大国皇太子は騙されたと知ったクリスによってまた思いっきり張り倒されました・・・・
クリスの雷撃は上空で次々に枝分かれして世間に潜伏している影共に襲いかかった。
光の塊は、暗殺行動を行おうとしていた影を次々に直撃した。
それはドラフォードの王宮に潜んでいた影も、マーマレードのミハイル侯爵領の中にいた影も、ノルデインの宮殿の中まで襲いかかった。
そして、ここにパレルモの影は殲滅された。
ジャルカの期待した新兵器ゴキブリホイホイが使用されることもなく、散々ジャルカが挑発したシャラザールが来臨することもなく、殲滅されてしまった。
それを、クリスの横から飛び退いて地面に伏せていたアレクは呆然と見ていた。
アレクサンドル・ボロゾドフ、ノルデイン帝国皇太子にして赤い死神。むかし、愛する少女を殺されて怒りのあまり爆裂魔術で1つの国を殲滅していらいついた二つ名が赤い死神。アレクによって殲滅された国は片手ではおさまらない。普段は傲慢で大国陳国王ですら顎で使いかねない傲慢なアレクが呆然としていた。そう、そしてね彼の手は恐怖を感じて震えていたのだ。
シャラザールが憑依しているのでクリスには絶対に逆らえないのだが、クリス自体のこの攻撃は何だ? 何千キロも離れた王宮を直撃し、隠れた影共を見つけ出して一瞬にして数千の命を葬り去ったこの魔力量と精密さ、アレクは改めてクリスの恐ろしさを思い知り震えが止まらなくなっていた。
絶対にクリスにだけは逆らわないでおこうと改めて思い知った。あの怒りが自分に向かってきたら到底勝てる気がしなかった。パレルモのバカどもは本当に怒らせてはいけない者を怒らせてしまったのだ。自業自得と言えたが。
その肝心のクリスは攻撃を終えるとハッとして傷ついて倒れているオーウェンをみた。
「オウ、オウ、死んじゃいや」
クリスは慌ててオーウェンに抱きついていた。オーウェンの顔を胸に抱く。
そして、心の底から祈った。
オーウェンはクリスが小さい頃からいつもクリスの面倒を見てくていた。
クリスのことを面倒がらずに、クリスのわがままもちゃんと聞いていくれる紳士だった。
大国の皇太子だとはその時は知らなかったが、そのオーウェンにお嫁さんにしてあげても良いっていう素晴らしく上から目線で言ったのはクリスだった。
それを王家の依頼とはいえ、オーウェンを最初に裏切ったのはクリスだった。なのに、手紙の返事をくれなかったと文句を言うのはお門違いだった。
クリスは後悔した。
オーウェンはそのクリスのことを、婚約破棄されて傷物になったクリスのことを嫁にしてもいいと熱心に言ってくれていたのだ。
「オウ、オウ、死んだら嫌、死なないで」
クリスは泣き叫んでいた。
それを周りは呆然と見ていた。
後ろで平伏しているシュテファンの前にオーウェンの護衛隊長のジェキンスが抜剣して近づいた。
「おまえ、よくも皇太子殿下を刺してくれたな」
「ちょっとまってください。内務卿はほとんど傷ついていないはずですよ」
「なわけ無いだろう」
ジェキンスが1オクターブ声が高くなった。
あれだけの血が流れたのだ。絶対に重症に違いない。
「だってこれ模造剣ですよ」
シュテファンが刺した剣を差し出した。それは刃の先が潰してあった練習用の剣だった。これで刺すのはたしかに難しい。
「えっ、じゃああの血は」
「ジャルカ様が作った血糊かなんかじゃないですか」
その言葉に驚いてジェキンスはジャルカを見た。
クリスはオーウェンの事に必至でジェキンスらの言葉は聞こえていなかった。
しかし、近づいてきたジャルカを見つけると叫んでいた。
「ジャルカ様。すぐにオウを治療して下さい」
クリスはオーウェンの頭を胸に抱きながら言った。
「えっ、治療ですか。しかし、オーウェン様はクリス様の胸に抱かれてめちゃくちゃ幸せそうな顔をしておりますが」
その様子を見てジャルカが言った。
「ジャルカ様。何ふざけていらっしゃるんですか」
きっとしてクリスが叫んだ時だ。
「本当だ。こんな剣で人を殺せるわけないよな」
その後ろから何故かジェキンスの声が響き渡った。
「えっ、でも、大量の血が」
クリスは困惑して言った。
「いやあ、すみませんな。ちょっと調子に乗りすぎたようです」
ジャルカが謝った。
「そうだよな。あの血の量、人間にしては多すぎると思ったんだ。恐竜でも切りつけたって量だったよな」
ジャンヌの声が響く。
「そうですよね。私もここを刺せってオーウェン様の服にデカデカとマーキングされていましたから刺したら大量の血のりが吹き出して本当に驚きました」
シュテファンが言った。
「えっ、じゃあオーウェン様は」
「おそらく全く傷ついておらぬかと」
クリスはオーウェンの顔を胸から離して見るとオーウェンは目を必至につぶっていた。
「オウ!」
クリスが怒りを含んだ声で呼ぶと諦めたように、オーウェンは目をはっきりと開けた。
「皆さん。私を騙していたんですね」
クリスは切れて叫んでいた。
「いや、違うぞ。俺は何もきてい・・・・」
「最低っ。オウなんて大っ嫌い!」
オーウエンの言い訳も聞かずにクリスはオーウェンを張り倒した。
皆様、ここまで読んで頂いて本当にありがとうございます。
すいません。やはりこうなってしまいました・・・・
ニタニタ笑っているジャルカも次の瞬間、シャラザールが来臨し・・・・
散々挑発されていたシャラザールはやる気一盃です。
でも、パレルモの影共は既に・・・・
次回明朝更新
怒り狂った戦神の振り上げた手を下ろすところがない・・・・
どうする大賢者、どうなる赤い死神 明朝にご期待下さい。








