クリス ジャルカに助言もらう
王都ではそろそろ暑くなってきたが、北の都では、やっと少し太陽の光が強く感じられるようになってきた。
ジャルカは王都へ急遽呼び出されたジャンヌに代わって、駐屯地でのんびり過ごしていた。
そのジャルカの前に突如として魔導電話が光った。
「これはこれはクリス様。
一別以来でございますな。
いろいろございましたが、おからだは大丈夫でございますか?」
「はい。ジャルカ様にいろいろご指導賜りましたのに、
私がふがいないばかりに婚約破棄されてしまい申し訳ございません。」
クリスは頭を下げる。
「何のなんのクリス様は何も悪くはございませんぞ」
「悪いのは全てあのボケ皇太子でございます」
「いえいえ、私が殿下の心に沿えなかったのです」
「何をおっしゃっていらっしゃるのです。
クリス様は王宮で働いている者たちの心に沿われたではありませんか。
爺はそのことをお伺いした時に感動感涙いたしましたぞ」
「そのような事。私はまだまだでございます。
動転した余り、皇太子殿下や王妃殿下のせいにしてしまいました。」
「クリス様。あの場では致し方ありますまい。
爺でもお二人を張り倒しておりますわ」
「まさかそのような
私の為にそのようにおっしゃっていただかなくても」
クリスはジャルカの心遣いに感激していた。
「いやいや、決して嘘ではございませんぞ。
で、このようなおいぼれにお電話いただいた理由は何ですかな?」
「本来ですと、まずお詫びに直接出向かせて頂かないといけないのですが、
母からはしばらくは領地の邸宅からは出るなと言われておりまして、お電話で申し訳ありません。
王妃様や他の皆様にもご迷惑かけた手前、ご相談もできず、出来ましたらジャルカ様のお知恵をお借りできたらと思いお電話したのですが」
「いやいや、クリス様のご相談なら大歓迎ですぞ。」
「私、王妃にはもうなれませんが、この国の役には立ちたくて、将来的には王宮で働かせて頂こうかなと思うんです。」
「なるほどなるほど官僚か何かになろうとされているのですな。」
「まだ具体的には決めていないのですが。
でも、あんな事をしでかした手前、しばらくは王宮にも行けなくて。
母が気分転換も兼ねて少しドラフォードにでも行こうと。
先日ドラフォードの王妃様からもお誘いのお電話賜りまして」
「なんと、ドラフォードの王妃様から直接お電話を。
確か、クリス様のお母様とキャロル様は昔からのお知り合いでしたな。」
「でも、せっかく行くのでしたらどのような事に気を付けたらよいかなと。
いろいろアドバイス賜るとありがたいのですが。」
「なるほどなるほど。細かいことはルーファスからまた送らせますが、あそこのドーブルの爺は知り合いですが、」
「トッポの戦いで有名な」
クリスが口をはさむ。
「さよう、よくご存じですな。」
「王妃教育で学びましたから」
「流石ですな。その応用が大切です。
あいつはそこでノルディンの皇帝を破ったのが一生の自慢です。
あの戦いはあいつが言うには馬の優劣が肝でしての。」
「どのようにドラフォードが優秀だったのですか。」
「それは秘密です。」
「判りました。それをドーブル様にお伺いすれば良いのですね」
笑ってクリスは言った。
「そう、さすがクリス様。
ただし、ドーブルは話し出したら止まりませんからな、適当なところで切り上げる事を忘れないようにして下さい。」
「ありがとうございます。」
「あと、あそこの陰険皇太后は農業に凝っておりましてな、
何でも政務の基本は農業だそうですから。
その手を見せてもらうと今後の参考になりますぞ・・・」
10分くらい電話で話してジャルカは電話を切った。
「うーむ、こんなことを話してよかったのかの。
マーマレードの為にはならんし、あの陰険皇太后を喜ばすだけじゃが。
それにしてもエド様はやってくれたの。
ま、ヘンリーのせいでもあるが。」
ジャルカは遠くを見た。
「アルフレッド様。あなたのなされたことがまだ響いておりますぞ」
遠く王都の方を見ながらジャルカは現国王ジョージと王弟ヘンリーの父親の事を思い出していた。
「あのくそ爺。
この忙しい時に、ドラフォードの情報まとめろだと。
ふざけやがって」
諜報局の局長室ではぶつぶつ言ってルーファスが作業していた。
「ルーファス元気か?」
学園で同期だったマーカスが入ってきた。
「なんだ一体。今忙しい。」
マーカスは伯爵家の跡取りで役職にもつかずのんびりしている。
ルーファスは三男で官僚になるしか食べていけなかった。
「いやあ、忙しいところすまん。学園時代の友人に聞きたいことあってな
うちの息子にミハイル嬢はどうかなと思って、お前いろいろ情報を持っているだろう?」
ルーファスは友人の頭の先から足先まで眺めた。
「お前はバカか」
「馬鹿とは何だ。うちは伯爵家だし、向こうも侯爵家、全く釣り合わないことは無いだろう。」
「そういう馬鹿が多すぎ。お前で俺に直接聞いてくるのは3人目。」
「そんなに。いやあ婚約破棄されたから、ねらい目かなと思って」
「ミハイル侯爵が切れているぞ。そういう馬鹿な後妻狙いも多いって。」
「後妻よりはいいだろ」
「お前な、そんな馬鹿が多いんだよ。既に婚姻の申し込みは100通以上届いているそうだ。
大国の公爵家の跡取りを筆頭にな」
「えっそんなに。」
「そもそも国王陛下のところにも各国の王子クラスから30通以上。
はっきり言って伯爵クラスじゃダメ」
「そうか、各国の王子が」
「ドラフォードの皇太子を筆頭にな」
「そうか、あの婚約破棄の場で、ドラフォードの皇太子がミハイル嬢に婚姻申し込みしそうになったって言うのは本当なんだ。」
「ジャンヌ姫様がせっかくつぶしてくれたのに。これは国家の損失だ。」
「お前がそこまで言うか」
「王妃教育は厳しかったが、基礎は出来ている。本当にうちの皇太子はバカだよ」
ルーファスはジャルカに言われて自国の為にならない、資料集めにせいを出さねばならなかった。








