大国皇太子はクリスにお酒を飲ませようとしましたが、山姥王妃に邪魔されました
クリスは夢を見ていた。
もっと子供の時の夢だ。
クリスは駆けていた。
「クリス、走るとコケるぞ」
オーウェンが後ろから注意する。
「大丈夫よ。オウ、早く」
クリスは振り返ってオーウェンを呼ぶ。
「危ないからクリス」
「大丈夫よ」
更に駆けようとしてクリスが脚を躓かせた。
その瞬間クリスは転けそうになるが、後ろから大きな手がクリスの腰を掴んでくれた。
クリスはオーウェンに庇われて草の絨毯の上に転がった。
オーウェンの上にクリスが乗っかっていた。
「ほら、だから走るとコケるって言っただろう」
オーウェンが自分の上のクリスに注意する。
「うーん、御免なさい」
赤くなってクリスが言った。
「でも、庇ってくれてありがとう」
クリスはそう言うとオーウェンをまじまじと見た。
「いつも助けてくれてありがとう」
そう言うとクリスの顔が近付く。
ちゅっ
とクリスは唇をオーウェンの唇に触れさせた。
「ありがとう。庇ってくれたお礼」
クリスがはにかみながら言った。
うそ、オウにキスしてしまった。
夢と現実が混乱して、クリスは真っ赤になって目が覚めた。
そして目の前には何故か大きくアップになったオウの顔がせまってきていて・・・・・
オウの唇がクリスの唇に触れた。
その瞬間にクリスは完全に目が覚めた。
目を見開く。
舌がじんじん熱い。何故か顔が真っ赤になる。
目の前にオーウェンがいるのが完全に判った。
「お、オウ」
クリスは真っ赤になった。
「お目覚めのキス」
照れて言うオーウェンに
「オーウェン、貴様、姉ちゃんに何するんだ」
後ろについてきていたジャックが思いっきりオーウェンを蹴り上げる。
「いたいっ」
慌ててオーウェンは飛上った。
そして、クリスは後ろに真っ赤になって見ていたメリーら侍女たちがいるのに気づく。
「えっ」
クリスは呆然とした。
「クリス様。急いでここから出られないと」
メリーが慌てて言う。
「ここは?」
「救出するのが遅くなってすいません。エドワード様に監禁されていたと思われます」
クリスは慌ててベッドから起き上がろうとした。
しかし、その時だ。
裏口の扉が開いて
「お待ちなさい」
声がかかった。
そちらを見るとそこには山姥のように髪を振り乱した王妃が立っていた。
「やばい。クリスこれを飲んで」
オーウェンは液体の入った瓶をクリスの口元に持ってくる。
「クリス様を見つけられたら即座にこの薬を飲ませて下さい。即座にシャラザールが来臨されるはずです」
オーウェンはジャルカの言葉を思い出していた。
シャラザールの来臨なんて絶対に嫌だったが、ここは背に腹は代えられない。
しかし、次の瞬間王妃の放った衝撃波で瓶は弾き飛んでいた。
オーウェン達の希望だった薬の液体が飛び散った・・・・・・
絶体絶命のピンチ








