大国国王は皇太子の要望に応えて外務卿をボフミエに派遣しました
「どうされたのですか。陛下。浮かぬ顔をされて」
ドラフォード王国アーサー・アルフェスト外務卿は国王に呼ばれて執務室に来ていた。
「ガンドルムの奴が、最近のボフミエ魔導国の動きにもっと釘を指せと言ってきおった」
苦虫を噛み潰したような顔をしてピーター・ドラフォード国王は言った。ガンドルムはドラフォードの公爵家の1つでどちらかと言うとうるさ型だった。今でもオーウェンの婚約者に自らの娘をならせようとしゃかりきになっているのだ。最有力候補のクリスはできるだけ叩いておきたいとの考えダダ漏れで抗議してきたのだ。
「まあ、確かにボフミエ魔導国はここ1年以内に、モルロイ、クロチア、ザール教国、新大陸のフロンティアにビッグゲートと領地を急激に広げておりますな」
「このまま行くとこのドラフォード王国の脅威になるというのだ」
「まあ、確かに将来的には脅威になるかもしれませんが、今は我が国の皇太子殿下が内務卿を務めていらっしゃいますし、東方第一師団もボフミエ魔導国に派遣中ですし。文官も20名程度派遣しておりますし、今すぐはどうなるものでも無いかと」
アーサーがボフミエ国にいるドラフォードの勢力を上げる。戦力的にはドラフォード最強の東方第一師団を派遣しているし、国の大本の内務卿を皇太子がやっているのだ。ボフミエの勢力アップはそのままドラフォードの勢力の拡大に繋がっている。
「それはそうなのだが」
「魔王を退治するためにモルロイとクロチアは併合。堕落したザール教攻撃にしても、先に手を出してきたのはザールの方ですし、今回の新大陸の派遣はインディオの虐殺奴隷化を防ぐという高尚な使命がありましたからな。どれも仕方がないかと」
「しかし、いつまでもオーウェンが内務卿を務めるわけには行くまい」
アーサーの意見に国王が反論する。
「そうですが、今まで我が国と争っていたノルディン帝国の皇太子殿下が外務卿ですし、魔導師団長は友好国マーマレードの皇太子殿下です。教育卿はこれまた友好国テレーゼ王国の皇太子殿下。古の大国陳王国の王女殿下が農務卿、東方の島国ジパグ国の皇太子殿下が財務卿と諸国連合の体をしているボフミエ魔導国には文句を言える国はほとんどないのではないかと」
「おままごと王朝と揶揄されていたのが1年前なのだが、1年で本当に力をつけてきおった」
忌々しそうに国王は言う。
「ひょっとして国王陛下も脅威に感じておられるのですか」
「バカを申せ。彼奴らは魔王を退治してくれるわ、誰もが手出しできなかったザール教を粛清、新大陸の横暴も諌めてくれたのだ。これほどドラフォードに取って便利な国はないぞ。」
「まあ、左様でございますな。唯一被害を被っておるのはノルディン帝国ですが、あそこの皇太子殿下はボフミエ政権の中枢部にいらっしゃいますからな。どうしようもないという感じだと思いますが」
「ノルディン戦でも先頭に立っていたって話だろう。ノルディンの兵士たちもさぞ大変だったろうな」
「まさか、自国の皇太子に剣を向けるわけにも参りますまいし」
二人は苦笑いをした。
「まあ、他の者たちにボフミエ内部の様子を聞くと、皆仲良くおままごと政権をやっているようだが」
「しかし、戦力は超一級品ですからね。クリス様を筆頭に」
「なんでも、ノルディンの宮殿を一瞬で破壊したとか、ノルディンの王子も一瞬で黒焦げにしたとか」
「ぜひとも皇太子殿下のお妃様にお迎えしたいのですが」
アーサーが多くの臣民の希望を話す。クリスは聖女クリスとしてドラフォードの中でも人気が高かった。軍の方でもいつも先陣にいるクリスの事は大半の兵士が支持していた。
「他国が納得するものか。ボフミエとドラフォードの力を足すと世界最強になろうが」
「ノルディンとマーマレードの皇太子殿下もお近づきになっておられるみたいですし、宜しいのではないですか」
「そう思うか」
「はい」
国王の問にアーサーは頷いた。
「それよりも、8年前のその筆頭魔導師様から我が息子に来たラブレターの件について息子から猛抗議が来ているのだが」
国王が話題を変えた。
「8年前のラブレターでございますか。ああ、クリス様からマーマレードの皇太子の婚約者にされそうだからその前に連れて逃げてくれというお手紙でしたか」
思い出してアーサーが言った。
「そうだ」
「少女らしくてめちゃくちゃ可愛らしいお手紙でしたな」
微笑んでアーサーが言う。
「笑い事ではないぞ。流石にそのままオーウェンに見せたら、やりかねなかったから、留め置いたのだが」
「クリス様にその件について両国の国際問題になるのを危惧して留め置いて申し訳なかったと詫び状を認められたらいかがですか」
「私が詫び状を書くのか」
不服そうに国王が言う。
「はい。そうして頂ければ臣がそれを届けてまいります」
「その方が参るのか」
「はい。殿下を始め次代の世界を背負って立たれる方々にご挨拶してくるのも宜しかろうと。ボフミエのスカイバードなるものにも興味がございますし」
「そうだな。その方の息子も修行に出せばどうだ」
国王が言い出した。
「次代の指導者の多くがボフミエに来ておる。そこで人脈を広げておくのも良かろう」
「左様でございますな。早速検討してみます」
早速、アーサーはドラフォードの学園を卒業した息子をボフミエに送る算段を始めた。
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