クリスの親衛隊たちは全員元婚約者の手に落ちてしまいました
翌朝、日の出前から起き出したウィルは皆を叩き起こそうとして、母に見つかり早速注意を受けていた。
どれだけ姉に会いたいんだとアルバートらは思ったが、仕方がないので騎士連中は起き出してウィルに付き合って朝の鍛錬を行った。
軽くシャワーを浴びて朝食を取り、ミハイル侯爵も含めて９名は王宮へ向かった。
王宮の城門で侯爵とは別れて場内に入る。
侯爵夫人は王妃に呼ばれていて取り敢えず、７人で客間に案内されて、侍女のミアと文官のイザベラがクリスの部屋にアガサに連れられて案内される。
残りの５人はクリスが準備できるまで待ってほしいと客間に取り残された。
ミアとイザベラはアガサに案内されてクリスの部屋に連れて行かれた。
部屋の前には二人の騎士が立っていて、重々しい雰囲気を醸し出していた。
二人は多少緊張した。イザベラは言っても大国ドラフォードの侯爵家の娘でドラフォードの王宮にも言ったことはあり、それほどでもないが、ミアはそんな経験があまりなく、固まってしまった。
「ミア」
固まった様子のミアをイザベラがつつく。
「すいません。イザベラ様。少し緊張してしまって」
はっきり言ってボフミエの王宮は簡易な作りであり、クリスを始めジャンヌやアレク、オーウェンにしてもアットフォーム。はっきり言って緊張することなんて無かった。
アレクの軽い態度とアレクに対する皆の親しみについてノルディンから来た者たちはノルディンにいる時の不遜な態度とは180度違っていて、皆一様にお驚いていたが。
アレクもいつ何時戦神シャラザールが来臨するかわからないところで鷹揚にするわけにも行かなかっただけなのだが………
でもここの王宮の雰囲気は普通の王宮と同じ、いやそれ以上に何か変だとイザベラは感じた。
ノックをアガサがして、扉を開けて中に入る。
ミアが見るとクリスはまだベッドで寝ているようだった。
「クリス様」
ミアがゆっくりと近づく。
その口元を後ろからアガサが液体を染み込ませた布で覆った。
「な、」
何をするのと後ろから注意をしようとしたイザベラも静かに入ってきた兵士によって同じように口元をハンカチで覆われる。
二人は一瞬で気絶していた。
一方部屋でくつろいでいたウィルたちだが、最初にフェビアンが居眠りを始めた。
「おいっ、フェビアン」
慌ててアルバートがフェビアンを起こそうと手を伸ばしてそのまま倒れる。
何か変だ。
ウィルは慌てて転移しようとするが、部屋の中に張り巡らされた障壁を超えられずに、地面に叩きつけられた。いつの間にか全員寝込んていた。
「ふんっ。他愛もない」
５分後に部屋に入ってきたサロモンが吐き捨てるように言った。
「魔人と対等に戦ったと言うからどれだけ魔力が強いかと思いきや、こんな簡単な魔術に引っかかるとはな」
サロモンはニヤリと笑った。
ボフミエ帝国に逆らった者達を手中に収めたのだ。
「全員拘束して一室に部屋に閉じ込めておけ」
後ろから入ってきた魔導師たちにサロモンは指示した。
皆さん、ここまで読んで頂いてありがとうございます。
明日の朝は魔王王妃対あばずれシャーロットです。
シャーロットはクリスの母、今まで殆ど出てきませんでしたが、あの人間最高の魔力量を誇るクリスの母です。出身はシャラザール3国の1つテレーゼ王国の筆頭魔導師ヨークシャー家の長女。
一矢報いられるか
