戦神はザール教本国への親征を決断しました
そこにはクリスではなくてシャラザールがいた。
「えっ」
皆固まった。
アレクはその気配を感じた一瞬で部屋の外に思わず飛び出していた。
どういう事?
本来クリスがアルコールを摂取するとシャラザールになるはずが、クリスが恥ずかしがりすぎてもシャラザールになるのか?
オーウェンの悩みはもっと深刻だった。
こんな事でクリスがシャラザールになるならば、キスしてもシャラザールになるのか・・・・・
「者共、何を戸惑っておる!」
シャラザールが声を出した。
「これは戦神シャラザール。いや、いつもはクリスがアルコールを飲んで来臨されるのに、此度はどうされたのかと」
ジャンヌが代表して聞く。
「ふんっ。そこの小僧が、クリスを慰めておるので、出るのを待っておったのだ」
シャラザールはオーウェンを顎で指して言う。
オーウェンは更に固まった。クリスにはシャラザールが憑依しているのだ。いつもクリスにすることが見られているのだ。オーウェンは改めて思い知った。
「何を恐れておる。その方がクリスにしていることなど、ここ3年間ずうーっと知っておるぞ」
シャラザールはさも当然のように言う。
「余も大人だ。その方が何をしようとも、クリスが拒絶せん限り余が干渉することなど無いぞ」
シャラザールは笑って言った。
そうか、ならば何しても良いのか。一瞬オーウェンは喜んだ。
「ふんっ。しかし、余はまだ、貴様がクリスの婿になるのは許せんがな。まだまだ、力が足りんわ」
シャラザールが平然と駄目出しする。
オーウェンはがっかりした顔をする。
「何だ。もう諦めるのか」
「いえ、ますます精進して努力致して参ります」
「そうだな。もっと努力いたせ」
それを部屋の外で聞きながらアレクは絶対に自分は無理だと思った。シャラザールの憑依した相手など、恋心を抱くのは絶対に無理だと。
「アレク!」
「はいっ」
シャラザールの言葉にアレクは慌てて返事すると部屋の中に馳せ参じた。
「貴様ももっと努力せんとジャンヌにはふさわしいとは思わんぞ」
「はっ努力致します」
「シャ、シャラザール、何を仰るのですか」
シャラザールの言葉にアレクは跪き、ジャンヌは文句を言った。
「まあ、良い」
シャラザールは笑った。
「クリスの小娘はまだまだ甘い。ザール教があのようなことで壊滅などするものか。あのブタ教皇は地下室でほくそ笑んでおるぞ」
憤ってシャラザールが言うと画像を映し出した。
そこには女奴隷たちに姦淫している教皇の姿が映し出された。
「ははは、ボフミエの小娘よ。貴様も信者共に殺されて終わりだ。余に逆らう奴らはこのように殺されるか奴隷に叩き落としてやるわ」
教皇は高笑いをした。
皆唖然とした。
「な、あのボケナス教皇、なんてことを」
ジャンヌがプッツン切れて言った。
「あのやろう。今すぐ叩っ切ってやる」
ウィルが目を怒らせ剣に手をかけて言う。今すぐ転移して切りかかりそうになっていた。
皆いきり立っていた。
このような宗教が許されるわけ無かった。
「ジャンヌ。直ちに集められるだけの戦力を集めよ。ザール本国に出撃する」
シャラザールは宣言した。
「はっ、しかしどのようにして」
「そこのジャルカに送らせる」
困惑したジャンヌにシャラザールがサラッと答えた。
「えっシャラザール様。そんな殺生な」
端で目立たないように小さくなっていたジャルカは慌てて文句を言う。
「何を言っておる。別に余の代わりに貴様がザール教を征伐に行って来てくれても良いのだぞ」
不敵な笑みを浮かべてシャラザールが言う。
「いえ、そのような。シャラザール様に成り代わるなど滅相もございません。
しかし、転移させるのは100名が限界ですぞ」
ジャルカが釘を刺す。
「1000名送れ」
「それはいくら私でも無理です」
「ふんっ、ジャルカも耄碌したな」
「なんとでもおっしゃって下さい」
ジャルカは譲らなかった。
「止む終えまい。200名で許してやる。そこが限界だ」
「シャラザール様も無茶をおっしゃいますな」
ジャルカは苦笑いをした。
「何いつものことだ。ジャンヌ、聞いてのとおりだ。人選はその方に任せる」
「御意」
シャラザールの言葉にジャンヌは頭を下げる。
「アレク」
「はっ」
シャラザールの言葉に即座にアレクが反応する。
「陳国に1個師団の出兵の要請を直ちに行え」
「御意」
アレクはそう言うと直ちに部屋を出て行った。
「オーウェン」
「はっ」
「貴様の国も1個師団出兵させろ」
「御意」
オーウェンもシャラザールに跪いた。








