大国外務卿の乗ったスカイバードが爆破されました
翌日空港からドラフォードの王都イエーナ行きの特別便が飛び立とうとしていた。
「アルフェスト卿。あまりお構いも出来なくて申し訳ありませんでした」
クリスがアーサーに手を差し出して言った。
「いえ、こちらこそ、色々お世話になりました。息子のこと宜しくお願いいたします」
「お任せ下さい」
アーサーの言葉にクリスは頷く。
「殿下もご健勝で。筆頭魔導師様と少しでも仲良くなれたら良いですな」
最後は小声でアルフェストは言った。
「本当だな」
ブスッとしたオーウェンが応える。
もみじマークをつけられてから、オーウェンはクリスに許してもらっておらず、二人の距離は今も1メートル以上開いていた。
スカイバードが発射台から飛び立つのを見送った後、オーウェンが話しかけようとしたが、クリスはあっさりとオーウェンとは別の馬車に乗り込んだ。
「えっ、ちょっとクリス」
クリスに近寄ろうとしたオーウェンをウィルの剣が塞ぐ。
「えっ、ウイル、お前」
「内務卿はあちらの馬車で」
冷たくウィルは別の馬車を剣で指した。
そのオーウェンの前でクリスの乗った馬車を4騎の親衛隊の騎士が護衛して出発した。
「えっ、ちょっと待ってよ」
慌ててオーウェンも自分の馬車に乗り込む。
それを呆れてオーウェンの護衛騎士のジェキンスは見ていた。
「今日は宮廷に帰り次第、閣議が始まります。今回の議題は前回のアデリナ襲撃事件の報告になると思われます」
フェビアンから聞かされてクリスは嫌そうな顔をする。
昨日1日落ち込んでいたのだ。クリスの雷撃で100名以上が命を失っていた。彼らが命を奪う程の悪事を働いたのかクリスには判らなかった。多くが麻薬のバラウェイの販売に関わっており、それだけで絞首刑なのだから気にするなとジャンヌらは言ってくれたが、やはりクリスは雷撃したことを後悔していた。更生する機会を奪ってしまったのではないかと。
「フェビアン、何も今クリス様に言わなくても」
イザベラが文句を言う。
「しかし、会議では報告されることですから。ここでショックを受けておいて頂いた方が」
「だからガサツって言われるのよ。今何もショックを受けていただかなくても」
「良いのよ。イザベラ。私がやったことだから。正面から受け止めないと」
クリスは弱々しく微笑んで言った。
「しかし、あれはクリス様にはっきりと前もって断っていなかったジャンヌ殿下らが悪いかと」
「そうです。クリス様。前もって判っていたら絶対にアデリナの囮などお許しにならなかったし、こんな事は起きておりません」
イザベラとメイは未だにジャンヌを許していなかった。クリスの父から王妃にしっかりと釘を刺しておいてもらうように既に依頼済みだった。
「申し訳ないけれど前もってお伝えしなければいけないことがあって、アレク殿下からパレルモが怪しいとの報告がありました」
フェビアンがクリスを見る。
「パレルモ王国ですか。ザールの北にある」
「はい。詳しくは閣議で報告があると思いますが」
パレルモ王国は千年以上続く王国だ。シャラザール帝国より古い。大した産業があるわけでもないのに、また、それだからかどの大国にも併合されること無く、今に至っていた。
でも、確か、胡散臭いことでも有名な国だった。暗殺団を抱えて世界的に恐れられていたこともあると言う。叩けばホコリがいくらでも出てきそうな国でもあった。
「パレルモ国ですか」
クリスは呟いた。また、遠征になるのだろうか。クリスはため息をついた。
閣議は紛糾した。
「このように、パレルモ王国は今回のアデリナ襲撃事件の主犯の可能性が大きい。その上、パラウェイの栽培をしている可能性が大きい。直ちに攻撃すべきだ」
アレクの言葉にジャンヌが頷いた。
「しかし、まだ、疑いの段階だろうが。そこで出兵するのはどうかと思うぞ」
「そうよ。あまりにも出兵理由が希薄だわ」
オーウェンと電話参加のアメリアが反対する。
「確かにそうだが、パレルモ王国千年の歴史は暗黒面に覆われている。ここで攻撃しないと暗部の攻撃に合う可能性が大きいと思われるが、グリフィズはどう思う」
アレクが諜報局長に聞いた。
「確かにパレルモの暗黒面は脅威です。彼らは無差別テロを起こす可能性もあります。しかし、攻撃するにはあまりにも情報が不足しております。この国に潜入している敵の暗部もクリス様が殲滅して頂けたと思われるのでしばらく様子を見られたらいかがでしょうか」
グリフイズの説明にクリスは良心の呵責に苛まれたが、他のものにはそれが妥当だと思われた。
「大変です」
そこへ兵士が駆け込んできた。
「何事だ。閣議の席に無断で入ってくるとは」
アレクが叱責した。
「も、申し訳ありません。しかし、アルフェスト卿の乗った機が爆発しました」
伝令のもたらした報告に皆愕然とした。
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