赤い死神 暴風王女に張り倒される
ドラフォードの王宮に着いたのは夜だった。
王宮の正面に馬車が止まる。
そこには王妃のキャロライン自ら出迎えていた。
「キャロライン様。わざわざお出迎え頂かなくても。」
「シャーロットお久しぶりね。
ごめんなさいね。オーウェンがお邪魔したみたいで、失礼は無かった?」
皇太子を睨みつつキャロラインが言う。
「いやもう立派になられて、びっくり致しました。」
「クリス嬢。本当にきれいになったわね」
降りてきたクリスに声をかける。
「王妃様。この度は私までお招きいただき本当にありがとうございます。」
淑女の礼をする。
「オーウェンに変なこと言われなかった?」
「母上」
オーウェンは思わず声をあげる。
「皇太子殿下には道中いろいろお教えいただいて、本当に感謝いたしております。」
「ウィルも本当に立派になったわね。」
そのあとで礼をするウイルに歩み寄る。
「ガーネットが会いたがっていたわ」
「?」
ウィルはそれが誰だったかよく覚えていなかったが。適当に頷く。
とりあえず応接室に案内された。
その途中で活発そうな少女が扉を開けてウィルに手を挙げた。
「よっ」
ウィルに声をかける。
「?」
ウィルは誰こいつって言う感じで無視する。
その頭にペンを投げる。
「何すんだよ」
慌てて避けてウィルは受け取る。
「はんっ無視すっからでしょ」
「あなたはガーネット殿下ですね。」
シャーロットが言う。
「シャーロットおばさま。お久しぶりです。」
ガーネットが礼をする。
「ガーネット王女殿下。お久しぶりです。」
クリスも礼をする。
「えっやめてくださいよ。クリス姉様。
昔通りガーで」
「えっお前ガーなの?」
素っ頓狂な声をウィルが上げる。
「ウィルなんていう口を」
シャーロットが注意する。
おかっぱ頭で小さい頃いろいろ遊んだガーだった。
ウィルの頭ではガーが女だとは理解していなかった。
「これはこれはガーネット王女様。お久しぶりです。
突然のことに失礼いたしました」
ウイルが紳士の礼をする。
「ふんっあなた私を忘れていたでしょ」
「ごめん、ガーって男の子だと思っていたから」
「ふんっ」
ガーネットはプイっとあちらを見る。
「ははは、ガーネットもウィル君に会うの楽しみにしてたものな」
「お兄様のクリス姉様に対する態度よりはましですけど」
むっとしてガーネットは応える。
「皇太子殿下の私に対する態度って何ですか」
クリスがガーネットに聞く。
「いや、クリス嬢。とてもお会いしたかったというだけですよ」
オーウェンは誤魔化す。
「クリスお姉さま。今日はいろいろ話しましょう」
悪戯っぽくガーネットは言う。
「ちょっと待てガーネット、余計な事を言うとウィル君にばらすぞ」
「へえええ、私はまた一緒に遊びたいだけで、お兄様の方がまずいんじゃないですか」
ガーネットがからかう。
気まずそうな顔をするオーウェンを不思議そうにクリスは見ていた。
「おい、全然来ないじゃないか。」
急遽呼び戻されたアレクは不機嫌そうに大使に言った。
もっともジャンヌのところでしばらく遊ぼうと訪問したらいなかったので、暇を持て余して帰ってきたのが真相なのだがそれは黙っている。
「おかしいですね。向こうの外務官からは本日中には必ず訪問するという事だったのですが」
「あのバカの事だから、どこかでこけたとか、女にうつつを抜かしているとかそういう事か」
「さあ、それは、皇太子殿下の身持ちは固いという事ですよ。
いつも女は寄せ付けないとか。」
殿下とは違ってとまでは言えなかったが。
「ふんっ。あいつはクリス嬢に首ったけなのさ」
馬鹿にしたように言ったアレクの前の空間がいきなり裂けた。
剣を抜こうとしたアレクの前にジャンヌが飛び出してきた。
そしてそのままアレクの胸の中に飛び込む。
そのままアレクは抱きしめていた。
「何すんのよ」
次の瞬間アレクはジャンヌに頬を張り倒されていた・・・・








