赤い死神が大国皇太子に嫌がらせをしました
赤い死神は恐怖のシャラザールがドラフォードの味方になるのを恐怖しています。
「なんで貴様がここにいる。」
オーウェンは切れていた。
父の国王からノルディンの外務大臣が来るから会いに帰ってこい。
と言われ、慌てて帰って来てみれば、目の前にいたのがアレクだった。
「いやあ、この前の学園のサマーパーティー以来だね。
あの時は本当にすごい活躍だったよね」
王宮の応接室でアレクは優雅に紅茶を飲んでいた。
「貴様とはその時会ったし、何故わざわざドラフォードでまた会わなければならない?」
本来なら、あの後、領地にこもってしまったクリスを訪ねて少しでも親睦を深めたかったのに、目の前の男のせいでその時間が取れなかったのだ。
「忙しい中、君の為に時間を割いて来たのに、君はなんて冷たいんだ」
全然悲しそうな顔をせず、むしろうれし気にアレクは言う。
「何を言っている。毎日暴風王女の機嫌を取りに国境侵犯を繰り返しているだけだろ。
少しはノルディンの王都に帰って国の役に立て」
「何を言っているんだ。
僕がノザレにいるおかげで
暴風王女様はノルディンに逆侵攻して来ないんだよ。
国には十分に貢献しているよ」
こともなげにアレクは言う。
というか、今回は国の為に動いているんだから。
クリスがオーウェンとくっつくことは何としても阻止したかった。
それでなくてもドラフォードは大国。
ノルディンと違って温暖な地方にあり国力はある。
人口はノルディンの5倍以上。
ここに、クリスが加入すれば史上最強の国家が誕生し、ノルディンは膝を屈するしかなくなる。
アレクも必死だった。
「暴風王女様には相変わらず、相手にされていないじゃないか。
この前もワインを頭からひっかけられてついて来ていたよね。」
「何を言っている。あれはお前にかかるワインを俺がかばってやったんだぞ。」
「はんっ、なぜ貴様が俺をかばってくれる。
お前がぶっかけるのを間違って頭からかぶったと考えた方がよほど整合性があるわ」
「何言ってやがる。転移するタイミングがたまたま当たって貴様の盾になっただけだ」
「ほら見てみろ。俺をかばってくれる訳はないと思ったんだ」
そこでオーウェンは不審に思う。
「でもなんで俺がワインをぶっかけられなければならない?」
「はんっ。そんなのあんな群衆の前で結婚の申し込みをしようとしたバカ者を邪魔しようとしたに違いないだろ」
「えっお前あの場では聞いていないだろ」
「愚か者!
何百人もいる前で結婚の申し込みをしようとしたドラフォードの馬鹿皇太子のことなど、
既にノルディンの全国民が知っておるわ」
アレクは笑った。
「皆笑いものにしておるぞ。クリス嬢も恥ずかしがって
二度とお前には会いたくないとジャンヌに言っていたぞ」
「ふんっ、嘘をつくな。クリス嬢からはその時のお礼を言いたいからまた直接お会いしたいとの心温まる直筆の礼状が来ておるわ」
余裕をもってオーウェンは言うが
「礼状なら俺ももらったぞ」
アレクが懐から取り出した礼状にオーウェンは目が点になる。
「ちゃんと直筆だぞ。
先日は私をかばってワインをかぶって頂いて本当にありがとうございましたとな」
「なんで貴様に…・」
オーウェンはショックだった。
わざわざ礼状をもらったのだから脈ありかなと思ったのに。
「そんな礼状など貴族令嬢のたしなみの一つなのだよ」
余裕をもってアレクは応えた。
「クリス嬢は気づかいの出来るご令嬢だからな。
こんな礼状なんて何通も出しているんじゃないか」
アレクはオーウェンが立ち直れなくなるショックを与えようと畳みかける。
ボリスにワインをタイミング悪くぶっかけられて
怒りのあまり北極送りにしようとして逃げられたアレクだったが、
そのおかげでクリスから礼状もらったので、ボリスの事は許そうと思った。
既にクリスとジャンヌによって強制的に許したことにさせられていたが…
二人は知らないが、何せあの件でクリスが礼状送ったのはこの二人だけだったのだから。
しかし、調子に乗って余計なことまで話してしまった。
「それにクリス嬢にはいろんな国から結婚の申し込みが大量に来ているそうだぞ。
お前のような軟弱な男には・・・・」
「アレク、その話本当か」
いきなりオーウェンが詰め寄る。
「えっ。お前はつかんでいないのか。ドラフォードの諜報局も大したことは無いな」
「個人的な事に諜報局を使えるか!」
「まだまだ甘いな」
「で、実際は」
トラフォードがにじり寄る。
「まあ、別に秘密じゃないから良いけど、
王族だけで10通、
テレーゼ国の第二王子だろ。マイセンの皇太子だろ
あそこの皇太子はお前よりもよほど美形だぞ。
それとウルの筋肉皇子。」
「こうはしておられん。何としてもクリス嬢の心を掴まねば
失礼する」
慌てて、オーウェンは応接室を飛び出して行った。
「・・・・」
アレクと随行の大使は呆然と見送った。
「殿下、結局持ってきた案件使いませんでしたけど、宜しかったので」
「うーん、まあ、この案件でしばらく引っ張れるな。
明日くらいにお前からドラフォード国王に伝えてくれ。
今回の事を。
いくら温厚な国王でも、一国の皇太子に対して用件も聞かずに飛び出したと知れば怒るだろう」
「当然とは思いますが。」
「私がどうしようかと、大使館で途方に暮れてお待ちしているとお伝えろ。」
アレクはにやりと笑った。
「ただちにオーウェンは呼び戻されるだろ。
これでしばらく時間をつぶせる。
皇太子が帰ってきたら連絡しろ。」
アレクは立ち上がった。
「お待たせして良いのですか?」
「かまわんよ。
俺が帰ってくるまでは無視されたショックのあまり高熱で寝込んでいるとでも何とでも言い訳しておけ」
「了解しました。」
大使はこんな事して何になるのかと思いもしたが、下手に聞くと藪蛇になりかねないので、黙っていることにした。








