プロローグ ザール教の陰謀
すいません。これ抜けていました。
ザール教、シャラザールの息子ザールが立てた宗教で、そのザールを預言者として信仰している。全世界に200万人もの信者のいる一大宗教だ。その教都ザールはボフミエの東千キロ以上離れており、ドラフォードと陳国の国境付近に存在した。
砂漠に開けたオアシスザールは人口10万人を誇る中継規模の都市であり、市民の大半はザール教信者だった。
その中心には巨大な大聖堂が聳え建っていた。
その聖堂の地下室の秘密の部屋にはザール教のトップ、アードルフ・ナッティネン教皇が女を侍らして椅子に座っていた。
ひして、その前の十字架には一人の男が肢体を固定されていた。
「さあ、貴様らの組織の人間が誰か言うのだ」
男が鞭で打った。
「誰が言うもんか」
ムチで打たれたケビンは抵抗した。
「生意気な」
男は怒ると何度も鞭打つ。
その度にケビンは歯を食いしばって耐えた。
「このような男を虐めてもつまらんの」
アードルフはつまらなそうに言った。
「これが見目麗しい女ならば、ヒイヒイ色んな意味で言わせてやるに」
「猊下、お言葉が過ぎましょう」
横にいたアルヴィ・パーテロ枢軸卿がやんわり注意する。
「これがボフミエの小娘ならば、余の欲望の限りを尽くしていたぶってやるのに。こんな男てはな」
アードルフは残念がる。
「しかし、ボフミエのちょっかいで相当ダメージを受けておりまする。この辺りで色々対策せねばなりますまい」
アルヴィは真剣に言った。
「そうじゃな。都合の良い事にこのようにボフミエのネズミも捕まったし」
アードルフも頷く。
「ふんっ。ボフミエめ。何が奴隷は禁止だ。ボフミエから女奴隷が入ってこずとも陳や周辺諸国からいくらでも居るわ」
「しかし、ボフミエの魔導師共が最近周辺国に出没しまして我が商会の拠点もいくつか制圧されました」
ファントマ商会の会頭が声を上げた。
「早急にスパイの洗い出しと、ボフミエに対し、何らかの事をせねばならないということか」
「御意」
アルヴィが礼をした。
「ボフミエのハイドランジア公爵領に対しての布教具合はどうだ」
「順調に進んでおります。小娘に対して不満を持っている貴族連中に対しても協力的に布教できております」
「それに伴ってパラウェイのバラマキも順調に進んでおります」
アードルフの問に対してアルヴィとファントマが応えた。
「ボフミエ国都への進出状況はどうだ」
「ボフミエ魔導学園に教師を潜入させました。パラウェイのバラマキも不良学生を中心に行っております。そろそろ種まきは終わりかと」
「そうは言ってもぬかるなよ。やる時は一度にやらんとな。後々遺恨が残っても厄介だ」
「はっ。早急に準備を整えさせていただきます」
アードルフの指摘に、アルヴィが頭を下げた。
「それとその男の拷問も見飽きた。パラウェイを使え」
「廃人になる可能性もありますが」
一抹の不安をアルヴィが述べる。
「構わん。1人位廃人になった所で何の問題がある」
「御意」
アルヴィは男に合図をした。
男は嬉々として箱から注射器を取り出した。
「止めろ」
注射器を見てケビンの目に恐怖の色が映った。
パラウェイは最新の麻薬で人に快感を与えると同時に人の精神を支配する。
そして、使いすぎると精神が壊れるのだ。死の麻薬と言われる所以だった。
男は嬉々としてケビンに注射器を持って近づいた。
「やめろ」
ケビンは必死に暴れたが、固定されているので全く効力は無かった。
「ギャアアア」
ケビンは注射器の針を腕に刺されて悲鳴を上げた。
「ふんっ、この者もどれくらい保つかのう。せいぜい余を楽しませてほしいものだな」
「左様でございますな」
一同は大きな声で笑いあった。地下室にはその笑い声が不吉に響き渡っていた。








