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皇太子に婚約破棄されましたーでもただでは済ませません!  作者: 古里@3巻電子書籍化『王子に婚約破棄されたので義理の兄が激怒して
第七章 魔王復活

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魔王はクリスの怒りを買って雷撃の直撃を受けました

オットー・フォルスト伯爵はいらいらしながら待っていた。

既に待たされて1時間以上が立っている。

いくら筆頭魔導師とはいえ、所詮は小娘。

この伯爵当主をここまで待たすとはどういうことだ。

「どうされたのですかな。筆頭魔導師様は」

一緒に連れて来た男爵が言う。

「さすがの筆頭魔導師様も魔王の怖さに逃げおおせられたとか」

ケオルク・シャプター子爵が言い放った。


「誰が逃げおおせたと」

言葉の端々に怒りを紛れ込ませて入って来たアレクが言う。

「これはこれは外務卿。

閣僚の皆様がいらっしゃらないので恐れをなして皆様逃げ出されたのかと」


「黙れ!下郎」

次の瞬間アレクの感情は氷点下まで下がった。


「ヒィィィィィ」

思わずケオルクは悲鳴を上げていた。


アレクの放つ威圧が辺りを制する。


「このままその方を消滅させてやろうか」

冷気を思いっきり充てられてケオルクは真っ青になって震え出した。

そう、アレクは赤い死神。絶対に怒らせてはいけない存在だった。

「望むならその方の領地ごと焦土としてやろうか」

「……」

恐怖に震えた子爵はもう何も言えなかった。


「アレク、嚇すのはそのあたりで良いだろう」

クリスの横にいたオーウェンが言う。

「ふんっ次は無いぞ」

アレクは言い切るとクリスの横に戻った。

子爵は震えて座り込んでしまった。


「で、貴様らは何をしに来た」

強い口調でオーウェンが聞いた。


「魔王の使いできたのか?」


「いえ、そのような事は」

慌ててオットーは否定する。

「ただ、国境地帯を中心にカーンが魔王であるという噂が立って領民共が怯えておりまする。

是非とも筆頭魔導師様に置かれましては強力な対抗措置を取って頂きたく」

「言われずとも、今やっている。貴様は何か文句があるのか」

オーウェンはいつになく強気の発言をした。

「いえ、何か策がおありなら我々共が言う事はありません。ただ、領民が怯えておりますので、出来ましたらその策の一端をお示しいただければ」

オットーはにやりと笑った。

そうこれが言いたかったのだ。

魔王相手に勝てる訳は無い。どう反論するのかオットーはとても気になっていた。


「そうか。殊勝だな。国の為に心配してくれるか」

「当然です。我らはボフミエの事を一番心配しておりますから」

「そうか。ボフミエの為に役立ちたいというわけだな」

オーウェンはにやりと笑った。

「はっきり言ってカーンのモルロイがボフミエ魔導国にちょっかいを出すなど思い上がりも甚だしい。

その方が長として降伏の勧告に言ってはもらえまいか」

オーウェンの瞳はオットーを捕えた。


「そ、そ、そのような事」

オットーは慌てふためく。

「何だ出来ないのか」

「出来る訳ありません。相手は魔王なのですぞ」

オットーは叫んでいた。

そう、そんな事をすれば魔王に殺されるのは目に見えていた。



「で、魔王に誑かされたその方が魔王の代理人となり、ボフミエ魔導国に弓ひこうとしているのか」

今度はアレクが言う。

「そ、そのような事は」

オットーが誤魔化そうとする。

「モルロイの使者がその方の屋敷に入っているのは掴んでおるわ」

アレクが笑って言った。


「魔王に何を命じられてきた」

ぎろりと睨んでアレクが尋ねる。


「偉大なる魔王カーン様は、我々が降伏すると領土を安堵して頂けるとおっしゃるのだ。

ジャスティンですら歯が立たなかった魔王様に勝てる訳なかろう。

直ちに降伏を」

その瞬間、アレクとジャンヌからの攻撃でオットーは丸焦げになっていた。


「なっ何を」

オットーはそう声を出して倒れた。

「な、なにをなさるのです」

残りの6名は驚いた。

「ふんっ反逆者は本来は処刑だ」

「しかし、いきなり処刑は」

「殺してはいまい。そこは加減をしているぞ」

ジャンヌが言う。

「お姉さま」

さすがにクリスがたしなめる。

ジャンヌはそっぽを向いた。



「で、貴様らもその伯爵と同じで反逆者だと」

アレクが尋ねる。


「滅相もございません。我々はフォルスト伯爵に請われて一緒に来ただけで」

「さ、さようでございます。伯爵が魔王に通じておるなどとは露ほども思わず」

「我らは伯爵が今後の方針を筆頭魔導師様にお訪ねするので一緒に来て欲しいと言われて付いて来ただけで」


「ふんっ、どうだかな。モルロイの使者がその方らの屋敷に入るのも確認しているが」

アレクが胡散臭そうに言う。



「えっ」

「いや、そのような事は」

6人は更に慌てだした。


「ふんっ、我々にばれていないと思っていたのか」

呆れてアレクが言う。


「証拠はどこにあります」

ケオルクが叫ぶ。

「証拠?そんなのがいるのか」

にやりと笑いながらアレクが言う。

「状況証拠さえそろえば貴様らもろとも吹き飛ばせば終わりだろう」


「いや、」

「そんな・・・・」

領主たちは相手が赤い死神なのを忘れていた。

そう赤い死神ならやりかねない。

彼によって滅ぼされた国は片手には収まらないのだから。


「証拠なんてその辺の使用人を2、3人しょっ引いて尋問すれば終わりだろう」

オーウェンが言う。

「いや、そんな面倒なことしなくてもこのまま攻め込もうぜ。

一瞬で勝負が決まる」

笑って暴風王女が言った。


そう、クリスを見ておままごと政権だと馬鹿にしていたのを後悔した。

そもそもここには各国の皇太子が揃っていて、各宮廷で生き延びてきたのだ。

2癖も3癖もあるやつらが揃っているのだ。

そいつらが暴走したら領地なんて一瞬でこの世から消え去る。

そして、彼らにとってこのボフミエなんて借りの地に過ぎないのだ。


「皆様方、冗談はそのあたりで」

クリスが皆の暴走を止める。

「いや、クリス様。こいつらをのさばらすのは、国の為にはなりませんが」

「そうだ。甘すぎる」

「ここは一罰百戒で、処刑を」

3人がクリスを見てそう言う。


「ヒェェェぇ」

領主たちは生きた心地がしなかった。

この暴走3皇太子はシャレにならずにやりかねない。


「わっはっはっはっ」

突然馬鹿笑いが謁見室の中に響き渡った。


「誰だ!」

オーウェンが叫ぶ。


「部下の事もよくよく御せない者が筆頭魔導師になっているなど笑止だな」

そう言い切ると倒れていたオットーがゆっくりと起き上がった。


「うそ?」

ジャンヌが呟いた。

あれだけの攻撃を受けてそう簡単には起き上がれるはずはないのだ。


「ふんっ。筆頭魔導師様はお心が広いのだよ。

3流、いや4流の人物しか部下にできない貴様が言ってよい事では無い」

オーウェンが言い切る。


「貴様。わしが誰か判るのか」

オットーが聞く。


「ふんっ。どのみちカーンとか言うのであろう」

馬鹿にしきってオーウェンが言う。


「ほう、よく判ったな。しかし、正式な名は魔王カーンだ」

男は名乗った。

アメリアは息を飲んだ。

やはり魔王が復活していたのだ。


「ほう、でそれがどうした」

オーウェンが言う。


「ほう、魔王と聞いても怯えないのか」


「お前馬鹿なのか。クリスに汚いと言われて空のかなたに投げ捨てられた石に封印されていた奴になぜ怯える」

ジャンヌが言う。


「何っ。投げ捨てられたのか。道理で痛かったと想った。まあ、おかげで封印が緩んだが」

カーンは怒って言う。


「クリス、どうしてそんな事したの?」

アメリアが怒って言う。

「何故その時に浄化しなかったのよ」

「えっ、いえそんな事した覚えは無くて」

アメリアに突っ込まれても、投げ捨てたのはクリスでなくてシャラザールだったから、クリスに覚えは当然無かった。そしてまた、魔王を封じ込めた石なんて浄化出来る者なんていなかったが。


「そうそう、クリスは悪い事無いよ。その時意識なかったから」

「意識無しに魔王の封印された石を投げ捨てるってどういう事よ。あなたたちも見ていたら止めなさいよ」

ジャンヌのフォローにアメリアが食いつく。

「まあまあ、アメリア。あれは不可抗力で誰も止められなかったから」

アレクも止めに入る。

シャラザールを止められる奴なんて絶対にいない。


「おい、お前ら。俺を無視して話すな」

カーンが切れて怒鳴った。


「何だ。貴様まだいたのか」

「そうだ。さっさと消えろ」

「いや、さっさと降伏しろ」

「おのれ、貴様ら。それが魔王カーン様に対する態度か」

3皇太子が好き勝手に言うのに対してカーンが更に切れた。


「何が魔王だ」

「足蹴にされたのに」

「所詮3流」

怖いもの知らずの3皇太子の言葉に対して他の者はど肝を抜かれていた。

魔王に対する態度ではない。



「おのれ貴様ら。許しを乞えば許してやったのに」

魔王に乗っ取られたオットーは腹を突き出した。


「このものもろとも吹き飛べ」


「危ない」

クリスの叫び声と共にオットーの腹が急激に膨らむ。

クリスがオットーめがけて手をかざす。

そして、すさまじい閃光と共に爆発音が響いた。



閃光が消えた後に伏せていた周りの領主たちがゆっくりと起き上がる。

周りを見渡しても目に見える被害はなかった。

しかし、唯一オットーの姿形はどこにも残っていなかった。


「はっはっはっはっ」

カーンの笑い声だけが響き渡る。


「筆頭魔導師の小娘の障壁で助けられたか」

カーンの声がする。


「ふんっ所詮3流」

「クリス様の方が力が強かったという事だな」

「さっさと降伏しろ」

3皇太子はビクともしていなかった。


「何。おのれ」

カーンが空間から攻撃しようとするがそれをクリスが障壁ではじき返す。


「おのれ。そこな筆頭魔導師よ。降伏せぬ限り、次々とそのオットーのように人間爆弾として貴様の国の民を改造して派遣してやるわ」

笑ったカーンの声だけが響く。


「嫌がる女子供を無理やり改造して貴様らの元に使わして…」

クリスの我慢の限界が来た。

「黙れ。もう許しません」

クリスが上に手を突き出した。

そして、そこからすさまじい閃光がほとばり出して天井を突き抜けると一気にモルロイの空まで貫き宮殿を直撃した。

「ギャー―――……」

すさまじい、カーンの悲鳴が響き渡り、そして何も聞こえなくなった。


閃光の消え去った後、天井には大きな穴が開いて、そこから初春の青空が見えていた。

第一ラウンドは魔王の勝ち。

第二ラウンドはクリスの勝ち。

今回の第三ラウンドはクリスの圧勝でした。

でも、しつこい魔王もまだまだ負けていません……





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ここまで読んで頂いてありがとうございます。
この話の

シリーズ一覧

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『シャラザール帝国』

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クリスとシャラザールのお話です。

この話が電子書籍化されました

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反逆の陰謀と共にそこにいたのは巨大な水竜で…… とても面白いのでぜひとも手にとって頂けたら嬉しいです。

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カートの正体がわかった時、リアは・・・・。
王立学園で繰り広げられるドタバタ恋愛・シンデレラ物語。

ネット小説大賞運営チーム様から感想いただきました。
ハッピーエンド目指して書いていくので読んで頂けると幸いです。
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