表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
皇太子に婚約破棄されましたーでもただでは済ませません!  作者: 古里@3巻電子書籍化『王子に婚約破棄されたので義理の兄が激怒して
第十章 マーマレード元皇太子の反撃

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

339/480

閑話 クリスのラブレター

皆さん、いつも読んで頂いてありがとうございます。

5000ポイント御礼閑話です。

ここまでやってこれたのは本当に応援して頂いている皆さんのおかげです。


クリスの10歳の時のお話です。




「クリス様。旦那様が応接室でお呼びです」

クリスの護衛騎士のメイが伝言してきた。

「お父様が」

クリスは中庭の椅子から立ち上がった。



応接室に行くとそこには父だけでなく、母までもが座っていた。


「お父様。お呼びですか」

クリスは促されて二人の前に座る。


「実はね、クリス。王宮から使者が来たのだ」

「ジャンヌ姉さまですか」

無邪気にクリスが聞いた。ジャンヌやエドワードとは王宮で小さい時から何度も遊んでいる。でも改まって使者が来るなんて変だ。いつもは手紙で呼ばれて終わりなんだけど。


「いや、王妃様からだ」

侯爵が言う。

「王妃様からですか」

クリスのような小さい子に用ってなんだろう。クリスは小首をかしげた。


「やっぱり、この話は無しだ」

その可愛い様子に見かねてミハイル侯爵が言った。


「あなた!」

ミハイル侯爵夫人がその夫を注意する。


妻の様子に仕方無しに侯爵は話しだした。

「実はね、クリス。王妃様から10日後にクリスにお茶会の招待状が来ているんだ」

「お茶会ですか」

クリスは聞いたことはあったが、まだ参加したことはなかった。


何しろいつもはジャンヌに庭での冒険ごっこや、魚釣り、魔術の練習等々に散々つきあわされているのだ。最近はジャンヌが王女教育から逃げる口実に呼ばれているような気もしていた。王妃様はジャンヌから聞く限り鬼とのことだった。

最もクリスらにはそこまできつくなかったが、いつもジャンヌにつきあわされているので、怒られるのもジャンヌと一緒に怒られることが多かったのだったが……


「最近はジャンヌ殿下とはそこまでひどいことはしていないと思いますが………」

思わずまた叱られるのかと警戒して言った。


「今回はジャンヌ殿下でなくて、エドワード殿下がご一緒なの」

「エドですか」

最近はあまり会っていなかったが、同い年の第一王子のエドにはいじめられたという思い出しか無かった。もっとも最近はいじめられてもやり返していたが………


「実はクリスに殿下との婚約の話が来ているのよ」

「・・・・・・」

母の言葉にクリスは絶句した。



「しかし、シャーロット、やはりクリスにはまだ早すぎるだろう」

横から侯爵が嫌そうに言う。


「しかし、あなた。クリスもミハイル侯爵家の長女。王家から求められればいつまでも断りきれないですわ」

「しかし、シャーロット。クリスはこんなに幼いんだ。何も今から縛り付けることはないだろう」

侯爵が嫌そうに言う。

「そうかと言って10歳で王家との婚約というのは決して早すぎるということはないのではないですか」

夫人が夫をなだめて言う。


「でも、こんなに可愛い娘を王家にやるなんて」

「あのう、お父様。私、その話を絶対に受けなければならないんでしょうか?」

クリスが口を開いた。


「いや、そんなことはないよ。ほら。クリスも嫌だって言っているじゃないか」

クリスの尻馬に乗って侯爵が言う。


「クリス。何か問題があるの?」

代わって母が聞いてきた。


「そんなのありまくりだろう」

「あなたは黙っていて下さい」

夫人が侯爵を一喝して黙らせるとクリスの方を向いた。


「ミハイル侯爵家とマーマレード王家は何代か毎に婚姻を結んでいるの。基本的に断るのは難しいのよ」

母が諭すように言う。


「でも、私、オウに大人になったらお嫁さんになってあげてもいいって約束したんですけど」

「な、何だと、オウってどこのどいつだ」

衝撃の事実を言われてミハイル侯爵は切れていた。


「えっ、クリス。オウってオーウェン様よね。ドラフォードの王子の」

「えっ、オウってドラフォード王国の王子様だったの!」

母の言葉にクリスは驚いて言った。

まあ、ジャンヌらを呼び捨てにしていたから、そこそこ身分のある人だとは思っていたけど、南の大国ドラフォードの王子だとは思ってもいなかった。

オウは毎年夏にジャンヌの所に遊びに来ていて、クリスともよく遊んでくれた。おしゃまなクリスを馬鹿にしたりいじめることもなくて、本当に紳士だった。そんな彼が、転けそうになったクリスを助けてくれた時に、お礼のキスと同時に言ってしまったのだ。


「そんな話聞いていないぞ」

「クリス、あなた、そんな大事なこと口約束するなんて、良くないのよ」

立腹する侯爵を置いておいて夫人は言った。


「ごめんなさい。でも、口約束でも約束は約束でしょう。一度約束したことは破ってはいけないってお母様もおっしゃったじゃない」

「それはそうだけど。オーウェン様はお嫁さんにしてくれるとは確約してくださっていないんでしょ」

「大きくなったらお返事下さいってお願いしたの」

「だからまだ、お約束したことにはならないわ。それに、お母さんも出来たらクリスにはこのマーマレードに居てほしいのよ。ドラフォードは南の大国だけど、遠いし、この国ならばお父様も私もあなたを見守ってあげられるけれど、ドラフォードだとそれは出来ないわ。それにお父様とも私ともめったに会うことは出来なくなるのよ。それでも良いの?」


「それは私も嫌だけれど、オウのお母様もお優しそうだし、ぜひともうちにお嫁にいらっしゃいって言われているし、ジャンヌお姉さまにはうちの母は鬼だっておっしゃっているし、私もちゃんとやっていけるか不安で………」


夫人は自分の元雇い主のキャロラインが既にクリスに声をかけているのを知って驚きもしたし、ジャンヌが余計なことをクリスに言っているのも気になった。

確かに、ジャンヌの母の王妃は厳しいし、それに反発するジャンヌがどんどんお転婆になっているのもよく知っていた。


しかし、クリスならば王妃ともうまくやっていけるとは思っていたが、王妃が厳しいのは事実だった。


ドラフォードにもマーマレードにもクリスはやらんっと叫んでいる夫は無視して、夫人は10日後のお茶会に参加することをクリスになんとか納得させた。



応接から出てきたクリスは元気がなかった。メイは驚いた。どこまでも前向きなクリスが落ち込んでいるなんて余程のことだった。


「クリス様。どうされたんですか」

「ううん、メイ。なんでも無いわ。心配してくれてありがとう」

心なしか言葉にまで元気が無かった。

「えっ、クリス様らしくないですよ。余程嫌なことを旦那様に言われたのですか」

「うーん、そうじゃないんだけど、オウに少し悪い事したみたいなの」

「えっ、オーウェン様にですか。クリス様がされたいたずらなら、笑って許して頂けると思いますけど」

「そんな事ないでしょ。だって、私はよく知らなかったんだけど、オウってドラフォード王家の王子様だったんでしょ」

「えっ、知らなかったんですけか。でも、殿下は南の大国ご出身とおっしゃっていらっしゃったと思うんですけど」

「偉い人だとは思ってたけれど王族だとは思っていなかったの」

「でも、失礼なことなんてされましたっけ。それにオーウェン様はクリス様には甘かったと思うんですけど」

普段、貴族令嬢を避ける傾向にあると噂されているオーウェンはクリスにはよくかまっている方だとオーウェンの護衛騎士のジェキンスからもメイは聞いていた。


「うーん、だって、この前なんか、助けてくれたオウにキスして将来お嫁さんになってあげるなんて不敬なこと言ってしまったのよ」

「あれでしょう。ほほえましい光景だと私達が見ていたやつですよね。あれは良いんじゃ無いですか。オーウェン様も真っ赤になっていらっしゃいましたし、どちらかと言うと喜んでおられたと思うのですが」

「そうかな」

「はいっ、そんなに気にされなくて良いと思うのですが」

「メイ、お願いがあるんだけれど、オーウェン様にお手紙送りたいの。でも、普通に送ってもおそらく届かないと思うの。どうしたら良いかな」

「護衛騎士のジェキンクス様に私から送りましょうか」

「本当に。じゃあ少し待ってて。今から書いてくるから」


クリスは部屋に籠もると早速書き出した。


『親愛なるオーウェン様。


先日は私にわざわざ付き合って遊んで頂いてありがとうございました。本当に楽しかったです。

でも、最後に失礼なことしてすいません。助けて頂いて思わず、やってしまいました。

大国ドラフォードの王子様とは知らず、失礼お許し下さい。


でも、あれ私の本心なんです。オウは優しくて強くていつも私の事を大切にしてくれて、本当に大好きです。


書くのはただですよね。気にいらなければこの手紙は燃やして下さい。


でも、一つだけ私にとっては悲しいお知らせです。実は10日後にマーマレードの王妃様のお茶会に呼ばれているんです。なんでも、エドの婚約者にどうだろうって話になっているみたいで、私の気持ちは関係ないみたいです。


私はオウによく読んでもらった黒髪の騎士の話が好きです。お姫様がピンチになった時に、さっそうと現れてお姫様をさらって行く騎士がオーウェン様みたいだといつも思っていました。


オウが私の王子様だったら良かったのにと思わず思ってしまいました。


エドの婚約者になったらもうオウと会うことはなかなか難しいと思います。


最後に私の本心を書いて送ります。

                     あなたのクリスより』



クリスは何回も書き直して清書した。

初めてのラブレターだった。

クリスは書いたからってどうなるものでもないけれど、自分の心の区切りにはあると思った。


翌朝、メイが手紙を出してくれた。

速達にしてくれたので、2日後にはドラフォードの宮殿に着いたはずだった。


でも、オウからは何も言ってこなかった。

前日になってもメイのもとにもクリスのもとにも返事は来なかった。


クリスは元気が無くなっていた。


「クリス、どうしたの。元気がないけれど」

夫人が気にして聞いてきた。

「そんなに嫌ならば明日のお茶会は無しにしよう」

侯爵は喜んで言った。

「あなた!」

夫人が注意する。


「大丈夫です。少し疲れたみたいなの。寝れば治ります。もう休んでいいですか」

「それは良いけれど」

心配する侯爵らをおいてクリスは寝室に戻った。


(やっぱり、私なんかじゃ大国ドラフォードの王子妃は無理なんだ。ても、それならそれで返事くらいくれてもいいのに・・・・・)


涙にまみれてクリスはいつの間にか寝入っていた……………


ちょっと悲しい終わりです。が、次回お待ち下さい。


『「神様、助けて!」現れた無敵の戦神は実は可憐な少女でした』

https://ncode.syosetu.com/n9780ha/

で、新大陸に援軍に行っていたクリすらも帰ってきました。

二人の間は相変わらずですが、再び本編に戻ります。

次は本当にクリスとオウの恋愛です。

次回こそ二人はくっつきます。

お楽しみに。

1ヶ月以内に再開予定です。

少しお時間下さい。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
この話の

シリーズ一覧

はこちら

『シャラザール帝国』

https://ncode.syosetu.com/s1987g/
クリスとシャラザールのお話です。

この話が電子書籍化されました

3巻が『王子に婚約破棄されたので、義理の兄が激怒してこの国を滅ぼすと叫び出したんだけど…… そのお義兄様から「エリーゼ、どうか結婚してください」と求婚されました。』

3巻表紙画像

表紙絵はおだやか先生がエリーゼをお義兄様が抱きあげる美しいシーンを描いて頂きました。
こちらの新規書き下ろしは学園に出る幽霊竜退治です。学園時代のお義兄様の幽霊騒動にエリーゼが一緒に冒険します
とても面白いのでぜひとも手にとって頂けたら嬉しいです。

■【10/25シーモア先行配信はこちら、3千字のSS連れ子様の護衛騎士・シーモア特典付き】
https://www.cmoa.jp/title/1101429725/vol/3/


■【11/19発売アマゾンはこちら】
https://www.amazon.co.jp/-ebook/dp/B0DK55BWGS/


■【11/19発売楽天はこちら】https://books.rakuten.co.jp/rk/e9901759f61337b88109b29ff7a5ffb0/

第2巻『王子に婚約破棄されたので、義理の兄が激怒してこの国を滅ぼすと叫び出したんだけど…… 帝国に帰還しての宮廷夜会、お義兄様にキスされてしまいました』

表紙画像

表紙絵はおだやか先生が美しい、お義兄様とエリーゼのキスシーンを描いて頂きました。
こちらの新規書き下ろしはセッシーとの出会いです。皇帝一家でセシール湖にお出かけしたエリーゼはお義兄様たちと湖の地下宮殿に冒険に出かけます。
反逆の陰謀と共にそこにいたのは巨大な水竜で…… とても面白いのでぜひとも手にとって頂けたら嬉しいです。

■第2巻【9/25シーモア先行配信はこちら、3千字のSSドレス工房の主の独り言シーモア特典付き】
https://www.cmoa.jp/title/1101429725/vol/2/


■第2巻【10/19発売アマゾンはこちら】
https://www.amazon.co.jp/dp/B0DGQ7J6VH/


■第2巻【10/19発売楽天はこちら】https://books.rakuten.co.jp/rk/178537d615973d18a4cb8adc53c66c16/


第1巻が『王子に婚約破棄されたので、義理の兄が激怒してこの国を滅ぼすと叫び出したんだけど 卒業パーティーは恐竜皇子と恐れられるお義兄様と一緒に』

表紙画像
上の表紙絵はおだやか先生が可愛いエリーゼを守る格好良いお義兄様を描いて頂きました。
このなろうで書いたのに【お義兄様との洞窟探検】2万字の描き下ろしが追加されています。
小さいヒロインのエリーゼはダンジョンに潜りたいとお義兄様に無理やり連れて行ってもらって、巻き起こす大騒動。
後で知ったお義父様(皇帝)が怒るもエリーゼの前に撃沈、更に行ったダンジョンにはなんとあの…………、とても面白いお話になっています。

■第1巻【8/26シーモア先行配信していたものは、3千字のSS商人の娘の独り言シーモア特典付き】
https://www.cmoa.jp/title/1101429725/


■第1巻【9/20発売アマゾンはこちら】
https://www.amazon.co.jp/dp/B0DD3SHSJV/


■第1巻【9/20発売楽天はこちら】https://books.rakuten.co.jp/rk/86f757d2dd7d3674900eac6783288ad5/

ぜひとも手にとって見ていただければ嬉しいです。

私のお話

【書籍化】

しました!
アルファポリスのレジーナブックスにて

『悪役令嬢に転生したけど、婚約破棄には興味ありません! ~学園生活を満喫するのに忙しいです~』https://ncode.syosetu.com/n3651hp/

6月28日全国1200以上の書店にて発売しました。表紙画像は11ちゃんさんです。
表紙画像
表紙絵をクリックしたらレジーナブックスの説明ページに飛びます。


■アマゾンへのリンク


■楽天ブックスへのリンク


■hontoへのリンク


手に取って読んで頂けたら嬉しいです。

私の

新作小説

はこちら!

『ヒロインに躱されて落ちていく途中で悪役令嬢に転生したのを思い出しました。時遅く断罪・追放されて、冒険者になろうとしたら護衛騎士に馬鹿にされました。護衛騎士と悪役令嬢の恋愛物語』

https://ncode.syosetu.com/n0185hu/

公爵令嬢キャサリンは憎き聖女を王宮の大階段から突き落とそうとして、躱されて、死のダイブをしてしまった。そして、その瞬間前世の記憶を取り戻するのだ。そして、黒服の神様にこの異世界小説の世界の中に悪役令嬢として転移させられたことを思い出したのだ。でも、こんな時に思いしてもどうするのよ! しかし、キャサリンは何とか、チートスキルを見つけ出して命だけはなんとか助かるのだ。しかし、それから断罪が始まってはかない抵抗をするも隣国に追放させられてしまう。
「でも、良いわ。私はこのチートスキルで隣国で冒険者として生きて行くのよ」そのキャサリンを白い目で見る護衛騎士との冒険者生活が今始まる。
冒険者がどんなものか全く知らない公爵令嬢とそれに仕方なしに付き合わされる最強戦士の恋愛物語になるはずです。ハッピーエンドはお約束。毎日更新目指して頑張ります。

私の

イチオシ

の小説はこちら

『好きになったイケメンは王子様でした~失恋から始まるシンデレラ物語・悪役令嬢もヒロインにも負けません』

https://ncode.syosetu.com/n2724hj/

平民で薬屋の娘リアは幼馴染のカートの勧めで特技を生かして王立学園に行くことに。でも、そこには王子様やお貴族様がいて、出来るだけ避けようとしたのに、何故か王子らと親しく?なってドンドン深みにハマっていきます。悪役令嬢や可愛らしい女の子が何を勘違いしたのかリアに絡んでくるけれど、リアが好きなのは王子ではなくカートなのに。でもそのカートの動きも怪しくて・・・・
カートの正体がわかった時、リアは・・・・。
王立学園で繰り広げられるドタバタ恋愛・シンデレラ物語。

ネット小説大賞運営チーム様から感想いただきました。
ハッピーエンド目指して書いていくので読んで頂けると幸いです。
― 新着の感想 ―
[一言] クリスはエドの婚約者として頑張る日々でオーウェンとの淡い初恋を忘れたという話があったと思いますが、今回の手紙の返事がなかったからこそ余計に忘れようとしてしまったと考えるとオーウェンへの憎しみ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ