魔王にジャスティンは渾身の自爆攻撃を放ちました
ジャスティンはゆっくりと立ち上がる。
「さすがジャスティン。正義の騎士と言われるだけはある」
男は笑って言った。
「貴様何奴だ」
ジャスティンは男を睨みつけた。
「お初にお目にかかる。私はカーン・ハン」
カーンはにやりと笑って言った。
「貴様がモルロイの弑逆者、暴虐王カーン・ハンか」
王子だったカーンが反乱を起こして国王と王妃を弑逆。反対する家臣千名程を虐殺して実権を握ったと伝えられていた。
「ほう、よく知っているな」
「その暴虐王がボフミエになんのようだ」
「筆頭魔導師殿にご挨拶に来ただけだ。いつまでもおままごとをしている暇は無いぞと」
「何!クリス様は貴様など相手にもされないわ」
ジャスティンが言い切る。
「さあ、それはどうかな。今回は小手調べだ。貴様らがどれだけ我々の相手が出来るか見せてもらおう」
カーンは連れて来た10名の部下に合図を送る。
10名は一斉に皆に切りかかった。
試験生たちは悲鳴を上げて逃げ惑う。
その彼らに、次々に切りつけた。
ロルフはこのカーンと言う男を一瞥して驚いていた。
この男の魔力量がクリスと同じで計りきれないのだ。
「ジャスティン様。こいつの魔力量はクリス様並みだ」
「何だと」
そのジャスティンにカーンが再度衝撃波を放つ。
ジャスティンは障壁で防ごうとしたが、一瞬でその障壁が破壊されて再びジャスティンは地面に叩きつけられていた。
「ジャスティン様」
ニーナが叫んでいた。
男の一人がそのニーナをめがけて衝撃波を放つ。
思わずビアンカがバリアを張る。
命を守るために、これだけは母から徹底的にしごかれたのだ。
「ほう。そこの女なかなかやるな。ではこれでどうだ」
カーンが衝撃波を放った。
ビアンカは力の強さから
防げないと思う。
とっさに反射を張る。
それも拡散させた。
近くにいた、モルロイの魔術師がその反射した衝撃波を喰らってはじき飛ぶ。
「ほう。反射か。でも次は保つかな」
カーンは魔力を手に貯める。そして、それをまさにビアンカに放とうとした時だ。
「何!」
その瞬間真横から渾身の力を込めた。ジャスティンの衝撃波がカーンに襲い掛かった。
一瞬カーンの対応が遅れる。
が手の魔力を捨てて障壁を築こうとするが間に合わない。
カーンは攻撃を受けた、そのすぐ後にジャスティンが剣を抜いて突っ込んできた。
二人がぶつかる。
すさまじい爆発が起こった。
しかし、爆発の中、襤褸布のようにジャスティンが弾き飛ばされるのが見えた。
そして、爆風が収まった後にはカーンが立っていた。
「まずい」
ロルフはジャスティンがやられたのを見て、危機的状況に陥ったのが判った。
この中で一番魔力が強いのがジャスティンだ。
そのジャスティンが負けた今はもう対抗する手段は無かった。
ここには3千人の若者がいた。
下手したら全員虐殺される。
10人の手下は5人になっていたが、カーン1人で虐殺には十分だろう。
逃がそうにもその暇は無いだろう。
しかし、カーンがぐらりとした。
「ふんっジャスティンめ。自ら自爆して私を攻撃するとは…」
カーンがにやりとした。
「久しぶりの戦場に少し油断したか」
カーンは自嘲気味に言う。
「まあ今回は小手先調べのようなものだ。多少の訓練にはなったか」
カーンは自らを慰めるように言う。
「その正義の騎士の誠意に応えて、今回は引いてやろう。
そこの女。筆頭魔導師に次は無いと伝えておけ」
カーンは笑うと、手を挙げた。
モルロイの一同が闇に包まれて見えなくなる。
その闇が晴れた後にはうめき声をあげて横たわる受験生や兵士たちで溢れていた。








