暴風王女と赤い死神は戦神の補講を恐れました
それからが大変だった。
元々、人間爆弾攻撃は魔王が始め、前回はノルディン帝国がアデリナの母にさせていた。
前回はクリスが浄化魔術をまとった剣でアデリナの母を刺して浄化、魔導爆弾を消滅させていた。しかし、クリスだけが対処できても他のものが出来ないと同時多発テロが起きた時に対処できないと、魔力を持つ閣僚、魔導師を中心に訓練を行ってきた。
そして、何を思ったか、シャラザールが来臨した時にその特訓をさせられて、お互いに魔導爆弾を腹に抱えた状態で徹底的な訓練を、宋国と前回の聖堂でやらされていたのだ。
ジャンヌやアレクは何度も失敗、そのたびに半死半生の状態になったが、そのたびにシャラザールに馬鹿にされながら、治癒魔術をかけられて復活させられて訓練させられるという、最悪の特訓を経てほとんど完璧に出来るようになっていた。
だから今回、アレクは4人相手でも対処できたのだ。
しかし、全てのけが人を運ばれたジャルカは治療に忙殺されてそれどころではなかった。
「本当にこんなに沢山の人の治療をするなど、いい加減にしてほしいですな」
ブツブツ文句を言っていた。
「この前は老婆ばかりと文句を言っていたじゃないか。今回は若い女官がいただろう。彼女に対しては喜んで治療していたくせに」
ジャンヌが言う。
「何をおっしゃいます。姫様。治療は神聖な行為です。そのような邪な思いをして治療をしておりませんぞ」
ジャルカが白々しく言う。
「あっ、そうか。クリスがみんなと違って見目若い女性3人を浄化魔術で浄化して治療できなかったから怒っているのか」
ジャンヌがからかう。確かに今回はクリスは剣で突き刺さずにパワーアップした浄化魔術で3人も魔導爆弾を処理していた。
「何をおっしゃいます。姫様。クリス様の浄化魔術を指導したのは儂ですからの。クリス様が出来て当然です。それよりもお一人だけ浄化魔術の始動に失敗して爆死させた方がいらっしゃいましたな」
ジャルカは意地悪そうな目でジャンヌを見る。
「な、何を言う。あれは急いでいたから、仕方がないだろう」
慌ててジャンヌは言い訳した。
「何をおっしゃいますやら。急いでいても気配を察知して機敏に動くのが魔導師の基本ですぞ。
アレク様を見習いなさい。4人もの生徒の命を助けられたのですから」
「・・・・」
ジャンヌはジャルカの小言に一言も反論できなかった。
「まあ、シャラザール様の特訓の成果かな」
アレクは謙虚に言って引きつった笑いをした。アレクはあの2回の恐怖の特訓のことを思い出していた。何度失敗してジャンヌに爆発させられたことやら。もっとも自分も失敗して何度かジャンヌを爆発させたが・・・・。
「まあ、姫様はまた補講ですかな」
「えっ」
ジャルカの一言にジャンヌとアレクがハモった。
「またやらされるのかよ」
「ちょっと待った。その人間爆弾やらされるの俺じゃないか」
ジャンヌのうんざりした声に、アレクの悲鳴に近い声が続く。
「ほっほっほっ。お二人とも仲がよろしいことで」
「何で仲がいいんだよ」
「ジャルカ爺。その訓練はあんまりやりたくないんですけど」
ジャルカの言葉にジャンヌが噛みつきアレクは嫌そうにする。
ジャルカはそれを見て笑っていた。








