大国皇太子とクリスの甘い夜???
軽い軽食を6人で食べた後、オーウェンはうまいこと言って何とかクリスを宮殿のテラスに誘い出すことに成功した。
宮殿は少し小高い丘にあったので、そのテラスからはドラフォードの王都イエーナ街並みの美しい夜景が見れた。
「きれい!」
クリスはこのような夜景は初めてだった。
「どう。これをあなたに見せたくて。マーマレードの王宮からの夜景もきれいだったけれど」
「いえ、イエーナには到底及びません。素晴らしいですね。」
振り返ったクリスの瞳があまりにもきれいで、思わず抱きしめたくなってオーウェンは必死に自制する。
馬車の中では散々話したので、オーウェンとしてはこの3か月間、いやいや、会えなかった8年間分話したような気になっていたが。
お互いの口調はやっと昔に戻りつつある。
クリス嬢って言えるようになったし、オーウェン様って呼んでくれるようになったし、とオーウェンは浮かれていた。
「まあ、マーマレードの王都に比べれば大きいだけかな」
「比べ物にならないかと。これだけの人々が生活しているんですね。」
「市井の人々の暮らしも興味がある?」
「はいっ。でも危険だからって実際には見た事無くって」
残念そうにクリスは言った。
「じゃあ明日でも行ってみる?」
「えっ本当ですか。」
喜んでクリスが言う。
「じゃあお忍びで行ってみよう」
冷静な声とは裏腹にオーウェンの心の中は星が飛び回っていた。
「うーん、でもお母様がなんていうか。」
「大丈夫。隠れて護衛は付けるから。問題ないよ」
その後ろの木陰でガーネットとウィルは隠れていた。
「なんでこんな陰でこそこそと」
ウィルがぶつぶつ言う。
「うるさいわね。今良いところなんだから」
目をキラキラさせてガーネットが言う。
そのウィルの電話が光る
「しいいい」
ガーネットの声にウィルは慌てる。
さっと出るとそこにはジャンヌがいた。
「ウィル元気」
「えっなんとか」
「あっジャンヌお姉さま」
その横で静かにしろと言っていたガーネットが画面に食らいつく。
「えっお前誰?」
「ガーです。」
「うそっ。がーってこんなにかわいい女の子になったんだ。」
昔からジャンヌについて回っていた子だった。
それがこんなにかわいい女の子になったなんて、ジャンヌにとっては驚きだった。
「お姉さまこそますますりりしくなられて」
憧れのジャンヌを目にしてガーネットは感動していた。
「ウィルは、ガーと一緒にいるってことはもう王宮に着いたんだ」
「はい、そうですよ」
小さな声で話す。
「静かにしているって事は話してはまずい?」
「静かに話すことは問題ないです。」
ガーネットが言う。
「クリスとオーウェンは」
「今、二人で夜景見ていますよ」
「えっそこまで仲良くなったのか」
横からアレクが出てくる。
「皇太子殿下そのモミジマークは?」
驚いてウィルが聞く。
「お前のところの王女にヤラれた」
「あんたが悪いんでしょ」
「えっ皇太子殿下ってひょっとしてノルディンの」
ガーネットが驚く。
「まあそう」
「すごいですお姉さま。大国の皇太子殿下のほっぺを張り倒すなんて」
ガーネットは感激しているが
「外交問題にならないと良いけど」
ウィルは憂鬱だ。
この二人本当に今後どうするんだろ。
素直に疑問にも思う。
エドが首になったから王女はマーマレードのおそらく皇太子。
絶対にやりたくないとは思うけど。
片一方はノルディンの皇太子。
敵国同士。
方や科学立国だけどトップは軍人
もう一方は軍事立国でトップも軍人
ノルディンは後継候補は掃いて捨てるほどいるけど、
マーマレードは今や2人だ。
アレクが入り婿????
それもあり得ないと思うが…
「で、二人は」
「何でも明日お忍びで二人で出るみたいですよ」
「何。そこまで親しくなったのか?」
悔しそうにアレクが言う。
「えっお姉さま。恋の下僕がクリス姉様狙っていますよ」
「誰が下僕だ」
「そうそう、こいつは関係ない」
二人して否定する。
「でも、市井に出るか」
「ここは黙っているわけには」
二人してぶつぶつ言つている。
「あっお兄様、手を重ねた」
キラキラしてガーネットが言う。
「何」
ウィルは慌ててそちらを見ようとして剣が立てかけてあった椅子を倒す。
ガッシャーン
大きな音がした。
オーウェンはイエーナの夜景を見ているクリスを暖かい眼差しで見ていた。
どれだけ、二人でこの夜景を見たいと思った事か。
でも、エドの婚約者になったので絶対に不可能だと思っていた。
その彼女が自分の側にいる。
それも自由な立場として。
やっと自分にも可能性が出てきた。
絶対にダメだと思ってもあきらめきれなかったクリスが自分の側に。
手すりに載せる白いほっそりとした手に見とれて思わず手を重ねてしまった。
ハッとししてクリスはオーウェンを見た。
その時にガッシャーン
と大きな音が。
「何してる!」
隠れていた二人を見て少し怖い顔でオーウェンがガーネットに言う。
「えええ?お二人が見えなくなったので、探しに来たんです」
ガーネットがしらを切る。
「まあ、ごめんなさい。二人で楽しそうに話しているから邪魔しちゃ悪いかなって」
クリスが言う。
「えっ」
「僕たちの事ですか。」
驚いて二人は聞く。
確かに昔の事は話していたが、絶対にオーウェンが二人きりになりたいからそういう言い訳したんだ。
二人は白い目でオーウェンを見る。
「お姉さま。
私はお二人の方が仲良くしていらっしゃるようにお見受けしましたけど」
ガーネットはオーウェンをちらりと見て言う。
「まあ、オーウェン様には色々助けて頂きましたから。」
クリスが笑って言う。
「私としてはお姉さまが本当のお姉さまになって頂けたらこんなにうれしい事無いんですけど」
ガーネットは爆弾発言をした。
思わず、オーウェンは咳込む。
「まあ、ガーネット様ったら。オーウェン様がお困りですよ。
そのような恐れ多いお話。」
クリスが流す。
「えええっ。でも今も後ろからお見かけしたらとてもいい雰囲気でしたけど。」
「それは、オーウェン様がお優しいからですわ。
婚約破棄の時も助けて頂きましたし」
うーん、オーウェンは絶対に自分から進んでやっていたよね。とウィルは思う。
「まあいいですわ。お姉さま。今日は一緒に寝ましょう。
いろいろお話したいこともありますし。」
「えっ。そのような恐れ多い。」
「もうお姉さま。昔のようにガーって呼んで。
シャーロット様には私がお願いしますから」
余計な事を話すなよ。とオーウェンはガーネットに釘を刺そうとしたが、ガーネットはにやりと笑ってクリスを連れて行った。








