンが持ってアメリアが女王の器に入れる。
その危なっかしい様子にオリビアはヒヤヒヤだ。
「アメリア、大丈夫か。ヘルマン。そちが入れれば良いのではないか」
思わずオリビアは口に出してしまった。
「何言っているんですか。母上。今回は娘が母に給仕すると決めたのです。ジャンヌでさえやっているんです黙っていてもらえますか。気が散ります」
手を震わせながら、おっかなびっくりでアメリアがオリビアのスープ皿に入れる。
「アメリア!ジャンヌですらは余計だ」
こっちもおっかなびっくりで入れているジャンヌが文句を言う。
その慣れないジャンヌの様子をエリザベスは固まって見守っていた。
「よし、完璧」
一滴もこぼさずに入れてジャンヌがガッツポーズをした。
「おい、ジャンヌ。スープを入れられたくらいで喜ぶなよ」
呆れてとっくに終えているオーウェンが言った。
「悪かったな。戦闘専門の私には難関なんだよ」
ジャンヌがむくれて言う。
「殿下。こんながさつな娘で良いのですか?」
エリザベスがジャンヌにアプローチしてくれているアレクに呆れて訊く。
「はい。ぜひとも娘さんと結婚を前提にお付き合いすることを許していただきたいのですが」
「そこ、勝手に話をするな」
ジャンヌが文句を言う。
「ジャンヌ、なんですか。皇太子ともあろうものがその話し方は。クリスの爪の垢でも煎じて飲ませてもらいなさい」
エリザベスが切れて言う。
「まあまあ、お義母様。そうおっしゃらずに。ジャンヌ殿下の良いところではないですか」
「そんな風におっしゃっていたたげるのはアレクサンドル殿下だけですわ」
「ではぜひとも私との婚姻を認めていただきたく」
「ちょっと、そこ、本人を無視して話をすすめるな」
そう言ってスープの鍋を持って振り返ろうとした時に、椅子の足にジャンヌの足が当たってジャンヌがバランスを崩す。慌ててアレクはそのジャンヌと鍋を受け止める。
しかし、アレクの手にあったシャンパングラスが鍋にあたって飛んで行った。
そして、その先グラウの先にはクリスがいた。
クリスはシャンパンの中身を頭からもろにかぶってしまった…
すいません。長くなったのでここで一旦切ります。
クリスがアルコールを摂取すると・・・
続きは夜の予定です。








