閑話 ラブレターの事情
読んで頂いてありがとうございます。前話で何故オーウェンから返事が来なかったのか書いてほしいとのご要望ありましたので、私としてもあれで終わってはと思い、
『「神様、助けて!」現れた無敵の戦神は実は可憐な少女でした」』
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のエピローグの後の話です。
「はいっ、あ~ん」
アメリアはヘルマンの口元に食事を運ぶ。
ベッドの上のヘルマンは嬉しそうにそれを口を開けて受け入れていた。
「な、なんと、あの氷の女のアメリアがいちゃついているぞ」
「本当だ。天地がひっくり返らないといいけれど」
画面越しに見ていたジャンヌとオーウェンが言った。
「なっ」
アメリアは真っ赤になった。まさか魔導電話越しに見られているなんて思ってもいなかったのだ。ヘルマンが盛大にむせて、慌ててアメリアがその背を叩く。
「まあ、仲の宜しいことは良い事ではないですか」
クリスの補佐官の一人のイザベラが微笑んでいった。
「な、なんで人のことを覗いているのよ」
アメリアが文句を言った。
「何言っているんだか。定時連絡の時間なんだけど」
「本当に色ボケアメリアはどうしようもないな」
オーウェンとジャンヌが言う。
「モニカが泣いていたぞ。アメリアがちゃんと仕事をしてくれないって」
「何言ってるのよ。あんな大量の書類を送ってきて。出来るわけ無いでしょ」
オーウェンのからかいにアメリアが反論した。
「ごめんなさい。モニカ様が書類の量が多くて大変だとおっしゃったので、私が10歳の時に王妃様からさせられた書類の量なら大丈夫かなって思ってしまって」
クリスが慌てて言った。
「えっ、あなた本当に10歳の時にあの量やっていたの?」
「はい」
アメリアの問いにクリスが頷いた。
「うわっ、それ出す方のエリザベスおばさまもおばさまだけど」
「だろう。私が逃げ出す意味判るだろう」
「姫様はサボりすぎですぞ」
ジャルカが横からしゃしゃり出てきた。
「王妃様もちゃんと考えられておりましたからな。13歳の姫様にはクリス様の10分の1の量しか、お渡しになっておりませんぞ」
「10分の1でもおかしいだろう。あの量。13の時なんだぞ」
ジャンヌが強調した。
「まあしかし、3っつも上の姫様が10歳のクリス様の10分の1というのもどうかとは思いますが………」
「ジャルカ。私は文章処理能力でクリスに勝てるとは思っていないぞ」
「まあ、それは私も認めますが、10分の1以下というのはどうかなと思いますが」
「クリスの処理能力がおかしいんだよ」
「それ以上のオーウェン様もいらっしゃいますが」
「その二人は異常!」
そのジャンヌの言葉に少し傷つくクリスだった。
オーウェンはクリスと同じと聞いて喜んでいたが……
「まあ、最近の若者は手紙も書かずに、何でも魔導電話で済ませてしまう傾向がありますからな。文章処理能力が落ちておりますな。もっと手紙などで練習しないと。姫様は手紙など書かれたこともないでしょう」
ジャルカがジト目でジャンヌを見る。
「何を言っている。私もファンレターには返事を書くぞ」
「えっ、返事っておっしゃいますが、あの『お手紙ありがとうございます』とだけ書かれたはがきですか」
ジャンヌの問にいかにも馬鹿にしたようにジャルカが言う。
「あと、名前も自筆だ」
「そんなの当然でしょう」
「仕方がないだろう。1日100通くらい来る事もあるし」
「まあ、返事書かないやつが多い中で返事出しているだけでもマシだよな」
「クリスはどうなんだよ。毎日下手したら千通くらい来るよな」
ジャンヌが話をふる。
「そこまでは多くないと思いますけれど、出来る限り1言添えて返事は書くようにしております」
「そうですぞ。姫様。これをご覧下さい」
ジャルカがはがきを出してきた。
「なんでお前がクリスからのはがき持っているんだ」
「私も昔出しましたからな」
ジャンヌの問にジャルカが平然と答えた。
「なになに、『いつもお世話になっております。感謝状わざわざ頂きありがとうございます。
いつもジャルカ様には困った時にお助け頂き、とても感謝しております。今後ともご指導ご鞭撻の程よろしくお願いいたします』」
「これくらいは書いてほしいですな」
「クリス、これを皆に送っているの」
「そうですね。1言添えて、送るようにしております」
アメリアの問いにクリスが答えた。
「すごいな。あの量をだろう」
「はい。子供の時に、とある方にお手紙書いたんですど、無視されましてひどく落ち込んだことがあって。その事があるのでお返事だけは必ず書こうと思っています」
「えっ、それってラブレターですか」
クリスの話にイザベラが興味津々で聞いてきた。
「えっ、ラブレター!」
オーウエンがその言葉に固まる。
「いや、そんなことは」
赤くなってクリスが口を濁す。
「可愛いクリス様からラブレターを貰ったにもかかわらず、無視したなんてよほど自分に自信のあるやつですな。オーウェン様もそう思われるでしょう」
「本当に」
いきり立ってオーウェンが言うが、クリスの視線が冷たい。
「でも良いのです。その方はとてもお偉い方ですから」
「偉いって、クリスより偉いって限られるぞ」
「まあ、子供の時だから、騎士団長か何かか」
「3代前の近衛師団長はとてもハンサムだったぞ」
「ひょっとしてザクセン様ですか」
みんな好きなことを言う。
「誰でも良いではないですか。その方はとても偉い方だったので、たかだか1侯爵家の小娘から送られた手紙のことなどもう忘れておいでなのです」
クリスの言葉は氷のように冷たかった。
「えっ、クリスが冷たい」
「という事はひょっとして相手はここにいるのか」
「ジャンヌ、ひょっとしてお前じゃないのか」
「えっ、私はクリスをよく呼び出しただけで、それっぽいのはもらっていないぞ」
「とするとこいつか」
全員の白い視線がオーウェンに突き刺さった。
「えっ、俺?でも俺クリスから手紙なんてもらったことは・・・・」
オーウェンには全く覚えのないことであった。どうやらクリスの反応からして送った相手は自分のようだった。でも、クリスからラブレターなんてもらったことはない。
「その方は、私なんて本来、到底相手もしてもらえない偉い方だったのです。でも、その時私はまだ子供で、手紙を書くのに必死だったのです。全く無視されるなど思いもせずに。本当に世間知らずの小娘でした」
クリスは悲しそうに言った。
「えっ、ちょっと待ってクリス。俺はクリスからラブレターになんてもらったことはないぞ。何だジェキンス」
驚いて叫ぶオーウェンの袖を必死でジェキンスは引いていた。
「すいません。8年くらい前に、オーウェン様あてに来ていた手紙を陛下にそのまま差し出したことがあります」
小声でジェキンスが報告した。
「な、なんだとお前」
オーウェンは唖然とした。
「まあ、もう済んだことではないですか。それよりも閣議を始めましょう。フェビアン様、宜しくお願いします」
「えっ、ちょっとクリス待って」
必死にクリスに言い訳しようとするオーウェンを無視してフェビアンは閣議を始めた。
読んで頂いてありがとうございます。
前話でも、記載させていただいたように次章ではついにクリスとオーウェンが結ばれます………
はずです・・・・・
3週間以内に書き出します。
乞うご期待。今章は目指せ1万ポイントです。まだ半分ですが。
しかし、ここまで書き続けられたのはここまで応援いただいた皆様のおかげです。
宜しくお願いします。








