200話記念閑話 王妃にまたひどいうわさ話が増えました
149話の「暴風王女は母、王妃に自分の至らなさを思い知らされました」で食料援助は2000トンしか出せないと王妃がジャンヌに言いきって第153話 「暴風王女はクリスの父を責めました」でジャンヌが逆襲にでた後の話です。
今回は200話記念 閑話です。
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
「はあああ」
エリザベス王妃は王宮の王族の専用の食堂で今日も盛大なため息をついた。
「どうされたのですか。王妃様。ため息なんかつかれて」
侍女長のコマリーが聞く。
「私の噂の話よ。また、鬼王妃とか巷で言われているんでしょうね」
力なくエリザベスは言う。
ジャンヌに食糧援助を求められて2千トンしか出せないと言ったのだ。
「いえ、そのような事は…」
「皆、ケチ王妃とか、今までのいきさつでクリスが筆頭魔導師だからボフミエに意地悪をして食料を援助しなかったとか、噂しているでしょう」
コマリーが固まる。
「ほら、あなたたちもそう思っているんでしょう」
エリザベスが言う。
「まあ、せめてドラフォード並みに1万トンくらいは援助されても良かったのではないかと」
コマリーが困惑気味に言う。
「仕方が無いじゃない。陛下とミハイル卿が余り出せないって言うから」
「まあ、お二人が言われるなら」
「そもそも、陛下かミハイル卿が自らやればいいのよ。なんで私がやらないといけないのよ。
どう思う。コマリー」
「まあ、それはお二人とも娘には甘いですから」
「だから、私がやらされたんじゃない。それなのに周りも、娘の事を心配しない冷酷無情の王妃だとか酷すぎない?」
エリザベスのマシンガントークが響く。
コマリーはそれについていけない。
「王妃様。陛下は閣議で遅くなるので先に食事にしてくれとのことでした」
メリーが入り口から入って来て言う。
「判ったわ」
王妃が頷く。
そこへ料理長が大きな鍋を持ってきた。
王妃の前にお椀を置いて、そして白いものを注ぐ。
「えっ」
エリザベスはそれを見て驚いた。
どう見てもお粥だ。
そして、他に料理は無い。
「特別に作らせた王宮特別料理のお粥でございます」
料理長は頭を下げた。
「お粥?」
「はい。ボフミエ国は食糧事情が大変だとお伺いしました。
マーマレードも今年の食糧事情はあまり良くなく援助はあまりできないとお伺いいたしました。
宮殿の食事を倹約して、その分を援助に回して頂きますよう、よろしくお願いいたします。
これは宮殿にて働く者全ての総意でございます」
「私も?」
「当然でございます。王妃様もクリス様の事をいたくご心配していらっしゃると宮殿に働いている者一同も聞き及んでおります」
残念そうな王妃に慇懃無礼に料理長が答えた。
「判ったわ」
こうなっては仕方が無い。
エリザベスは諦めて食べだした。
娘のジャンヌも同じものを食べているのだ。これは仕方が無いだろう。
「どういう事」
しかし、次の瞬間、閣議の議決書を見て飛び上がった。
「ミハイル卿!、これはどういうことなの!」
閣議室のドアを乱暴に開けてエリザベス王妃が怒鳴り込んできた。
エリザベスの手には閣議の決定事項が握られていた。
「どういう事と言われますと」
エルンスト・ミハイルは首をかしげた。
「ボフミエに6万トン援助すると言う事よ」
エリザベスはエルンストの目の前に議決書を叩きつけた。
「元々、ジャンヌとの交渉は私がやれと言われたのよね。
陛下もミハイル卿もみんな逃げたじゃない。
私情が入るからやりたくないって」
一同を見回してエリザベスが言う。
それには誰一人として反論できなかった。
「私は元々嫌だったのよ。
それでなくてもクリスをいじめた意地悪姑とか、自分の子供ばかりに優しく嫁に厳しい鬼王妃とか言われているんだから。
でも、ここは心を鬼にしてやるしかないとジャンヌ相手にはっきり言える私がやるしかないってあなたもおっしゃいましたよね」
今度は国王に詰め寄る。
「いや、まあ」
国王も慌てる。
「なのに、何。やりたくないのに、あなたたちがやれって言うから鬼王妃の役をやったんじゃ無い。
食料不足だから食料分けて欲しいって実の娘に頼まれたのに、それ、断ったのよ。
鬼よね。悪魔よね。
でも、国の為に涙を呑んで言ったのよ。
なのに、何よ。私に断る事も無くて6万トンもの援助を勝手に決めて。
それなら、私にそれを言わせるのが筋じゃないの」
ダーン
思いっきり閣議室の机をエリザベスは叩いていた。
「しかし、2千トンと言うのは少なすぎませんか」
言わなくても良いのにエルンストが言う。
「はーん、あなたたちが5千トンくらいって言うから、それよりも少し少なく最初に言っただけじゃない。
もっともジャンヌがノルディンが5千トンしか出さないって言うからじゃあ妥当よねってそれで手を打ったけど。2千も5千も変わらないわよね。
それが何。いきなり6万トンってどういう事よ。
それもミハイル卿が勝手に決めてやるなら、元からそうすれば良かったじゃない」
王妃は言いたいことを言い切った。
「判りました。王妃様には大変ご迷惑をおかけいたしました。
このエルンスト・ミハイル。責任を取って今日限り職を辞します」
いきなり立ち上がってエルンストが言った。
「えっ、ちょっと待ってよ」
エリザベスは慌てた。
ここでミハイル卿が辞めると、また娘を想う内務卿をいじわる王妃が辞めさせたになる。
それよりも、内務卿が辞めるとこの前の婚約破棄事件のように、王宮の業務が完全に麻痺する。
「まて、ミハイル。貴様に止められると」
「そうです。業務が立ちいかなくなります」
国王が慌てて立ち上がり、周りの閣僚も慌てふためく。
「ジャンヌ皇太子殿下にこのままでは食料6万トンと引き換えにクリスをGAFAに取られると脅されて、私情を挟んでしまいました。
申し訳ありません。
この上は責任を取って辞めさせていただきます…」
それからやめると言い張るミハイル卿を押しとどめるのに、大変だった。
そして、次のような噂が王都中に広まった。
「エリザベス王妃は食糧援助をケチった挙句、それをしようとした内務卿を首にしようとして国王に止められた」
と。
それを聞いたエリザベスが切れたのはまた、言うまでも無かった。
皆様方のおかげでここまで来れました。
ありがとうございます。
次からは魔王との戦いの佳境に入ります。
ブックマーク 評価宜しくお願いいたします。








