ジャルカは暴風王女と赤い死神と大国皇太子をマーマレードに送り込みました
一方のジャンヌらはザール教国でテロ戦に手を焼いていた。
こちらで爆発があって対処しているうちに今度はあちらで爆発がと翻弄されていた。
「何だと、次は大聖堂跡地で爆発があっただと」
ジャンヌが叫んでいる時に魔導電話がなる。
「何だ。この忙しい時に」
叫んだジャンヌの前にのんびりしたジャルカが出てきた。
「これはこれは姫様。まだ、ザールの暇人共と遊んでいらっしゃるのですか」
ジャルカは嫌味を言う。
「暇そうだなジャルカ」
「姫様ほどでも」
「これのどこが暇そうに見える」
爆発の跡地を見せながらジャンヌが言う。
「姫様それどころではございませんぞ」
「これ以上の大変な事があるか」
「まあそうですな。これは姫様の将来のことですから。まあ、大したことではございますまい」
意味ありげにジャルカが言う。
「えっ何だそれは」
ジャンヌは少し気になった。
「実はエド様が帰っていらっしゃっていて」
「なに、あのボケナスの弟が」
むっとした顔でジャンヌが言った。
「何でも皇太子に復活しようと目論んでいるとか」
「そんなの別に良いぞ。私も皇太子なんかさっさと止めたいし」
あっさりとジャンヌが言った。
「そうでしょうな。姫様ならそう言われると思いました」
ジャルカがニヤリとした。
「ブリエント卿がそれに反対しておりましてな、何でもその許可を取るためにブリエント卿の息子に姫様を嫁がせようと目論んでおるようですぞ」
「何だと、あの規則の塊、ムッツリスケベのマークにか」
ジャンヌは青くなった。
あいつは規則規則規則で規律の塊で、ジャンヌの苦手なタイプだった。
一度切れたジャンヌがマークを張っ倒したことがあったのだが、それ以来何故か別の面で開花したみたいで、それ以来ジャンヌに首ったけになっていると噂だった。
ジャンヌは出来る限り近寄らないようにしていたのだが、それをこじらせているとなると……。
ジャンヌは嫌そうな顔をする。
「ジャルカ爺。それはどういう事だ」
どこからか聞きつけたアレクがいきなり現れた。
「これは皇太子殿下。お話したとおりで、エドが今王妃様にジャンヌ王女の婚姻相手を掛け合っているとか」
「な、なにを言う。私という婚約者がありながらそれを無視するとは」
「誰が婚約者だ」
ジャンヌはアレクの頭をしばいていた。
「それとエドワード様は今必死にクリス様との既成事実を作ろうとしているとか」
オーウェンが聞けば切れそうなことを平気で言う。
「何だと、母上はどうしているのだ」
「王妃様は息子可愛さにあっさりと陥落したとか」
「あの母もどうしようもないな」
ジャンヌは呆れた。規律の塊の母も所詮息子想いの母親なのか。
「ここはやはり姫様に一発決めてもらわないといけないとルーファスと話したところなのです」
「判った。ここはジャスティンに任せて、ずくに国に帰る」
「そうですな。ぜひともお願いできますかな。でないと姫様の夢のような結婚生活が待っておりますぞ」
「ふんっ、そのような愚かな考えも一掃してやるわ。おのれエドめ。覚えておけよ。目にもの見せてくれるわ」
ジャンヌは直ちに帰る算段に入った。
一方、ザールの内務省では
「どうした。何でつながらない」
オーウェンは焦っていた。
昼前から必死にイザベラに電話しているのだが一切の応答がないのだ。
アルバートやナタリーからもない。
オーウェンは焦りに焦っていた。
そこに電話が鳴った。
「イザベラ遅いぞ」
電話を取って叫ぶと、オーウェンの目の前にジャルカが映っていた。
「これはこれはオーウェン様。いくらクリス様がつれないからと言って、イザベラ嬢に乗り換えられるなど、男の風下にも置けませぬな」
「何を言っていらっしゃる。クリスの所に行きたいのに、あなた達が邪魔して行けないから仕方なしにイザベラ嬢に様子を見に行ってもらったんでしょうが」
怒ってオーウェンが言った。
「そのような言い訳ばかり。本当にクリス様が好きならば、儂ならばすべての仕事をほっぽりだして今頃クリス様のところに行っておりますぞ」
ジャルカが本気で言う。
「ジャルカ様。止めて下さい。そんなこと言ったら本当に行ってしまいますから」
横から必死にスティーブが言う。
「スティーブ、お主、何ヶ月オーウェン様の下にいる」
そのスティーブをジャルカが問う。
「えっ1年弱ですけど」
「それだけいればもう十分だろう。内務卿の役割を果たせても良いであろうが」
「そんな滅相もない」
「それが出来ないということはオーウェン様も下を育てていないことになりますぞ」
ジャルカが注意する。
「ジャルカ爺。能書きは良い。クリスの所に行ったアルバートらと連絡が取りない。そちらで何か掴んでおられよう」
「えっ、お教えするのですか」
途端に嫌そうにジャルカが言う。
「掴んでいるのなら、教えて欲しい。どうなっている」
「だから今言いましたでしょう。儂ならすぐにクリス様の所に向かうと」
「だからその理由は」
「エドが帰って来ております」
ジャルカは爆弾発言をした。
「何だと! クリスの元婚約者が王宮に帰ってきているというのか」
オーウェンは立上った。
「何でもクリス様との間に既成事実を作ろうと必死になつておるとか」
「な、何だと。おのれあのボケナス王子め」
オーウェンはプッツン切れた。
「それと何やら不遜な輩をたくさん連れておりますぞ」
「何だと。で、アルバートらは」
「さあ、わかりませんが、シャーロット夫人も拘束されたとか」
「それは本当か」
「詳しくは今調べさせておりますが、取り敢えず、30分後に姫様とアレク様が空港からスカイバードで飛び立たれます。急がれたほうが」
「何! 空港まで30分くらいかかるではないか。そう言う事は早く言え」
慌ててオーウェンは部屋を飛び出そうとした。
「内務卿!」
「後はスティーブとロルフに任せる。ヘルマンらとも相談してうまくやってくれ」
「えっ」
「オーウェン様」
ロルフとスティーブが反論しようとした時にはオーウェンはもう部屋を飛び出した後だった。
赤い死神と暴風王女の投入です。
行く手には魔王が手ぐすね引いて待っています。
次は明日の朝更新予定です。








