大国皇太子は各国と協調して援軍を集めました。
オーウェンは戦いの準備にこの3日はほとんど寝ていなかった。
それは内務省の連中も同じだったが。
そこへ魔導電話が鳴る。
「オーウェン。貴様、勝手に東方第一師団を動かしたな」
魔導電話でドラフォード国王ピーターが怒ってきた。
「これはこれはドラフォード国王陛下。いきなりですな。そのような事。私はしておりませんが」
オーウェンは否定した。
「何を言っている。ミューラーがお前から依頼されたと言っているぞ」
「私がミューラーに言ったのは、国王陛下に魔王討伐の為に第一師団をお借りするつもりだと伝えただけですよ。そちらにも依頼状出しましたよね」
「ああ、貴様私の了解も取らずにドラフォード皇太子名でドラフォード含めて各国に依頼文を出しているそうではないか」
「私だけじゃなくて連名でしょ。外務卿でノルディン皇太子のアレクが、内務卿で私が、魔導師団長でマーマレード皇太子のジャンヌが、ボフミエ魔導学園長でテレーゼの皇太子のアメリアが、共同で依頼文出しているんです。文句あるならドラフォードだけ外しましょうか。
他の国もやっているのにドラフォードのみ魔王討伐に協力しないんですね」
魔王討伐の依頼で筆頭魔導師のクリスの名前の後ろに4国の皇太子の名をその役職名と連名で載せて世界各地に送ったのだ。魔王討伐は当然世界各国と共同でやるべきであり、ボフミエだけがやっているのではないという事を表す為に連名にした。この書面のおかげでボフミエが勝手にやっているのではなくてかのノルディン帝国ですら参加していることにしたのだ。
元々、ボフミエ国と言っても前述の4国の皇太子が役職についており、次官クラスも合わせると多くの国が参加していることになるのだが。
ボフミエ魔導国が何かすると国際協調で何かやることになってしまう。
本来我の強い皇太子たちが集まっているので協調路線は取りにくいはずだが、温厚だが、後ろにシャラザールのいるクリスに逆らえる者はいず、特に侵略国家の代表のアレクが弱いので、各国のうまく行くはずは無いという思惑はこの点に関しては大きくはずれていた。
「魔王討伐を参加しないとは言っていない。しかし、一言相談したら良いだろう」
ピーターは引き下がらずに文句を言うが、
「父上、時間が無いんです。アレクも皇帝の許可得る前からやっていますし。非常事態なんです。
電話しても出なかったのは父上でしょう」
いらいらしながらオーウェンが言う。
それでなくてもクリスと一緒に行けなくてイライラしているのに、サッサと承認してほしかった。
「あれは閣議中でだな」
「ドラフォード軍のみいなかったらシャレにならないでしょ。だからミューラーには前もって伝えたんです。内務卿の私は戦場には出れないので、誰か責任者が出といたほうが良いでしょう。
アレクやジャンヌは転移出来ますし、テレーゼは魔導大隊が既に来ているんです。
ドラフォードだけ1兵も出さなかったら恥でしょ」
オーウェンにしたらさっさと声をかけただけ感謝してほしかった。
「それはそうだが…」
「父上。ではいいですね。ここ3日くらいあまり寝れていないので」
言うとオーウェンは電話をガチャ切した。
「何だ。オーウェンの奴」
ぶちぎれたピーターが机を思いっきり叩いていた。
「まあ、あなた。ここは大国の国王らしく鷹揚にしてお認めなさっては」
横で聞いていた王妃のキャロラインが言う。
「そうは言ってもな。あまりにも私がないがしろにされていないか」
怒りが納まらない様子でピーターが言う。
「でも、魔王が復活したというのは本当なんでしょう」
「いろんな事象を鑑みるとそうなる」
「それにあのひよっこたちが立ち向かうのですから、ここは大らかに見守ってやらねばならないのではないですか」
「それはそうだが」
ピーターの校は少し小さくなる。
「本来ならばノルディンとドラフォードの全軍を充てても、勝つのは難しいのでしょう?
それをあの子達だけでやるというのですから」
「果たして奴らだけで勝てるのか」
ピーターは疑問を呈するがキャロラインの言う事はもっともだった。
普通魔王は無敵だ。全軍でかかっても勝てないだろう。
「クリスは一度魔王を遠距離攻撃で攻撃して黙らせたとか。その魔力量は魔王と対等だと。姉のオリビアも勝てる可能性は十分にあるとのことでした」
「クリスの力はそれだけすごいという事か」
「ええ、彼女で負けると後は無いとのことです。その時は後は運に任せるしかないでしょう。
おそらくこのドラフォードも国自体が亡くなるのではなくて」
キャロラインの言うとおりだった。
これは世界存亡の危機だった。
「そうだな。王宮に残っている魔導大隊をオーウェンに言って現地に派遣しよう」
ピーターは早速連絡を始めた。
オーウェンらによって世界各地から刻々と援軍が集まりつつあった。
人物紹介
オーウェン・ドラフォード王国皇太子 ボフミエ国内務卿 黒い髪の貴公子
アレクによると陰険皇太子
小さい頃からクリスが好きだったが、マーマレードの皇太子エドに先を越される。
クリスが婚約破棄された時にクリスをかばうが、二人がくっつくことに反対するジャンヌとアレクに邪魔される。今も必死にクリスにアプローチしているが、クリスとしては大衆の面前で婚約破棄された娘が大国皇太子の妃になるのはおこがましいと辞退している。
諦めずにアプローチし続けるオーウェンであるが……








