依然王女はボフミエの4皇太子にお出迎えされました
皆さん、ここまで読んで頂いてありがとうございます。
日本では次の国王は皇太子なので、男でも女でもそれで通しています。
ボフミエの外務卿で北の侵略国家ノルディン帝国の皇太子アレク、
内務卿で南の大国ドラフォード王国の皇太子オーウェン
魔導師団長でクリスの出身地のマーマレード王国の皇太子のジャンヌ
ボフミエ・アメリア魔導学園の学園長でマーマレードの西に位置するテレーゼ王国の皇太子アメリア
今回の依然は東の国 陳王国の王女です。大きさはドラフォードの3分の1くらいですが、人口は同じくらいいます。ちなみに千年前のシャラザール帝国はドラフォードとマーマレードとテレーゼを合わせて更に大きくしたくらいの巨大さでした
アレクとジャンヌは魔導学園の植木の陰に隠れて入り口を見ていた。
「で、なんでお前たちも来ている」
ジャンヌがその後ろで同じく隠れているライラらを見て言った。
「いや、なんか面白そうで」
「陳国の留学生なんでしょ。どんな奴らかなと」
ライラとザンが代表して言う。
植木にはずらりと魔導師団の面々が隠れていた。
ザンなんて頭に木を差していた。
「何してんのよ。あんたたち。こんな所で」
そのあまりにも目立つ集団の後ろから学園長のアメリア・テレーゼ皇太子が現れた。
「いや、ちょっと見学」
「見学ってね。あんた達目立ちすぎるから。生徒ら皆見ているでしょ」
後ろを振り返ると生徒たちがきゃあきゃあ言って皆教室から出て廊下からジャンヌらを見ていた。少し前までジャンヌとアレクは魔導クラスにいて後輩共を教育していたのだ。
「さっさと授業に戻れ」
知り合いの生徒に二人は命令する。
「あっ馬車が来たぞ」
アレクが言うので全員そちらを見る。
3台の馬車が止まって先頭からオーウェンが降り立つ。
「あっオーウェン様よ」
目ざとい女の子らの黄色い声が響く。
そのオーウェンがエスコートして黒目黒髪の異国の服を来た美しい女性が降り立った。
鈴なりの男性陣が口笛を鳴らす。
それに手を振って依然が応えた。
「ようこそ。アメリア魔導学園に」
アメリアの所を強調してアメリアが言う。
この名前を言うのはアメリアくらいしかいなかったのだが、唯一自分の名を冠した学園なのだ。アメリアは宣伝せずにはいられなかった。
「私が学園長のアメリア・テレーゼです」
「お目にかかれて光栄です。アメリア皇太子殿下。陳国の依然です」
慌てて依然が頭を下げた。
「依然さん。私はここでは皇太子ではなくて学園長ですから、そのつもりで」
「すいません。外務卿からも注意されたのですが、すぐに慣れなくて」
依然が謝る。
「まあ、普通は皇太子は国に1人しかいないけど、ここには今ここだけで皇太子が4人もいるから」
「4人も!」
イーランが驚く。
「ああ、生徒入れたらもっといるわよ。アレクは会ったでしょ。あなたの隣のオーウェンとマーマレードの皇太子のジャンヌよ」
「宜しく」
ジャンヌが手を差し出した。
「よろしくお願いします」
依然が頭を下げた。
「まあ、学園内では王族なんて掃いて捨てるほどいるから、学園内ではさん付けでよろしくお願いしますね。皆さん」
アメリアは皆を見渡して言った。
「はい」
新たな生徒10名が応えた。
「でも、こんなにたくさんお偉い方達にお出迎え頂けるとは思ってもいませんでした」
依然が言う。
「そうよね。それだけあなたが注目されているということかしら」
アメリアが言う。
「そんな、私なんか東方の田舎者ですわ」
依然が謙遜する。
「そんなことはないと思うけど、で、ジャンヌとアレクは何故来たの」
アメリアが聞く。
「いや、訓練がてら来ただけだ」
「じゃあ魔導クラスの生徒達に訓練つけてあげて」
「やったアアア」
アメリアの声に後ろの校舎で大歓声が湧く。
「じゃあ俺も」
「アレク様はこちらです」
そちらに向かおうとしたアレクはペトロに掴まってしまった。
「えっペトロ」
「締め切り間近の書類が溜まっているんです。クリス様が帰ってくるまでにやっておかないとクリス様に怒られます」
「えっクリス嬢に」
アレクが固まる。アレクの唯一のネックと言えた。
「さっさと仕事してしまいましょうね」
ペトロに引き連れられてアレクは宮殿に向かう。
「じゃあ、依然、また」
オーウェンも帰ろうとする。あまり油を売っているとスミスらに怒られそうだ。
「えっ、オウもう行っちゃうの?」
残念そうに依然が言う。
「俺も帰らないとアレク以上にひどい目に合いそうだから」
「また王宮も案内して」
「判った。夕食の後かな」
考えてオーウェンが言う。今日はクリスもいないので時間は取れそうだった。
「オウ、ここまで送ってくれてありがとう」
「どういたしまして」
手を上げてオーウェンは外に出た。
そして、慌てて執務室に向かった。
留学生一同はアメリアに連れられて会議室に向かった。
依然だけは学長室に連れて行かれる。
「依然はオーウェンと前からの知り合いなの」
歩きながらアメリアが聞く。
「はい。学園長。子供の頃西安で迷子の私を助けてもらって」
「へえええ、そうなんだ。で、呼び方が『オウ』なわけ」
「変ですか」
「その敬語やめてよ。あなたも年は私とおんなじくらいでしょ。お互い王族なのだしアメリアでいいわ」
「えっ良いんですか。学園長」
「それで駄目って言うなら内務卿をオウって呼ぶほうがよほど変よ」
「そうですか」
「そうよ。だって彼をオウって呼んでいたのはオーウェンって言えなかった小さい時のクリスだけだったんだから」
「クリス?」
「この国の筆頭魔導師よ」
「筆頭魔導師様にもニックネーム呼びですか」
「まあ、昔からそうだから直んないのよね。クリスは皆に様呼びだけど」
「それって変じゃないですか」
依然が不思議に思って言う。
「大国の皇太子が1侯爵令嬢の部下なるって、特に自国のジャンヌ皇太子殿下なんてどう思っていらっしゃるんですか」
元々各国が疑問に思っていることを依然が聞いた。普通は逆だ。
「ジャンヌは姉御肌だからなんとも思っていないわよ。好きにさせてくれるクリスの方が自分の母親よりも余程良いと思っているはずよ」
「でも、臣下の部下になるってどうなんですか」
「私も最初はそう思ったけど、同僚が大国の皇太子同士じゃない。我も強いし意見もするけど、最終はクリスが判断するからまあ良いかってなるわけ」
「でも、テレーゼの皇太子殿下が高々学園の学園長なんて」
「あなたも言いたいこと言うわね。でも、国の基本は教育よ。それにオーウェン以外はクリスにしてもアレクやジャンヌも皆生徒になってくれて私の下にいてくれたのよ。もう教え子なわけ。そもそも閣議にも出させてもらえるし、皆対等な関係なわけ。クリスを潤滑油にして回っているって感じかな」
「へええ、筆頭魔導師様はすごいのですね」
「それはそうよ。だって魔王にも勝ってしまうくらいなんだから」
「それは本当だったんですか。赤い死神や暴風王女が勝ったのかなと思ったんですけど」
「クリスは最強よ。だってアレクが唯一恐れているくらいだから。私もGAFAの雷撃跡を見たけど、本当に凄まじかったわよ。クリスだけは絶対に怒らせてはいけないと思ったもの」
「じゃあ、オウに手を出したら殺されてしまいますかね」
「依然、いい加減に敬語はやめてよ。クリスに必死にアタックしているのはオーウェンだから。クリスは下手したらなんとも思わないんじゃないかな。私が見てもオーウェンが可愛そうって思えるくらいだから」
「えっ本当ですか。じゃあ頑張ってみますね」
依然はニコっと笑った。
「まあ、頑張って」
アメリアはエールを送った。








