シャラザールの怒りがザール教に炸裂し、赤い死神や大国皇太子らがそのとばっちりにあいました
「えっ。パラウェイってアルコールを含んでいるのか」
ジャンヌは慌てて立ち上がった。
「ジャンヌ何すんのよ」
そのジャンヌの手を慌てて引いてアイラは無理やり座らせる。
「しかし、アイラ、シャラザールが」
声を抑えてジャンヌが言う。
「えっ」
アイラも目が点になった。
その横ではロルフが固まっていた。今まで見たこともない巨大な魔力の塊が見えたのだ。というか、大きすぎて聖堂に収まりきらなかった。全ての魔力が霞んでいた。
シャラザールが来臨した。それは下手しなくても大変な事だった。この聖堂はもう保たない???
オーウェンはクリスとベタベタ出来て幸せだった。しかし、その瞬間、思わず、退けぞった。
「な、な、な・・・・」
絶句していた。なんでクリスがシャラザールに代わった?
その瞬間最も大きな衝撃を受けたのはアレクだった。
「ヒィッ、ヒェぇぇぇ」
驚きの余り椅子ごと後ろにひっくり返った。
「な、何をしているんですか。殿下」
グリフィズが慌ててアレクに駆け寄る。
「シャ、シャ、シャ」
アレクは言葉もよく出なかった。
何でこの瞬間にシャラザールが出てくるんだ。
アルヴィは全く気づかなかった。大半の人間も気付かなかった。
「かつて、ザールは言われました。
母シャラザールも間違っていたと。
世の中には母の理よりも、もっと大切なものもあると。
母は征服するために多くの人を殺したが、それは間違いだった。
戦争という野蛮な行為よりも愛で世界を満たさなければいけないと。
そのためにザール教は出来たのです」
恍惚とした表情でアルヴィは話していた。それがとある方のしっぽを踏み抜いたとも知らずに。
そのアルヴィの顔の真横を椅子が飛んでいった。
「えっ?」
思わずアルヴィは固まった。
怒りの余りシャラザールのコントロールが少し乱れたのだ。乱れなかったら、即死だっただろう。その点はアルヴィは幸運だった。
「嘘をつくな。エセ牧師」
シャラザールは立ち上がって大声で叫んでいた。その声は聖堂中に響き渡った。
その声に皆思わず我に返った。
麻薬の効果は一瞬にして吹き飛んでいた。
「な、何奴だ!」
「ふんっ。元々、余の息子のザールは余の偉大さを伝えるために、ザール教を設立したのだ。それを何だと。母の間違いを正すために、設立しただと。貴様、どこまで嘘をつけばいいのだ」
シャラザールはアルヴィを睨めつけた。
「き、貴様、狂人か。ザール様が貴様の息子なわけ無かろう。すぐにこの狂人を排除せよ」
傍にいた護衛達が慌ててシャラザールに駆け寄るが、一瞬で弾き飛ばされる。
シャラザールはアルヴィに歩み寄った。
「キャーーー」
近くの女性が悲鳴を上げて逃げる。
シャラザールはゆっくりと壇上に近付いた。皆慌てて避ける。
捕まえようと近付いた聖騎士達は一瞬でシャラザールに弾き飛ばされていた。
「いかん、下手したら 国都が壊滅する」
アレクは頭を抱えていた。
逃げようとしたアルヴィは逃げ切れずに、シャラザールによって胸ぐらを掴まれて持ち上げられていた。
「エセ神父。貴様、ザールの思いを踏みにじりし事許せぬ」
ぐいっとシャラザールはアルヴィを揺さぶった。
「ヒィィィ」
アルヴィが悲鳴を上げる。
「そもそも、この気持ちの悪い麻薬は何だ!余の法では麻薬を使用したものは死あるのみだ。なおかつ、貴様ら余が禁じた奴隷に手を出しているそうではないか。万死に値する」
話すたびに、シャラザールはアルヴィを揺さぶった。
「お、お許しを」
アルヴィは命乞いをした。
「許さん」
そう言うとシャラザールの手が一閃した。
張り飛ばされたアルヴィは聖堂の壁を突き抜けていた。
そこには大きな穴が開いていた。
そして、シャラザールはその後ろで震えている神父らをじろりと睨みつけた。
「ヒィィィ」
神父らは震えあがった。
「この麻薬はどこから手を入れたのだ」
一人にシャラザールが問いかけた。
「ザール本国よりファントマ商会が持ち込みました」
その神父は正直に答えた。
しかし、次の瞬間その神父もシャラザールに弾き飛ばされて壁に叩き込まれていた。
「で、国都内の流通はどの様になっているのか」
次の神父にシャラザールが問いかける。
「詳しくは知りません」
そう答えた次の神父も弾き飛ばされた。
「貴様はどうだ」
「そんな答えても同じならば答える意味がないでしょ」
その神父は泣き崩れていた。
「ふんっ。犯罪に手を染めて泣くならやるな」
そう言ってその神父も壁に叩き込む。
「俺は何も言わんぞ」
「そうか」
生意気そうに言う次の神父にシャラザールはニタリと笑った。
「このまま爆裂魔術で貴様ごとこの街を吹き飛ばしてやろうか」
手に力を込めながらシャラザールが言った。
「ヒィぇぇぇぇ」
男は真っ青になった。
「は、ハイランドシア公爵家のウルスラが知っている」
「な、なんですって」
傍で震えていたウルスラは自分に鉢が回ってきて慌てた。
「勝手なことを。あなたも売っていたでしょ」
「私は殆ど売ってない」
二人は言い合いを始めた。
「ええい煩い。お前らもろとも火炎の炎で焼き払ってやろうか」
「戦神シャラザール」
そのシャラザールの前にジャンヌが跪いた。
「ジャンヌか。何じゃ。この茶番は。余は息子が汚されてとても不愉快じゃ」
「誠に申し訳ありません。そこにいる者共に責任は取らせますので、ここはどうかお許し頂けないでしょうか。クリスの従者も怯えております」
その横には驚いて目を見張っているアデリナとビアンカがいた。
二人はクリスがシャラザールに変わって唖然としていた。
「うん?クリスが必死に気にしていた小童どもか」
ギロリとシャラザールは二人をみる。
その瞳にもうアデリナなど卒倒寸前だった。
「その小童は昔助けてやったことがある」
シャラザールはビアンカを見ていった。
「えっ、あの時の神様」
ビアンカはまじまじとシャラザールを見た。
「そうじゃ。あの頃に比べると少しは成長したようじゃの」
「はい。あの時はありがとうございました」
「ふんっまあ、その方に免じてこの地を焦土と化すのは許してあやろう」
シャラザールは優しく言った。
「しかし、ジャンヌ、貴様らはまだまだじゃ。アレク!」
「は、はいっ」
シャラザールに呼ばれて二階で大声で返事をすると慌てて転がり落ちてきた。
「頭が高いわ」
シャラザールは言うとアレクを張り倒していた。
なれているのか流石にアレク、壁には突き刺さらなかった。必死にその衝撃に耐える。
「余を上から見下ろすとはいい身分になったものじゃな」
「お、お許しを」
顔を手で抑えながらアレクが頭を下げる。
「オーウェン!」
ついでシャラザールはもう一人の下働きを呼ぶ。
「はいっ」
慌ててオーウェンも駆け寄ってきた。
そのオーウェンも張り倒される。
オーウェンも2度目なので何とか壁に激突は避けたが、アレクと違って年季の差か地面に叩きつけられる。
「貴様もまだまだじゃ。そんなのでクリスを嫁にやれると思うなよ」
「は、はいっ申し訳ありません」
なんとか起き上がってオーウエンが頭を下げる。
「二人ともまだまだじゃ」
その二人を見てシャラザールは苦笑した。
「それに、まだまだ、根性が足りんな。そもそも、宗教なんぞに頼ろうとする根性が気に入らん。軟弱ザールめ、余の心を後世に伝えると言っておきながら、麻薬と奴隷の温床ではないか」
「はっ。そこは我々で何とか致します」
ジャンヌが言う。
「ふんっ。信用ならんわ」
言うや、シャラザールが手を上げた。
凄まじい爆発音がして天井が弾け飛ぶ。
公爵邸も一瞬で消滅していた。
「軟弱信者共よ。今から余がみっちりとその歪んだ性根を入れ直してやる。覚悟するが良い」
そして、シャラザールの驚異の特訓が信者たちになされた。
しかし、10分も耐えられる神父や信者などいるはずもなく、その代わりに、アレクらに対して猛特訓が行われたのは言うまでもなかった・・・・・
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