サクサ公爵家は最後の手段を発動しました
「陛下大変でございます」
パレルモ王国の宰相マイヤネンがマティアス・パレルモ国王の執務室に挨拶もそこそこに飛び込んできた。
「どうしたというのだ。マイヤネン。ボフミエの小娘に文句が言えなかったのか」
国王は鷹揚にマイヤネンに尋ねた。
「それどころではございません。赤い死神が出てきたのですが」
「何、やはりボフミエの小娘ではなくて赤い死神が出てきよったか」
「はい」
国王の言葉にマイヤネンは頷いた。
「で、その赤い死神に脅されたのか」
「左様でございます。赤い死神が言うには、ボフミエの小娘の雷撃は一撃必殺で今まで誤射したことはないと」
「誤射したことがないとはどういう事じゃ。現に余の王宮が攻撃されたではないか」
国王は怒りを顕にした。
「赤い死神が言うには雷撃した限りはそこに下手人がいたはずであると」
「そんな訳はなかろう。現に誰もいなかったではないか」
国王は言い張った。
「赤い死神が言うには、ボフミエの小娘の雷撃したことがもしそれが事実ならば付近の軍を向かわせると」
マイヤネンは国王の顔をうかがった。
「何だと、ノルディン帝国の皇太子に言われるならばいざしらず、たかだかボフミエ魔導国など」
「しかし、ザールには正義の騎士がおります。赤い死神も出てくると明言いたしましたし、ドラフォードと陳国からも1個師団を出すと」
「馬鹿な。そのようなことがあるはずなかろう」
「しかし、ザールの時はドラフォードも陳国も出兵しておりますし、そもそも、陳国はボフミエの小娘に助けられておりますし、ドラフォードの皇太子がボフミエの内務卿です。十二分に有り得る話です」
必至にマイヤネンは言い募った。
「おのれ。ボフミエなどに脅迫されるなど、何という恥辱」
国王は歯を食い縛った。
「胸中お察し申し上げます。しかし、今回の件サクサ公爵が噛んでいる可能性が」
「サクサか」
国王は言葉を濁した。
「公爵家と王家は一蓮托生だ。もしそうならば致し方あるまい」
「今回の件で赤い死神に目をつられた可能性もございます。ボフミエ魔導国にはいま多くの皇太子連中が集っております。本件、誤魔化す意味でも皇太子殿下を派遣なされてはいかがですか」
言いにくそうにマイヤネンが言った。
「何じゃと。皇太子を人質に出せと申すか」
国王はマイヤネンを睨みつけた。
「人質などと。そもそも、シャラザール3国を始め、ノルディン帝国、陳王国、ジパグ国、トリポリ他多くの国の皇太子や王族がボフミエに揃っております。次代をになう、皇太子殿下におかれても、ボフミエで交友関係を広げられることは必ずプラスになりましょう」
「そうじゃな。皇太子とのつながりが多ければ次代の政治にプラスに働くか」
国王は少し考えたあとで仕方無しに頷いた。
「はっ。左様にございます」
「早急に検討いたそう」
「御意」
マイヤネンは頭を下げた。
一方その公爵領ではシッランパーから公爵が報告を受けていた。
「なんと、工作に入った我らの手の者が尽くボフミエの小娘の雷撃で死したと申すか」
「はい。左様でございます」
「何ということなのじゃ。販売網にも響いたか」
「はっ。工作員は販売員も兼ねている場合も多かったですから」
シッランパーは頭を下げた。
「マイヤネンからも言ってきおったわ。赤い死神が目をつけてきたと」
「左様でございますか。参りましたな」
シッランバーは困った顔をした。
「何を困っておる。パレルモ一千年の歴史でこれ以上に困ったことなど何度もあったわ。我が国はその幾多の困難を乗り越えて参ったのだ」
「しかし、いかがなさいますか」
「早急に手を下す必要があろう。影全てに直ちに関係者への暗殺計画を発動させよ」
「全ての影にですか」
驚いてシッランバーは公爵を見た。
「当然じゃ。国が滅びれば終わりぞ。今まで影として潜っていた者共に全てターゲットを与えて暗殺計画を発動せよ」
立ち上がって公爵は命令した。
「御意。直ちにすべての影に命じます」
シッランバーは平伏した。
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作戦の失敗に躊躇なく公爵は最終作戦を発動しました。
暗黒面に1千年君臨したパレル王国の最終作戦がクリスらに襲いかかります。
明日も3回更新予定です。
乞うご期待








