表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
皇太子に婚約破棄されましたーでもただでは済ませません!  作者: 古里@3巻電子書籍化『王子に婚約破棄されたので義理の兄が激怒して
第九章 ザール教騒乱

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

300/480

300話記念閑話 クリスのファーストキス

皆様、300話到達です。ここまで読んで頂いてありがとうございました。ここまで続けられたのは皆様のおかげです。

今後も頑張って続けていけたらと思います。

今後ともよろしくお願い致します



ザール教国の陽射は強烈だった。ボフミエも暑かったが、まだ、亜熱帯と言うか温帯に属しており、ましだった。ザール教国は熱帯地方にあり、暑さも格別だった。


その暑さの中オーウェンは仕事に忙殺されていた。ザール教国をクロチア、モルロイに続く第3の飛び地にすることが決定されたのだ。ザール教は廃教が決定し、何故かシャラザール教に変わることになった。全教会には悪徳非道の教皇アードルフを足蹴にして退治するシャラザールの肖像画が急遽作られて配布されることに。

初代教皇にはシャラザールの一言でクリスがなることが決まっていた。


シャラザールの憑依が切れて気がついたクリスが嫌がったが、シャラザールの決定に異を唱えられるものなどクリス以外にはおらず、必然的に決定していた。


それやこれやの雑務は全て内務に丸投げされてオーウェンは忙殺されていた。

建物は殆どシャラザールにて破壊されていたので、臨時テントを張って対応していた。


「スミス、ザールの再建案、どうなっている」

「これが大まかな案です」

スミスが図案を見せる。


直ちに手配したスカイバードでボフミエ本国から20名を呼び寄せて作業に当たらせたのだ。

ザール教の文官共も直ちに罪人を除き招集していたが、人材は足りていなかった。

それにこの暑さだ。

オーウェンは頭がくらくらしていた。


「とりあえず、スカイバードの発着施設を早急に作る必要があるよな。ジャンヌとアレクにも協力を要請して2,3日のうちに作り上げないと」


「そうですね。本国とすぐに行き来ができると楽になりますから」

「そうだ。本国も人が足りないとは思うが、学院の優秀な若者を半年先倒して卒業させて組み入れよう」

「アメリアに言ってこの地にも学院の建設を・・・・」

オーウェンは立ち上がろうとしてめまいがした。

「内務卿!」

慌ててスミスらが駆け寄るが、その前にオーウェンは倒れた。



「オウ!」

倒れたのを聞きつけたクリスが飛んできた。


急遽仮設された病棟にオーウェンが運び込まれていた。オーウェンはベットに寝かされていた。


慌ててクリスが駆け寄る。オーウェンの顔色は悪くは目をつむっていた。


「クリス様。大丈夫です。過労と暑さで軽い熱中症になられただけですから」

臨時の看護婦をさせられていたミアが立ち上がる。


「そう、良かった」

クリスはほっとする。


「ではクリス様。オーウェン様をよろしくお願いしますね」

そう言うとミアは病室を出て行った。


「えっ、ミア」

クリスは呼び止めようとした時はミアはもう出て行った後だった。


クリスは久しぶりにオーウェンの顔をまじまじと見た。ザール教国に来て1週間。お互いに忙しくてゆっくりとお互いの顔を見る暇もなかった。


オーウェンの端正な顔は疲労で心持ち青ざめているようだった。額の濡れタオルを取ってオーウェンの体温を手で測る。


「熱はないみたいね」

クリスは微笑んだ。


タオルを傍の水の入った洗面器で濡らして絞るとオーウェンの額の上に乗せる。


「オウ、少し無理し過ぎよ」

そう呟くとクリスはオーウェンの両頬に軽くそっと触れた。




オーウェンは夢を見ていた。

子供の時の夢だ。


クリスが先を駆けていた。

「クリス、走るとコケるぞ」

オーウェンが注意する。


「大丈夫よ。オウ、早く」

クリスが振り返ってオーウェンを呼ぶ。


「危ないからクリス」

「大丈夫よ」

更に駆けようとしてクリスが脚を躓かせた。

その瞬間オーウェンは後ろから手を伸ばしてクリスの腰を掴む。


二人は絡まりあって草の絨毯の上にもつれ合って転がった。

オーウェンの上にクリスが乗っかっていた。


「ほら、だから走るとコケるって言っただろう」

オーウェンが上のクリスに注意する。


「うーん、御免なさい」

赤くなってクリスが言った。


「でも、庇ってくれてありがとう」

クリスはそう言うとオーウェンをまじまじと見た。


そしてクリスの顔が近付く。


ちゅっ


とクリスの唇がオーウェンの唇に触れた。


「ありがとう。庇ってくれたお礼」

クリスがはにかみながら言った。


「クリス」

オーウェンは目を見開いた。




はっとオーウェンが気づくとクリスの顔が目の前にあった。


「クリス」

「あっ、オウ、気がつい・・・・」

その瞬間、夢の中のお返しとばかりにオーウェンがクリスの唇にキスをした。


クリスは真っ赤になって固まった。


「オウ!な、何するのよ」

そう言うとクリスは思いっきりオーウェンの頬を張っていた。


「く、クリス」

オーウェンは声を上げるが、クリスは慌てて部屋を飛び出していった。


「オーウェン様。一体クリス様に何したんですか」

飛び出していくクリスを見たミアらが慌てて怒って部屋に入ってきた。


「いや、つい目の前にクリスの顔があったからお返しにクリスにキスしちゃった」

「な、なんですって」

「オーウェン、貴様なんてことを。ええい、そこになおれ、成敗してくれる」

剣を抜いて暴れだすウィルを止めるのもまた大変だった。


そこにはクリスに張られたことで夢の続きを思い出して呆然としているオーウェンがいた。




クリスは闇雲に廊下を駆けると外に飛び出して木の陰に隠れた。


「はっ、はっ、はっ」

息が荒い。


顔は真っ赤だった。


クリスは思い出していた。


昔、子供の頃、なにかの拍子にオーウエンにキスしたことを。

そして、その後に言った言葉を。


「オウ、オウの事好き。将来オウのお嫁さんになってあげる」


そんな事言った事すら忘れていた。

そして、その後の言葉も思い出していた。


「オウが大人になった時に、それでいいと思ったら今度はオウからクリスにキスして」


クリスは手で顔を覆っていた。子供の時にオウになんて事言ったんだろう。クリスは思い出すに赤面した。それも今まで忘れていた。


確か10歳の時にエドとの婚約が決まった時に記憶の封印をしたんだった。婚約の相手は自国の皇太子、クリスの好き嫌いの我儘が通用する訳もなかった。エドは昔から知っていたし、婚約の時にエドが


「今まで意地悪してごめん。これからは大切にするから」

とはにかみながら言ってくれたんだった。それを信用して、オウとの事は忘れることにしたんだった。その忘れていた想い出がオーウェンからキスされたショックで蘇ったのだった。



「ど、どうしよう。オウからキスされちゃった」

クリスは恥ずかしさの余り悶絶していた。子供の時にクリスからオーウェンにキスしたのがクリスのファーストキスだった。女の子からするなんてなんてはしたない事をしてしまったんだろう。そして、今、大人になったオウからキスをされた。そして、オウとの約束も思い出していた。


「これって、キスを返されたことになるんじゃ・・・・」

クリスは固まった。オーウェンからは散々婚姻の申込みをされていた。でも、昔のことを思い出すと、元々結婚の申込みをしていたのはクリスだった。子供の戯言かも知れないが、そのお願い通りにオーウェンがキスを返してくれたことになるはずで・・・・


「結婚の申し出を受けられちゃった・・・・」



ミアらが悶々としているクリスを発見したのはそれから1時間後だった。

太陽は既に傾きかけており、陽の光もクリスの頬と同じで赤く染まっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
この話の

シリーズ一覧

はこちら

『シャラザール帝国』

https://ncode.syosetu.com/s1987g/
クリスとシャラザールのお話です。

この話が電子書籍化されました

3巻が『王子に婚約破棄されたので、義理の兄が激怒してこの国を滅ぼすと叫び出したんだけど…… そのお義兄様から「エリーゼ、どうか結婚してください」と求婚されました。』

3巻表紙画像

表紙絵はおだやか先生がエリーゼをお義兄様が抱きあげる美しいシーンを描いて頂きました。
こちらの新規書き下ろしは学園に出る幽霊竜退治です。学園時代のお義兄様の幽霊騒動にエリーゼが一緒に冒険します
とても面白いのでぜひとも手にとって頂けたら嬉しいです。

■【10/25シーモア先行配信はこちら、3千字のSS連れ子様の護衛騎士・シーモア特典付き】
https://www.cmoa.jp/title/1101429725/vol/3/


■【11/19発売アマゾンはこちら】
https://www.amazon.co.jp/-ebook/dp/B0DK55BWGS/


■【11/19発売楽天はこちら】https://books.rakuten.co.jp/rk/e9901759f61337b88109b29ff7a5ffb0/

第2巻『王子に婚約破棄されたので、義理の兄が激怒してこの国を滅ぼすと叫び出したんだけど…… 帝国に帰還しての宮廷夜会、お義兄様にキスされてしまいました』

表紙画像

表紙絵はおだやか先生が美しい、お義兄様とエリーゼのキスシーンを描いて頂きました。
こちらの新規書き下ろしはセッシーとの出会いです。皇帝一家でセシール湖にお出かけしたエリーゼはお義兄様たちと湖の地下宮殿に冒険に出かけます。
反逆の陰謀と共にそこにいたのは巨大な水竜で…… とても面白いのでぜひとも手にとって頂けたら嬉しいです。

■第2巻【9/25シーモア先行配信はこちら、3千字のSSドレス工房の主の独り言シーモア特典付き】
https://www.cmoa.jp/title/1101429725/vol/2/


■第2巻【10/19発売アマゾンはこちら】
https://www.amazon.co.jp/dp/B0DGQ7J6VH/


■第2巻【10/19発売楽天はこちら】https://books.rakuten.co.jp/rk/178537d615973d18a4cb8adc53c66c16/


第1巻が『王子に婚約破棄されたので、義理の兄が激怒してこの国を滅ぼすと叫び出したんだけど 卒業パーティーは恐竜皇子と恐れられるお義兄様と一緒に』

表紙画像
上の表紙絵はおだやか先生が可愛いエリーゼを守る格好良いお義兄様を描いて頂きました。
このなろうで書いたのに【お義兄様との洞窟探検】2万字の描き下ろしが追加されています。
小さいヒロインのエリーゼはダンジョンに潜りたいとお義兄様に無理やり連れて行ってもらって、巻き起こす大騒動。
後で知ったお義父様(皇帝)が怒るもエリーゼの前に撃沈、更に行ったダンジョンにはなんとあの…………、とても面白いお話になっています。

■第1巻【8/26シーモア先行配信していたものは、3千字のSS商人の娘の独り言シーモア特典付き】
https://www.cmoa.jp/title/1101429725/


■第1巻【9/20発売アマゾンはこちら】
https://www.amazon.co.jp/dp/B0DD3SHSJV/


■第1巻【9/20発売楽天はこちら】https://books.rakuten.co.jp/rk/86f757d2dd7d3674900eac6783288ad5/

ぜひとも手にとって見ていただければ嬉しいです。

私のお話

【書籍化】

しました!
アルファポリスのレジーナブックスにて

『悪役令嬢に転生したけど、婚約破棄には興味ありません! ~学園生活を満喫するのに忙しいです~』https://ncode.syosetu.com/n3651hp/

6月28日全国1200以上の書店にて発売しました。表紙画像は11ちゃんさんです。
表紙画像
表紙絵をクリックしたらレジーナブックスの説明ページに飛びます。


■アマゾンへのリンク


■楽天ブックスへのリンク


■hontoへのリンク


手に取って読んで頂けたら嬉しいです。

私の

新作小説

はこちら!

『ヒロインに躱されて落ちていく途中で悪役令嬢に転生したのを思い出しました。時遅く断罪・追放されて、冒険者になろうとしたら護衛騎士に馬鹿にされました。護衛騎士と悪役令嬢の恋愛物語』

https://ncode.syosetu.com/n0185hu/

公爵令嬢キャサリンは憎き聖女を王宮の大階段から突き落とそうとして、躱されて、死のダイブをしてしまった。そして、その瞬間前世の記憶を取り戻するのだ。そして、黒服の神様にこの異世界小説の世界の中に悪役令嬢として転移させられたことを思い出したのだ。でも、こんな時に思いしてもどうするのよ! しかし、キャサリンは何とか、チートスキルを見つけ出して命だけはなんとか助かるのだ。しかし、それから断罪が始まってはかない抵抗をするも隣国に追放させられてしまう。
「でも、良いわ。私はこのチートスキルで隣国で冒険者として生きて行くのよ」そのキャサリンを白い目で見る護衛騎士との冒険者生活が今始まる。
冒険者がどんなものか全く知らない公爵令嬢とそれに仕方なしに付き合わされる最強戦士の恋愛物語になるはずです。ハッピーエンドはお約束。毎日更新目指して頑張ります。

私の

イチオシ

の小説はこちら

『好きになったイケメンは王子様でした~失恋から始まるシンデレラ物語・悪役令嬢もヒロインにも負けません』

https://ncode.syosetu.com/n2724hj/

平民で薬屋の娘リアは幼馴染のカートの勧めで特技を生かして王立学園に行くことに。でも、そこには王子様やお貴族様がいて、出来るだけ避けようとしたのに、何故か王子らと親しく?なってドンドン深みにハマっていきます。悪役令嬢や可愛らしい女の子が何を勘違いしたのかリアに絡んでくるけれど、リアが好きなのは王子ではなくカートなのに。でもそのカートの動きも怪しくて・・・・
カートの正体がわかった時、リアは・・・・。
王立学園で繰り広げられるドタバタ恋愛・シンデレラ物語。

ネット小説大賞運営チーム様から感想いただきました。
ハッピーエンド目指して書いていくので読んで頂けると幸いです。
― 新着の感想 ―
[一言] 記念閑話となっていますが、本編でもよかったのでは? クリスがオーウェンとの関係を深めるきっかけになっている上、時系列的にも本編の続きみたいなので。 タイトル見たときは何故閑話でと思いました…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ