幕間 クロチア再建2 温厚な大国公爵令息アルバートは女官長の言葉にブチギレました
皆さん。
この話の3年前のお話
「赤い死神の大侵攻作戦で王国を蹂躙します…しかし、その前に無敵の戦神が立ち塞がりました」
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から再び、こちらのお話に舵を切ります。
上記話の続きは今章終わってからです。
まだ幕間。毎日更新目指してがんばります
ルカニア・クロチア王女はカーンの支配から逃れられてホッとしていた。
地下牢から出されると、王城は跡形もなく消えていたのに、驚いたが、これでいつ殺されるかビクビクしないで済むと思ってホッとしたものだった。
多くの建物が戦いで破壊されていたので、テントに案内された時は驚いたが、それも致し方なしと思っていた。しかし、1ヶ月たっても王城の再建が始まらないのだ。多少焦りだした所に、あのクリスの街宣動画が全面的に流され出したのだ。ボフミエがクロチアを乗っ取るのではないかとルカニアは焦りだした。それはクロチアの貴族たちも同じだった。元々、クロチア人はプライドが高いのだ。
「ボフミエの筆頭魔導師など、辺境の地マーマレードの1貴族の令嬢でしか無いとか。
大方魅了の魔術でも使ってドラフォードやノルディンの皇太子を惑わしているに違いありません」
「そうですとも。由緒正しき王女様の方が位は上なのです。」
「ここは呼びつけて王女様からガツンと言ってやったほうが良いのではありませんか」
侍女や取り巻きの貴族に言われてルカニアもその気になっていた。
その結果、女官長がクリスのもとに派遣された。
女官長は閣議中のテントの前まで案内された。
「ルカニア王女様付き女官長のジェレナ・リエカと申しますが、筆頭魔導師殿にお会いしたい」
ジェレナは顎を振り上げて傲慢な態度で入り口にいた侍女のミアに言った。
「只今、閣議中で面談は出来ません」
ミアはあっさりと断った。
「なんですって。私、王女殿下の女官長を会いもせずに追い返すというの」
大声で女官長は叫んだ。
「本当にどこの馬の骨とも言えぬ女が筆頭魔導師だと侍女も侍女ね。礼儀作法もなっていないのね」
「何ですって。私はどこの馬の骨かわからないけれど、筆頭魔導師様はあんたところの3流国の王女とは違うのよ」
「何ですって。辺境の国の貴族の娘風情の侍女が名門クロチア王家の王女殿下をけなしてただで済むと思っているの」
二人は取っ組み合いの喧嘩をするように睨み合った。
「どうしたのだ。声がでかい。会議中だぞ」
そこに声を聞いて扉の近くにいたアルバートが出てきた。
「あっ、アルバート様」
ミアは済まなそうにする。
「あ、あなた、筆頭魔導師の護衛騎士ね」
クリスの護衛で一緒に行動することの多いアルバートを女官長はクリスがルカニアに挨拶に来た時に、見たのを覚えていた。
「筆頭魔導師にお会いしたいのだけど」
「あなたは」
「ルカニア王女の女官長だそうですよ」
覚えていなかったアルバートにミアが言う。
「申し訳ないが、今は閣議中だ。まだ、1時間以上かかると思うが」
「そんなにはこんな所で待てないわ。本当にここはホコリが多いのね」
女官長の言葉に二人はむっとする。
「王女殿下が筆頭魔導師をお呼びなの。明日でもこちらに来て頂けないかしら」
何でも無いようにジェレナは言った。
その言葉にアルバートとミアの目が点になった。
確かにボフミエの貴族たちは生意気な奴らも多かった。
しかし、ボフミエ国の国主の筆頭魔導師を呼び出すような無礼な奴はいまだかつていなかった。
そして、相手は殺される寸前で助けられた王女だ。いまクリスらが苦労しているのは自らが壊したとはいえ、このクロチアの王都の再建なのだ。本来ならへいこら媚びへつらいながら、クリスにお願いに日参するのが筋だろう。挨拶もこちらから行ってやったのが、つけあがるすきを作ったか。クリス様ははっきり言ってこういった事を軽んじる傾向にありすぎる。だからこんな見当違いのバカが現れるんだ。
そもそも、クリス様はマーマレードの名門建国以来の侯爵家の令嬢でマーマレード王家からの降嫁も何度かされている王家の親戚筋、またその母方の祖父はテレーゼ王家の名門公爵家であり、当然テレーゼ王家とも親戚筋、こんな辺境のぽっと出の王女なんかに呼び出される筋合いは無かった。
「わざわざここまで来てやったのに、本当に辺境の地の出身だと従者まで教育がなっていないのね」
「何だとババア。もう一度言ってみろ」
剣の柄に手をかけてアルバートは叫んでいた。
「ヒィィィ」
女官長はアルバートの剣幕に驚いて腰を抜かしていた。
切ってやると叫んで暴れるアルバートを押さえるのに、周りは大変だった……








