クリスの母からの電話でクリス争奪戦が勃発しました
それからが大変だった。
ハイランドシア公爵家はお取り潰し、急遽ジャスティン率いる大隊がハイランドシア領に派遣された。
ロヴィーサは王宮預かりの身となった。もっとも護衛魔導師のオスキャルと護衛騎士のドリスは敬愛するウィルやメイの側にいられると喜んでいたが・・・・。
よく判っていないロヴィーサも窮屈な生活から解き放たれて、ビアンカの側にいられて喜んでいる面もあった。
クリスとしては公爵家を取り潰した手前、官僚になりたければその道を、能力的に難しければどこかの貴族に嫁入れさせる気は十分にあった。基本、公爵家の出をひけらかす面が鼻持ちならぬと捉えられる恐れもあったが、最悪、グリンゲン宮内卿の養女にして嫁がせれば問題は無いだろうと思っていた。
そして、当事者のザール教は布教に麻薬の使用と販売、奴隷売買に関与したことで直ちにボフミエ全土で禁教になった。
「大変でございます」
マウノ・アールネ・教皇魔導師団長が教皇アードルフ・ナッティネンの所に転がり込んできた。
「どうしたのだ。余はボフミエでの不首尾で機嫌が悪いぞ」
「それどころではございません。ボフミエの小娘が手を回したものと思われますが、ドラフォードで禁教が決まりました」
「な、何だと!」
「それだけではございません。マーマレード、テレーゼ、ノルディン、陳、ジパグ各国でも禁教令が出たそうです」
「理由は何なのだ」
「布教にバラウェイが使用していたことがバレたものと」
「全てはアルヴィが勝手にやっていたことにせよ」
「そう言う理由を全ての教区で発令致しましたが、各国当局は聞く耳を保たずで、次々に司祭がバラウェイ所持罪等で各国で掴まっております」
「おのれ、ボフミエの小娘め。こうなったらもう許さん。直ちにタネリ・マキラ教皇騎士団長とファントマ商会を呼べ」
教皇は命じていた。こうなれば最後の手段だった。ボフミエの小娘らには目にもの見せてやる。アードルフは歴代教皇が取ってきた非常手段を取ることにした。
一方、ボフミエ魔導国の閣僚食堂は今日もざわついていた。
騎士団長のジャスティンがハイランドシア公爵領を接収して中間報告に帰還したのだ。その報告会兼ねて食事会が開かれていた。ジャスティンは大した抵抗も受けずに、ハイランドシア領を接収していた。その食事会も終わろうとしている時だ。クリスの魔導電話が鳴った。
「母様?」
久しぶりの母からの電話だった。
会議も終わろうとしていたので、クリスは皆に合図して取った。
「母様」
「久しぶりね。クリス。たまには電話してきてほしいわ」
「ごめんなさい。中々いろいろあって忙しくて」
「まあ、大変なのはわかるけど、少しはいい人が見つかった?}
「母様!今は忙しくてとてもそんな暇は」
「これはこれは母上様」
横からオーウェンが強引に出てくる。
「これはオーウェン様」
娘の電話にドラフォードの皇太子が出てきて、シャーロットは驚いた。それもシャーロットの事を母と呼んでいるし。
「何という事をクリス嬢に言われるのですか。私というものがいるにも関わらず」
「オウ、面倒なことになるから出てこないで下さい」
クリスが強引にオーウェンを画面の外に押し出す。
「クリス、オーウェン様とその後、進展はあったの?」
シャーロットが心配して聞いた。
「何も無いです」
クリスは即座に否定するが、
「侯爵夫人。我が父から婚姻の申込みは大分前にそちらにお送りさせていただいているのですが」
横からオーウェンがまた出てくる。
「えっ!オウ?それってドラフォード国王陛下から正式な申し込みがされているってこと」
クリスは驚いて聞く。
「何今頃言っているんだよ。クリス。そうだって前から言っているだろう。そうですよね、侯爵夫人」
「えっ、まあ、数え切れないほど届いていていてよく掴んでいなくて」
シャーロットは笑って誤魔化そうとした。
「な、なんと、そうですか。では父より直接侯爵閣下に電話させますね」
「えっ、いや、そのような恐れ多いことは」
オーウェンの言葉にシャーロットは慌てた。
「オーウェン様。クリスはマーマレードの皇太子に婚約破棄された前科がありますし、ドラフォードのような大国の妃が務まるとはとても思えませんが」
「何をおっしゃっていらっしゃるのですか。クリス嬢はこのボフミエ魔導国のトップとして十二分にやっておられますよ。私や、アレクやジャンヌやアメリアなど各国の皇太子を率いておられて、ドラフォードの王妃なんて問題なく出来るでしょう」
「皆々様のご厚意によってご指導いただいているだけだと思うのですが」
シャーロットが皆様のおかげだと言う。
「まあ、ドラフォードが大国ということでしたら我がジパグの妃はいかがでしょうか」
後ろからいきなりコレキヨが参戦してきた。
「な、コレキヨ、貴様。依然はどうした」
「えっいや、それは」
オーウェンのツッコミにコレキヨが動揺する。
「えっ、コレキヨ様って依然王女殿下とお付き合いしてるんですか」
クリスが聞く。
「いや、まあ、まだ正式なことではなくて・・・・・」
コレキヨが赤くなる。
「皇族が駄目なら、グリンゲン公爵家は如何でしょうか」
「ペトロ、何横から出てきている。それならばドラフォードの筆頭公爵家のバーミンガム公爵家を」
ペトロが横から出てきて、それにアルバートも参戦する。
「アルバート、お前はその6男だろ。継承権がないではないか」
「そんなもの、クリス様が降嫁いただければ父に言えばなんとでもなるわ」
男たちが言い争いを始めた。








