大国皇太子の部下の企みは大賢者に見破られていました
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本日もう一話更新します
その後ジャルカによるマーキングの練習にクリスはつきあわされて大変だった。新兵器が何故ゴキブリホイホイという名なのかはよく判らなかったが。
パレルモ皇太子が来た時の最終の配置は当日決めるということで閣議は解散となった。
シュテファンは青い顔で閣議室を出た。ジャルカの指示でシュテファンにつけられたマークは実行犯役だった。また、ジャルカがオーウェンにつけさせたマークはやられる役。
ジャルカには完全にバレているのだろうか。
シュテファンにはもう判らなかった。
そもそも、クリスの前でオーウェンを傷つけたら確実に雷撃死が待っていた。
クリスは自分に対しては甘いが、自分の大切にしている者に対する攻撃には容赦なかった。
今は二人の仲は良くないが、クリスがオーウェンの事をただならぬ想いで見ているのは間違いなかった。シュテファンには、その時の怒り狂ったクリスの雷撃から助かる自信は100%無かった。
シュテファンは自室でみんなに対して遺書をしたためた。
せめてオーウェンには謝らないと。自分をこの位置まで引き上げてくれたのはオーウェンだったし、いろんな事を教えてくれた。そして、ボフミエのために本当に良くやってくれたのだ。
それを裏切るなんて許されることではなかった。
自らの死をもって贖うしか無かった。
「本当に本当に申し訳ありませんでした」
シュテファンは泣きながら文章をかきあげた。
「パレルモの手先となって死ぬことをお許し下さい」
「ふんっ、許しはせんぞ」
いきなり後ろから声をかけられて驚いたシュテファンは後ろを向こうとして椅子ごと地面に転けた。
「ジャ、ジャルカ様」
後ろには呆れた顔をしたジャルカとグリフィズが立っていた。
「どうして判ったのですか」
倒れたままシュテファンが聞いた。
「お主は馬鹿じゃの。儂は世界で一番偉大な魔導師なのじゃぞ。ちょっと本気になればパレルモのクズどもの動きなど全てお見通しじゃ」
「我々諜報局の動きも気にして頂けますか。王宮で変なことしていたら即座にわかるんですが・・・」
二人の呆れた顔にシュテファンは倒れていることしか出来なかった。
「そもそも、お主は何故クリス様に全て報告しなかったのじゃ」
「裏切ったら家族が皆殺しにされるからです」
ジャルカの問いにシュテファンがジャルカを見上げて答えた。
「本当にお主は愚か者じゃな。クリス様にかかればパレルモのクズなど瞬殺じゃぞ。クリス様が守ろうと本気になられたら、絶対にクズどもは手も足も出ぬ。それにクリス様にはシャラザール様がついているのは知っておろう。これだけシャラザール様はコケにされたのじゃ。今回はパレルモのクズどもを絶対に許されぬぞ」
残念なものを見るようにジャルカが言った。
「今すぐ殺して下さい。覚悟は出来ております」
「ふんっ。格好をつけるのは千年早いわ。殺すならとっくにゴキブリホイホイをけしかけて殺しておるわ」
吐き捨てるようにジャルカが言った。
「貴様には既にマーキングしておろう。貴様は実行犯役としてやられ役のオーウェン殿を刺すのじゃ」
「えっ」
「何を躊躇しておるのじゃ。元々刺すつもりだったのじゃろう。刺しても死なないところを」
「・・・・」
ジャルカの言葉にシュテファンは言葉も無かった。シュテファンにとって恩人を殺すことは出来なかった。オーウェンを刺すという実績があれば妹たちが殺されることはないだろう。
「最も刺すところを失敗されたら困るからの。マーキングしておく故そこを思いっきり刺せ」
「本当に宜しいのですか」
シュテファンは信じられないものを見るようにジャルカを見た。
「儂を何者と思っているのじゃ。世界で一番偉大な魔導師ぞ。例えお主が間違って心臓を突き刺しても蘇生させるのは可能じゃ」
「・・・・・・」
確かにジャルカの治癒能力は世界でもトップクラスだ。魔導爆弾を撤去した時もクリスはジャルカの所に飛んで行っていた。
「一番の問題はそれを見たクリス様に、貴様が瞬殺されないことじゃ」
「やはりそうですよね」
「オーウェン殿をお主が刺すのを見たら魔力が暴走してお主を襲う可能性もある」
「クリス様には前持ってお話はされないのですか」
「クリス様は切れた時が一番魔力の能力が上がるのじゃ。その一瞬にクズども全員にマーキングしていただく」
「えっ、しかし、オーウェン様を刺されて動揺された時にそんな事を頼むなんて可能なんですか」
シュテファンは最もな事を聞いた。
「ま、そこは上手くやるでの。お主が心配することではないわ」
そう言うとジャルカは人の悪そうな顔をして笑った。
ジャルカを信用して良いのだろうかと一抹の不安があったが、知られてしまってはもうジャルカに頼るしか無かった。
「何卒宜しくお願いいたします」
シュテファンはジャルカに平伏した。
「ん。大船に乗った気でおれば良いわ。何しろ儂は世界で一番偉大な魔導師じゃからの」
そう言うとジャルカは高笑いした。
シュテファンはそれを上目遣いに不安そうにただただ見ていたのだ。
次はパレルモ皇太子が登場です。めちゃくちゃ嫌なやつです。








