ボフミエ人救出閣議で自らを皆がどのように考えているか知って、クリスは泣きたくなりました
「続いて奴隷となったボフミエ人の救出状況ですが」
フェビアンは次の議題に入った。
「ノルディン帝国から約1000名の奴隷が返還されたので、捕虜となっている兵士1000人を返しました」
アレクが報告する。
捕虜になった5万名のうち、47000名は返還したが、3千名を捕虜名目で、ボフミエに連行していたのだ。残りは2千名。
「アレク、残り2千名もいるんだけど、いつまで面倒見るつもりだ」
オーウェンが聞く。
「一応捕虜ってことにしているけれど、そうでもしないとノルディンは奴隷を返還しないし。2千名くらいなら、俺の部下でも良いんじゃないか。ボフミエ国の運営をドラフォードの東方第一師団にも手伝ってもらっているんだから」
「その食料はどうするんだ」
オーウェンが訊ねる。
「土地があるんだから屯田させて自分らの食い扶持以上に作らせるさ」
「でもそれ誰がやるのさ」
「依然にお願いしているけど」
オーウェンの問いにアレクが平然と言い放った。
「えっそれも内務かよ」
嫌そうにオーウェンが言う。
「オーウェン様。食糧増産は大切な事です。いつ何時また飢饉が起こるか判りませんので、こちらからはイザベラを応援に回します。何とかお願いできませんか」
クリスが横から口を出した。
「筆頭魔導師様がそうおっしゃるなら悦んでさせて頂きます」
クリスに言われてあっさりとオーウェンは頷いた。
「捕虜救出の具合はどうですか。ジャスティン」
クリスは騎士団長に尋ねた。
「全世界に100名の特別部隊を編成して捜査させていますが、なかなか進展しておりません」
ジャスティンが言う。
「まあ、まだまだ、全てにおいて人材不足というのもあるんじゃないかな」
オーウェンが言う。
「外務も全然人手不足で、そもそも、国の規模の割に大国へすら10名も人を派遣できておりません」
アレクも頷いた。
「そうよね。今年は食料増産してなんとしても飢えないボフミエにするという最大の目標もあるし、出来ることを一つずつやっていくしか無いのではないかしら」
アメリアが言った。
「そう言えばうちの2000名のうちからそう言う諜報系に強そうなのを見繕ってジャスティンの部隊と合同で当たらせたらどうだろう。慣れていないボフミエの兵士たちよりも、使えるような気がするが」
「それ良いな。ドラフォードからも100名くらい出すよ。300名に増やせれば捜査も進展しやすくなるだろう」
アレクの提案にオーウェンも頷く。
「そうだな。そうしてもらえるとありがたい」
ジャスティンも頷く。
「でも、捕虜にそんな事やってもらって良いんですか」
フェビアンが聞く。
「まあ、捕虜と言ってもノルディンの兵士だし、俺には逆らわないだろう」
アレクが言う。
「そうだな。クリスもいるし」
ジャンヌが頷く。
「ちょっと待って下さい。お姉様。お姉様の名前が出てくるなら判りますが、何故私が出てくるんですか」
怒ってクリスが言った。クリスはどちらかと言うとお淑やかで、折れそうな華奢な体つきだ。アレクやジャンヌを恐れるのならば判るが何故クリスを恐れる事があるのかクリスには理解できなかった。
しかし、誰もクリスを援護しなかった。
「だって、この前陳国に行った時、ノルディンの王子を雷撃で瞬殺したよね」
「・・・・・・・」
ジャンヌの一言でクリスは撃沈した。
そうだった、ボフミエの民を人間爆弾にするとか言われて怒りのあまりやってしまったのだ。
「さっさと奴隷となった者を見つけないと、貴様らの王子のように雷撃すると筆頭魔導師が怒っているぞ、とか言えば必死にやるんじゃないかな」
「まあ、確かにクリスの雷撃は何千キロも彼方のノルディンの宮殿を1撃で破壊したし」
ジャンヌの言葉にアメリアもダメ出しする。そう、ノルディンの宮殿もアデリナの母親を人間爆弾にされた怒りの余り攻撃して破壊していた。
クリスにはこれ以外にもGAFAの殲滅とかいろいろな実績があった。見た目は可愛いい何も出来ないような令嬢に見えるが、怒ると何をするか判らない史上最強の攻撃兵器と化すのだった。
それに更に最悪なことにはクリスには憑依している史上最強の戦神シャラザールがいるのだ。シャラザールに殺されかけたノルディン兵たちが逆らうとはとても思えなかった。
「そんな、ちょっと切れてしまっただけなのに」
クリスがブツブツいじけて言うが、ちょっと切れてあの攻撃力。本気で切れれば、1つの都市が丸焼けもあり得るのではとアレクはいつものごとく恐怖に感じていた。
「まあ、とりあえず、3国共同で頑張ろう」
オーウエンが話題を変えるように言う。
「そうだ、ガサ入れは魔導師団がいつでも協力するぞ」
ジャンヌも言った。
「姫様。姫様はただ暴れたいだけではありませんかな」
ジャルカがニンマリと注意する。
「何を言う。ジャルカ。私もボフミエの一員だ。少しでも力になりたいだけだ」
「でも、ガサ入れは必ず出たいと」
「当然だ。新戦力も試してみたいし」
ジャンヌは言ってからしまったという顔をした。
それを呆れてジャルカが見ていた。
「まあ、魔導師団長も程々にお願いしますね。では皆でがんばっていくということで宜しいですか」
フェビアンが無理やりまとめた。
「異議なし」
ジャンヌらが賛成した。
「そんな、皆ひどい…………」
クリスはブツブツいじけていた。
かわいそうなクリス、でも、史上最終兵器なのは事実です。








