テレーゼ3姉妹をボフミエ魔導国にお迎えします 3
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「えっ」
皆ぎょっとする中で、湖に浮かんでいたチャドウィックの頭上に赤いスカイバードが転移してきた。
「えっ、死ぬーーー」
必至に避けようとするチャドウィックを湖水ともども弾き飛ばして赤いスカイバードが着水した。
「誰だよこんな所に転移なんて」
「赤いスカイバードって」
アメリアは青くなった。
「母上!」
そう、ボフミエから貰ったスカイバードを国の色の真っ赤に塗ったと聞いた気がした。
その予想通り扉が開いて出てきたのはテレーゼ王国女王のオリビアだった。
「アメリア、どういう事。勝手に婚約者を決めるなんて。それも亡国の王子なんて許しませんよ」
女王は扉が開くなり飛び出してきてアメリアの前にいた。
「まあまあ、お姉さま。どうされたのですか。いきなり来られるなんて」
姉妹の真ん中のキャロライン・ドラフォード王妃がとりなそうと声をかけた。
「そうですよ。姉上。あまりにも不躾です」
礼儀にうるさい一番下のエリザベス・マーマレード王妃が嗜める。
「何を言っているのよ。あなた達二人が私を無視してボフミエで子供の配偶者選定をするって言うから慌てて飛んできたんじゃない。酷くない?私だけ無視するなんて」
「いや、姉上。私はシャーロットと会おうとしただけでエリザベスのことは聞いていませんでしたわ」
「何言っているんですか。我が家にも婿を迎えそうにない年頃の娘がいるんですから、無視するのは酷いですわ」
キャロラインとエリザベスが言う。
「それを言うならば姉の私を無視してするのは酷くない」
「だってお姉さまのところは既にヘルマン君がいるじゃないですか」
「そうですわ」
オリビアにキャロラインとエリザベが反論する。
「何言っているのよ。ヘルマンは滅ぼされた罪人の息子よ。我が神聖テレーゼ王国の王配にふさわしいとは思えないわ」
「何言っているんですか。姉上。彼は魔力もまあまあありますし、元王族ですから礼儀作法も問題ないですわ。オーウェンの下で内務次官を務めてくれていますが、問題ないとオーウェンも申しておりますわ」
「そうです。我が娘なんて相手も居りませんのよ。それに比べるとアメリアは相手を見つけてくるだけとてもいいじやないですか」
姉妹喧嘩を始めた3人を遠くから一同は見ていた。
「おい、オコト、俺は一体何だったんだ」
濡れ鼠になりながら何とか桟橋に這い上がったチャドウィックは補佐官に愚痴を言った。
「うーん。いきなりクリス様に抱きついたのは問題だったと思いますが殿下。雷撃を喰らわなかっただけ良かったですよ」
「落とすのに、あと一息だったと思うのだが」
全然反省していないチャドウィック・サウス王国皇太子だった。
3姉妹には実の子どもたちも恐れて手が出せない。
アメリアはキャロラインおばがもっとヘルマンを褒めてくれと祈っている始末だ。
「殿下方、ここでお話をされても問題ですし、王宮の方へご移動願えないですか」
フェビアンが子どもたちに声をかけるが、皆お互いの顔を見る。
「クリスなんとかしてくれ」
ジャンヌが声をかける。
「えっ、私ですか」
クリスでも2王妃と女王に声をかけるのはためらわれた。
「もう仕方ないわね」
誰も動こうとしないのを見てシャーロットが3人に近づいた。
「姫様方。皆様のお子様方が戸惑っておられます」
侍女然としてシャーロットは声をかけた。
元々シャーロットはテレーゼの公爵家出身で3人の姫のことはよく判っていた。
「う、まあそう?」
3人は慌てて体裁を整えて振り返った。
つかみ合いの喧嘩を始めそうな勢いだったのを露とも見せずに。
「ようこそ、ボフミエ魔導国へ。筆頭魔導師のクリスティーナ・ミハイルでございます。女王陛下、王妃様方におかれましてはあまりおもてなしも出来ないかとは存じますが、ひとまず宮廷にお越しいただければと存じます。ご一緒にお越し頂いた方々もどうぞ馬車の方にお越しくださいませ」
クリスが礼をして挨拶した。
「うむ。突然で申し訳ないがよろしく頼む」
オリビアが挨拶した。
「滅相もございません。前回は我々共もいきなりお伺いして大変ご迷惑をおかけしました。大国テレーゼと違い我がボフミエ魔導国は出来たばかりでまだまだなところが多々ございますが、精一杯おもてなしいたしたいと存じます。フェビアン。オーウェン様。手配の方よろしくお願いいたします。私は女王陛下方と転移にて王宮に向かいます」
事務方の手配はフェビアンとオーウェンに任せて、クリスは王妃達に近づいた。
「申し訳ありませんが、馬車の手配が間に合いません。ここは私が女王陛下ご姉妹を王宮にお連れ致したいと思いますが、宜しいですか」
「えつ、クリスは転移が普通にできるようになったの?」
母のシャーロットが驚いて聞いた。1年前は殆ど魔術は使えなかったはずだ。
「ジャルカ様に日々訓練をつけて頂いておりまして、先日はオロン島までオーウェン様等お二人をお連れしました。この短距離ならば全然問題ないかと」
「筆頭魔導師様。出来ましたら某もお連れいただけたら幸いなのですが」
テレーゼのサロメ魔導親衛騎士団長が申し出た。
「すません。ご姉妹方と母のみお連れしたいと思うのですが、王宮では既に祖父が待機しておりまして、女王陛下の警護には問題ないかと思いますが」
クリスが反論する。と言うかクリスとしてもあまりの多くの人を連れての転移をしたことはなく自信がなかったのだ。
「サイラスがおるのなら問題はなかろう。そもそも余は本来護衛など必要ないが」
オリビアはサラッと言う。
というか、クリスがいる段で問題はなかったのだが。クリスの障壁は完璧だった。例えシャラザールと言えども1撃ではクリスの障壁は壊せないとジャルカに太鼓判を押されていた。
「はっ、失礼致しました」
サロメが頭を下げた。
「では失礼いたします」
クリスが頭を下げると、女王姉妹とシャーロットとクリスが消える。
ジャンヌとアレクが護衛部隊を指揮して馬車の1群が王宮へ向かって動き出した。
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