魔王カーンはパワーアップしました。
すさまじい爆発が起こり、その後には巨大なクレーターが出来ていた。
カーンがジャンヌに翻弄され始めてから、地上に伏せてカーンの攻撃をよけていたアクラシはゆっくりと立ち上がった。
さすがに今の攻撃では、女はただではすんでいないだろう。
しかし、そこには女だけでは無くて多くの兵士たちがいたわけで、その兵士たちが助かっている訳は無かった。ジャンヌは1人でモルロイクロチアの連合軍1万の半数を倒したことになっていた。
戦う前から自軍の魔王の攻撃で半数の兵士を失った現実にアクラシは唖然とした。
「あっはっはつは」
遠くで笑い声がした。アクラシは目を見開くと遠くで女が笑っていた。
「自らの攻撃で半数の見方を殺すなど魔王は飛んだ馬鹿だな」
ジャンヌは魔王を徴発するように嘲り笑った。
しかし、魔王は何もしなかった。
そして、自らの手を見て呆然としているようだった。
「どうした魔王カーン。自らの馬鹿さ加減に気付いて怖気づいたのか」
「あはははは」
いきなり魔王は小さく笑いだした。
「あっはっはっはっ」
そしてその声はどんどん大きくなる。
「どうした気でも狂ったのか」
ジャンヌが言うがカーンはそれを無視した。
「そこな、ボフミエの筆等魔導師の小娘を小さくしたような微力しか持たない小娘よ。
余の良き準備運動に付き合ってくれて感謝するぞ」
「準備運動で味方の半数を殺した愚か者が何を言う」
「ふんっ。無能者は何万人いても無能。
いくら死のうと余にとってはどうでも良いわ」
カーンは独り言った。
「そろそろ本気を出しても良いか。小娘」
「はんっ。今までも本気のくせに良く言う」
「それはこれを見てから言うが良い」
とカーンが宣うと両腕を握りしめた。
そして、どんどん気を集める。
辺りは昼間なのに、一瞬で真っ暗になった。
兵士たちの死骸から黒いもやもやが飛び出してそれがどんどんカーンに集まってくる。
カーンは黒いもやもやに包まれて真っ黒になった。
そして、どんどん大きく成る。
それは魔人のそれだった。
カーンは身長が4メートルくらいの巨人になる。
ジャンヌはそれを見て、今度はやばい事に気付いた。
「小娘、これを受けて見ろ」
カーンが人差し指をたてるとジャンヌに向けて爆裂魔法が放たれる。
そして、一瞬で閃光が光りすさまじい爆発が起こる。
今までジャンヌが立っていたところに巨大なクレーターが出来ていた。
周りに小娘の気配が消えているのに、カーンは気づいた。
「ふんっ逃げたか小娘め」
独り事を言う。
「魔王カーン様」
アクラシはその威力に驚き平伏していた。
その姿を見て慌てて生き残っていた者達も平伏した。
「アクラシよ。ボフミエの小娘を倒すのに、貴様らの力も借りねばならん」
「はっ、喜んで」
平伏したままアクラシが頷く。
「そうか、では貴様らには余の忠実な部下となってもらおう」
「それは当然のことです」
「では、まず、貴様には魔人となってもらう」
「えっいや…・・」
アクラシが抵抗しようとした時、カーンの指から黒いもやもやが飛び出してアクラシの体を覆った。
そして、黒いもやもやが次々に将官クラスの者に飛んでいく。
「ギャー――」
「お助けを」
将官たちは叫んで逃れようとするが、次々に黒いもやもやに覆われて赤い目の筋肉が剥きだした魔人と化していく。
周りの兵士たちの目も赤く光り、狂気じみた顔に塗り代わっていく。
「者ども。今こそ、魔王カーンの国家を樹立するぞ。
その手始めにボフミエの小娘を血祭りにあげるのだ」
「ギャー―――」
人間の声ならぬ怪物の喚き声を上げて一同は前進を始めた。
魔王対人間の戦いの火ぶたが切って落とされた。
人物紹介
アルバート・バーミンガム22 親衛隊騎士
ドラフォードの守旧派のフィリップ・バーミンガム公爵65の息子
年の離れた一番上の兄はミューラー40で東方第一師団長
父に言われてクリスの騎士となる。
マーマレードの王弟叛逆時にはクリスの右腕として前線で活躍する。
騎乗が得意。








