暴風王女はボフミエの生き残り魔導師を退治しました
さて、戦いは最終局面に突入しました。
今日はあと2回投稿予定です。
ジャンヌは城門の前に転移してきた。
そして、即座に城門の中に入ろうとする。
「許可証の提示をお願いいたします」
見知らぬ兵士がやりで行く手を阻む。
「はっ?貴様、もぐりか」
ジャンヌはそのまま強引に通ろうとした。
「駄目です。許可証のないものは何人たりとも入れるなと皇太子殿下からの命令が出ています」
門番は必死だった。
「おい、門番。貴様、その皇太子に向かって何を言ってる」
切れてジャンヌは門番の胸倉を掴んだ。
「前皇太子は放蕩がたたって皇太子を廃嫡。エドワード様が皇太子に・・・・・・」
その瞬間、ジャンヌの衝撃波が門番を襲った。
門もろとも門番が弾き飛ばされる。
「勝手に廃嫡するな! 私は皇太子をやりたくてやっているわけではないぞ」
ジャンヌは切れていた。
爆発音を聞いて慌てて城内から兵士たちが飛び出してくる。
「で、殿下」
ジャンヌを知っている者達は怒り狂ったジャンヌを見て驚いた。
なにせ相手は暴風王女だ。それも何故か後ろに赤い死神を従えて立っている。
この二人にかなう者はそう簡単にいるわけはなかった。
「そこのおまえ、直ちにエドの前に案内せよ。あいつをたたっ斬ってやる」
ジャンヌは完全に切れていた。
「で、殿下、私も皇太子殿下の居場所は」
「良いからチャッチャッと案内しな」
今にも魔力を暴発しそうになりながら、ジャンヌが叫んでいた。
後ろではアレクが黒い笑みをしていた。
な、何ていう最悪のシチュエーション。
怒り狂った暴風王女が、お供に薄気味悪い笑みをした赤い死神を連れて攻め込んで来た・・・・・・
マーマレード王国もこれで終わりだ…………
何人かの兵士たちは確実にそう思った。
「ヒィィィぃ」
兵士は引きずられるように王宮の中に連れ込まれた。
エドの部屋を知っているジャンヌはどんどん歩いていく。
「これはこれはどこのネズミが入ったのですかな」
そのジャンヌらの前に、サロモン・フィッシャーが現れた。
「そう言うきさまこそ、どこのネズミだ。直ちにひっとらえろ」
ジャンヌが周りでオタオタして付いてくる兵士たちに指示を送る。
兵士たちは王子付きのサロモンと王女との板挟みになって慌てた。
「何をおっしゃっているのです。私は皇太子殿下付きの筆頭魔導師ですぞ」
「はんっ、そこのボケナス。やりたくはないがな、今のマーマレードの皇太子はこの私だ。
文句はやりたくないという私を10人がかりで説得した奴らに言え」
未だに皇太子をやらされていることに納得いかないジャンヌだった。
しかし、ボフミエにいると色んな国の皇太子がいる。オーウェンの内務に対する仕事ぶりや、財務卿のコレキヨを見ていては、到底皇太子なんて出来るわけはないと思ってしまうが、遊んでいる(ジャンヌにはそうとしか見えない)アレクや、トリポリの皇太子なんか見ていると自分にも出来ると思えてしまったジャンヌだった。最近は優秀な補佐がつけばアメリアくらいは出来るのではないかと、アメリア本人が聞けば確実に切れそうな不遜なことまで考えているジャンヌだった。
あのボケナスの弟よりはましだと思っていた。
「はんっ、さすが礼儀のなっていないと名高いがさつ王女なだけはありますな」
にやりとサロモンが笑った。
「何を申すやら。国に仇なす魔導師とは貴様のことか」
「何をおっしゃいます。私は王妃様から直々に無断侵入した曲げ者をひっとらえろと言われているのです」
サロモンは切り札と思しき王妃の名前を出す。
「ほう、母上が反逆されたと」
しかし、さすがというかジャンヌはびくともしなかった。
「何をおっしゃっていらっしゃるのです。廃嫡されたあなたより王妃様のほうが位は上です」
サロモンはなおも余裕だった。
「ふんっ、何をとち狂ったことを申しておる。私はクリスに憑依された戦神シャラザールより命を受けて参った。逆らうものは反逆罪として処断せよとな」
勝手に理由づけしてジャンヌは言った。というかこれくらいはシャラザールは許してくれるだろうと、もはや、ジャンヌの頭の中では戦神は戦仲間のレベルまで落ちているのだったのだが。
「せ、戦神シャラザールなどと伝説の戦神を出されても」
サロモンは笑おうとしたが失敗した。サロモン自体も戦神には一度叩き潰されている。
しかし、あの化け物は今は地獄だ。戻っては来れないはずだ。
「ふんっ、ノルディン戦を生き残ったものは皆知っておるわ。正義は我にあり。反逆者に与するものは今より成敗してくれよう」
ジャンヌは剣を抜いた。
「き、貴様、王妃様に逆らうのか」
サロモンは少し慌てた。
「ふんっ、悪いな。昔から母上には逆らったことしか無い」
ジャンヌはそう言うと衝撃波をサロモン目指して放った。
サロモンは障壁で防ぐ。
「ふんっ、少しはやるではないか。3流魔導師よ」
「な、何を。魔導師の世界で私の名前を知らないやつなど所詮3流」
「ふんっ、貴様の名前を知っている方が3流なのだ」
ジャンヌは剣を構えると
「行くぞ」
叫ぶや駆け出した。
サロモンは衝撃波を放つ。
それをジャンヌは剣で弾く。
その度に王宮の壁や屋根が破壊される。後でまた母からは散々な小言を食らうかもしれないと、こんな状況でも余計なことを考えてしまったジャンヌだったが……
「喰らえ!」
ジャンヌは爆裂魔術をサロモンに叩きつけた。
「おのれ」
サロモンは必死に衝撃波で防ぐ。
しかし、そこにジャンヌが剣を構えて飛び込んできた。
そして次の瞬間には張った障壁諸共ジャンヌの1刀のもとに、切られていた。








