テレーゼ女王はクリスが魔王に対抗できる事を知り喜びました
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一方テレーゼでは王宮にて女王オリビアがサイラス・ヨークシャー公爵から報告を受けていた。
「クリスが魔王を雷撃で直撃したのは誠か」
驚愕の表情でオリビアが聞いた。
「私はその場におりませんでしたが、いろいろな者の話を総合すると間違いないかと」
「その方の孫娘は魔王と対抗できるだけの力を持っておったというのか」
「戦神シャラザール様の血を濃く持つ我がヨークシャー家の血が流れておりますからな」
驚愕したオリビアにさもありなんとサイラスが応えた。
「貴様の血を引き継いでいる点で信用ならないのだが」
「何をおっしゃいます。何代かさかのぼれば陛下との血のつながりもおありかと」
サイラスは逆襲したつもりだが
「そんな事は判っているわ。そもそも、貴様の母親が我が王家出身であろうが」
判り切った事を聞くなとオリビアは言う。
「母は王家の中では魔力量だけはぴか一でしたからの。陛下の母上であらせられる前女王陛下よりも魔力量は多かったと」
「ただし、ほとんど魔術は使えなかったと聞いておるが」
「不器用だったのですな。クリスもシャラザール山を破壊したそうですが、母も失敗したと言っては家の裏山を破壊しておりました」
「巨大なシャラザール山と名も無い裏山では大きさが違いすぎるとは思うが」
オリビアはそう言ったが、
「しかし、陛下は裏山を破壊することはできますまい」
サイラスの言葉に不機嫌そうな顔をしてオリビアは黙った。
「確かクリスも魔術を使うのは苦手だったのではないか」
「我が娘が兵士たちを脅す為にシャラザール山に向けて衝撃波を出させたのですが、クリス自身威力を調節できませんで」
「失敗して山が吹き飛ぶのか」
オリビアは呆れて言った。
しかし、そんな事を王都でやられると王都自体が消滅しかねない。
「まあ、それ以降ジャルカにいろいろ訓練されているようで、練習ではうまく行かないみたいですが、
本番ではGAFAの件といい、今回のカーンの件といい威力は大きすぎるような気がしますが、百発百中の命中力を誇っております」
「さすがボフミエ古の3魔導師が出てきて筆頭魔導師についてくれるように頼むだけの事はあるか」
オリビアは言った。
「はい。さすが我が孫娘かと」
サイラスが自慢して言う。言葉の外にもっと自分を褒めろと言っているその性格がオリビアにはもう一つ合わなかったが。
「ふん。その方がいつもその孫娘に会うたびに嫌がられていると聞くぞ」
「孫娘も照れ屋でして、祖父に会うのも恥ずかしいそうでございます」
「会うたびに抱きついて離さないからであろう」
「私目はあり余るほどの愛情を孫たちに示しているのですが、孫たちは照れておるのかなかなか答えてくれず」
「嫌がっておるのであろう」
オリビアははっきりと言った。
「陛下。そのような事をおっしゃいますか」
白い目でサイラスがオリビアを見る。
「オーウェン様からお伺いしましたぞ」
「何をだ」
オリビアが聞く。
「アメリア王女をボフミエの閣僚にしてほしいと頼み込まれたとか」
「な、何。た、たまたまオーウェンの母と話す事があって、言ったまでの事」
オリビアは慌てた。
「他国の内政に口出しされることはどうかと思われますが」
「偶々話しただけなのだが」
「内政干渉と取られても仕方ありますまい」
「あ奴らが余の言う事を聞くわけが無かろう」
「あっさり断られて学園の園長をなさっておられるとか」
「そもそも貴様が一緒に行っておきながら何もしないからであろうが」
「何をおっしゃいますか。このサイラスですら魔法省の相談役なのです。
そもそもボフミエは小国とはいえいるメンバーは我が孫娘クリスを筆頭に陰険王子の内務卿に恐怖の赤い死神が外務卿、騎士団長に正義の騎士に魔導師団長に暴風王女、魔法省には死に損ないのジャルカとそうそうたるメンバーがおるのですぞ。アメリア様が金勘定が得意ならば財務省のポストがありましたが、それは難しいとのことでしたので、仕方がありますまい」
サイラスに言われると確かにその通りだ。
下手に誰かの下についてそのものよりも下だと言われるとテレーゼのメンツが立たない。独立ポストを用意してくれたことはありがたかったが、1魔導学園のトップをテレーゼの皇太子がするというのもどうかと思うが、本人は魔導学園の名前に自分の名前が入っていたので喜んでいた。そんな単純でテレーゼをまとめて行けるかと心配にもなるが、閣議には参加させてもらっているとのことだし、他国の皇太子連中と遣り合えているのなら、将来の勉強にもなるだろうと静観することにしたのだ。
それを蒸し返してきたサイラスに腹も立った。
「そんな事より書物を調べて何か判ったか」
話を変えてオリビアが問う。
「あまり判りません。魔王がいかに巨大な力を持っておったかという事はいやほど書物に載っておりましたが」
「あれだけあって何か参考になることは無いのか」
「魔王に力で勝てそうだったのは戦神シャラザールのみみたいです」
「戦神のみか。後はどうやって倒したのだ」
「それがよく判らないのですが、運が良かっただの、飽きた魔王が旅に出ただの本当かと疑いたくなるような事しか記載されておりません。あとは魔王は卑怯な者みたいです。我が祖シャラザールに対しても卑怯な行いをしたようです」
「どのような?」
「降伏したと見せていきなり裏切ったとか。後ろを向いたときに後ろから切りかかったとかいろんな説が載っておりました」
司書や手空きの魔導師を総動員して調べさせて判ったのはそれだけだった。
「それだけか。まあ仕方があるまい。それはボフミエの連中に知らせておくように」
「はっ、了解いたしました」
「今回魔王をボフミエだけで対処できればそれに越したことは無い。もし戦力が必要ならばいつでも魔導師団を貸す用意がある旨、書面にてボフミエに示すように」
「御意」
オリビアの言葉にサイラスは頭を下げた。








