テレーゼ3姉妹をボフミエ魔導国にお迎えします 2
旧大陸では独身の女性にいきなり抱きつくのはご法度だ。当然、クリスは全然なれていなくて唖然としていた。
「おい離せ」
慌てて怒りまくった、ウィルとオーウェンがチャドウィックを剥がそうとするが、力強い包容で中々離れない。
固まったクリスにキスをしようとしたチャドウィックはしかし、次の瞬間に転移で湖の上に飛ばされていた。
そして、盛大な水しぶきを上げて湖に頭から突っ込んでいた。
皆唖然としてそれを見ていた。
クリスが魔術を使ったのだろうか?
しかし、真っ赤になったクリスは呆然としていて、そんな余裕はありそうになかった。
ジャンヌやアレクも驚いているしこんな事を出来るのは。
次の瞬間桟橋に止まっていたスカイバードが横の桟橋に転移でどけさせられ一機のスカイバードが横付けされた。
そこからはクリスの母のシャーロットが降り立った。
「失礼な男はどこにでもいるものね」
軽蔑したように言うと、スカイバードに手を差し出す。
そこからはマーマレードの王妃のエリザベスが降り立った。
「げっ、母上」
それを見て今まで他人事だったジャンヌが固まった。
「ジャンヌ。ゲッとはなんですか。淑女らしくもない。あなたこの前の淑女教育もろくに受けないからそんななんです」
「何故母上がここに」
ジャンヌは呆然と立っていた。
「そんなのあなたの婚約者をどうにかするために決まっているでしょう。このままだと一生涯婿の来てがなさそうでしょ」
そう言い切るエリザベスの前に一瞬で飛んできたアレクが跪いた。
「これはこれは母上様。ようこそ、このボフミエの地にお越しいただきました」
そう言いながら手に口づけをする。
「これはのルディン帝国皇太子殿下。わざわざお出迎えありがとうございます。でも、私あなたの母になった覚えはなくてよ」
「そうだ。アレク、どさくさに紛れて何を言ってるんだ」
遠くからジャンヌが叫んでいた。いつもならば即座に飛んできて頭を殴るのに、遠く離れたまま・・・・
「これはこれは母上様も冷たい。ぜひともそのような関係になりたいとお願いする次第なんですが」
アレクが珍しく下手に出た。
「でも、あなた様はノルディン帝国の跡取りではございませんか」
「まあ、そこはおいおい考えるとして、とりあえず、おつきあいさせて頂くことをお許し賜ればと」
アレクは流暢に言う。
「勝手に言うな」
ジャンヌが遠くから叫ぶ。しかし、この場になっても母を恐れるあまり近寄らないジャンヌだった。
「まあ、騒々しいわね。これはどうしたこと」
そこにはいつの間にか桟橋のもう片方についていたスカイバードからキャロラインが降り立った。
「これはこれは姉上様。お久しぶりでございます」
「げっ、エリザベス」
キャロラインは驚いた。妹が来るなんて聞いていなかった。反応が姪のジャンヌと同じだったことが笑えたが・・・
「お姉さま、大国ドラフォード王国の王妃であられる姉上が『げっ』とはなんですか」
早速エリザベスの説教モードが始まる。
それを面白がってクリスの騎士のアルバートが見ていたが、次の瞬間キャロラインの後ろから現れた集団の一人に目が点になる。
「母上!」
アルバートが固まったのを見て近くにいたイザベラもその集団を見て固まる。
「お母様」
そう、キャロラインの後ろから現れた貴族の女性の集団の中にアルバート・バーミンガムの母パウリーネ公爵夫人とイザベラの母アンリ・ナヴァール侯爵夫人がいたのだ。
キャロラインは今回の訪問にボフミエにいる子供たちの母親連中を連れてきたらしい。
アルバートらは、婚活なんてクリスらは大変だなと他人事だと思ってみていたのが、いきなり自分のことになって驚き慌てた。
アルバートは慌てて逃げ出そうとしたが、
「アルバート。どこに逃げようとしているの」
大声で母親に呼ばれてどうしようもなかった。
「父上」
その横を子供が駆けて行った。そして、アルバートの兄のミューラー・バーミンガムドラフォード東方第一師団長に抱きつく。
「シリル」
驚いてミューラーは大きくなった息子を抱き上げる。
「あなたお久しぶりです」
妻のユーリアがミューラーに駆け寄ってきた。
「ユーリア」
ミューラーは目を見張ってユーリアを見る。
「本当に家の男どもったら女の扱いはからしきだめね」
母のパウリーネは文句を言った。
「母上。私も仕事が忙しくて」
「たまには帰ってこれるでしょう。そうか妻子を呼び寄せたら良いのではなくて」
「しかし、母上、ここは戦場ですから。兵士たちも一人できている場合が多いです」
「バーミンガム公爵夫人。私の気配りが足りないばかりにご迷惑をおかけして申し訳ありません」
横に来たクリスが頭を下げる。
「何をおっしゃっていらっしゃるのですか。我が公爵家はクリスティーナ様に忠誠を誓っているのです。主に気を使わせるなどとんでもございません。そう言うことは下々の者が考えることですから」
「えっ、しかし、バーミンガム公爵家はドラフォードの筆頭公爵家ではありませんか。それが私のようなものに忠誠など」
「だからね。クリスチャンは我が家に嫁に来るしかないのよ。そうすれば丸く収まるわ」
いつの間に横に来たのかドラフォードの王妃のキャロラインが口を挟む。
「まあ、王妃様。我家はどちらでも構いませんわよ。ミハイル侯爵家はシャラザール帝国筆頭侯爵家。シャラザール様に忠誠を誓った我が家が忠誠を誓っても何らおかしくありませんわ」
二人が軽く睨み合う。
「それよりもクリスティーナ様。我が家のアルバートはいかがですか。オーウェン殿下よりも剣術魔術両方とも上を行きますが・・・・」
「ちょっとバーミンガム公爵夫人。クリスに手を出そうというのは止めて頂きたい」
慌てたオーウェンが横から口を出す。
「まあ、クリスティーナ様。オーウェン殿下に満足できなければいつでも愚息を差し出しますのでお考えくださいませ」
「公爵夫人!」
オーウェンの怒った声が響いた時だ。
巨体が転移してくる気配がした。
ダーーーーン
凄まじい大音響とともに、突然赤いスカイバードが上空に転移してきた。
赤いスカイバードに乗っているのは・・・・
ついにテレーゼ3姉妹登場です。
続きは明日朝に。
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