戦神シャラザールは上げた振り上げた拳を振り下ろせませんでしたー聖女クリスに浄化伝説が追加されました
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ジャンヌは兵士たちの中に叩きつけられていた。
頬を押えて立ち上がる。
「何をするんですか!」
怒ってシャラザールに喰ってかかった。
「何をする?貴様こそ、黒死病が流行っているなどという嘘を何故ついた?」
「はっ?黒死病は流行っていますよ。現にクリスには黒斑が出ていましたよ」
「何を言う。余の目が節穴だというのか。
黒死病は何回も見たが、この村には菌が一片すら残っとらんわ」
「そんな馬鹿な。他の患者はどうした?」
ジャンヌが叫んだ。
「それが昨日から黒い斑点が無くなり、今ではクリス様だけになっておりました」
後ろに控えていたアデリナが応える。
「黒死病がそんなに簡単に治る訳は無かろう」
シャラザールがきっとアデリナを睨みつけて言う。
「ヒィィィ」
アデリナは気絶しそうになった。
「じゃあ体調の悪いのはクリスだけだったのか」
「多くの病に臥せっていらっしゃった方々はもう床を払っていらっしゃいます」
他の兵士が報告した。
「そんな事が考えられるのか?」
ジャンヌが言う。
「姉様は、皆の苦しみを自分が背負うと言っていましたけど」
ウィルが言う。
「クリスが黒死病の菌を全て自分に集めて他の者を治したというのか」
「そんな馬鹿な」
ジャンヌとアレクは信じられないという顔をした。
「うーむ。クリスの小娘が黒死病菌を浄化していたと申すのか」
忌々しそうにシャラザールが言った。
「そんな事が可能なのですか」
ジャンヌが聞く。
「あの頓珍漢な小娘ならやりかねまい」
苦虫を噛み締めたような顔をしてシャラザールが言った。
「そんな」
「馬鹿な」
ジャンヌとアレクは呆然とした。
「さすが聖女クリス様」
「さすが姉様」
「クリス様がいるところに不可能は無い」
アデリナらが皆クリスを褒めたたえる。
それがシャラザールは面白くない。
戦神のメンツが丸つぶれではないか。
「待て!」
シャラザールは病室を抜け出して逃げようとしていたモルロイの5人を目の前に転移させた。
「ヒィィィぃ」
男たちは怒りの形相の戦神に震えあがった。
「何を逃げようとしている?」
にやりとシャラザールは笑った。
「そのような。逃げ出そうとなど」
男たちは必死に誤魔化そうとする。
「歯を食いしばれ」
しかし、シャラザールが命令する。
「ヒィィィぃ」
男たちは真っ青になる。
シャラザールは5人に衝撃波を叩きつけた。
5人は病室の建物に叩きつけられて壁を突き破り、建物の中に突っ込んでいた。
「ジャンヌ。全然足りぬぞ。何だこのやるせなさは」
シャラザールの怒気が全員に襲い掛かる。
「これも貴様らの日頃の鍛錬が足りぬからだ!」
(鍛錬と何の関係があるのか?)
アレクは思ったが、利口にも今回は口には出さなかった。
しかし、その日丸一日徹底的にシャラザールにしごかれて兵士たちは全員足腰が立たなくなった事は言うまでも無かった。
クリスが黒死病を自ら浄化したとの報はあっという間に世界に広がった。
マーマレードやボフミエの人々はさすが聖女クリス様だと喜び、
ドラフォードの民は未来の王妃が聖女であるのを期待した。
そして、元凶のモルロイでは
「何だと。小娘が黒死病を自ら浄化しただと」
カーンは怒り心頭だった。
「はっ、そのような噂が世界に広がっております」
「おのれ小娘め。小癪な事を」
せっかく小娘を黒死病で死に至らしめようとしたのに、逆に黒死病を浄化されて聖女伝説に更に1つの浄化伝説を追加されるなど、何のために苦労して黒死病を広めたのか。
クリスの人気を高める結果になってカーンは歯ぎしりした。
「おのれ小娘め。絶対に許さん」
カーンは腕の剣を叩き折っていた。
コロナもクリスに浄化してもらいたい……








