魔王襲来1
少し遅くなってすいません。
遂に魔王襲来です
ボフミエの北の街カロエ。魔導学園の途中入学生を審査するためにロルフ・ノーマンは来ていた。
15歳から30歳までの若者3千人が集められていた。
12歳から14歳までが義務教育として読み書き算術から魔導まで基礎的な事を学ぶ事は既に決まっており、
大量の教師を育成することが必須となっており、15歳から17歳までの先生育成コースが国都にできており、その選抜も兼ねていた。
しかし、1次選抜で多くの優秀な学生は選抜しつくしており、中々見つけにくいのが現状であった。
選抜要因に選ばれて各地を同行しているが、ロルフには中々魔導学園クラスの人物を見つけ出せないでいた。
「今度こそは選抜に選ばれるんだから」
1度目は落とされたニーナは自信にあふれていた。
村では炎の魔法をニーナほど使える者はいなかった。
一回目は選ばれなかったが、今度こそは選ばれるはずだった。
その元気はつらつ元気の素のニーナの陰にビアンカ・ハイニッヒは隠れていた。
幼馴染のニーナは目立つのが好きだったが、ビアンカは苦手だった。
父も母も魔術は使えたが、侵略戦を仕掛けようとするボフミエ前皇帝からは何かと理由をつけてその目からは逃れていた。
ビアンカも母や父を見ていたので、出来る限り目だたないようにしていた。
魔術師にならされて戦場に出ていくのが嫌なので魔術も母からはほとんど教えてもらっていなかった。
また魔術にも興味が無かった。
そもそもビアンカは目立つことは嫌いだ。
本は読むのが好きだったが、ここのところの戦乱続きで本などしばらく読めていなかった。
今回の魔導学園の応募も本来は受けたくなかった。
皇帝が筆頭魔導師様主導に変わったところで所詮は天上の話。
下々の者は関係なかったし、かかわりたいとも思っていなかった。
今回は全員が強制参加という事で仕方なしに出てきただけだった。
試験は50分間の筆記試験と魔術の実技のみ。
ビアンカは適当に過ごして目立たないつもりだった。
しかし、魔力の大きさが判るロルフにあっさり見つかってしまった。
ロルフは驚いた。
その少女が自分並みの魔力を持つている事に。
ニーナは試験管の男が自分を見ているのに気付いた。
(かわいいからってそんなに見つめないで欲しいな)
ニーナは頓珍漢な事を思っていた。
しかし、ロルフはその後ろのビアンカを見ていたのだ。
ニーナは魔術の呪文を唱えた。
「出でよ炎よ」
小さい火の玉がゆっくり出て的に命中する。
今までで一番大きな炎の玉だった。
受かった。ニーナはそう思った。
ニーナを見ていた男が正義の騎士と何か話している。
ニーナは受かった事を確信した。
次のビアンカは魔術も適当に誤魔化そうとした。
「出でよ炎よ」
小さい球が出ようとして消える。
「ロルフ。本当にあの子なのか」
ロルフが言った合格生の実技を見てジャスティンはロルフに聞く。
筆記試験を見ても平均点しか取れていないみたいだし、自己申告では魔術はほとんど使えないとある。
「魔力量はこの中でもずば抜けて大きいです。
あれは誤魔化しているか全く習っていないかどちらかです。
全く習っていないでこの魔力量なら訓練すれば学園でベスト5くらいにはなるかと」
「そうか。さすがロルフ。私一人だと有為な人材を見いだせないところだったな」
ジャスティンがロルフを褒める。
「いや、やめて下さい。正義の騎士に褒められるなんて」
「何を恥ずかしがることがある。私たちに足らない分を補ってくれる能力だ。
大いに自慢してよいものを」
笑ってジャスティンが言う。
「大幹部に褒められるとその分仕事が増えていくんですけど…」
ロルフが文句を言う。
学園のテストに生徒の選抜、果ては魔導部隊の候補者の選抜とロルフはこの1ヶ月ほとんど休みなしだった。
「まあ、そう言うな。私もこの1年間休みはほとんど無いぞ」
ジャスティンが笑って言った。
「本当にこき使ってくれますよね。この国は」
「団長。全員試験は終わりました」
試験管の一人がジャスティンに言う。
「ロルフ、発表を頼む」
ジャスティンがロルフに振った。
「えっ」
一瞬嫌そうな顔をするがジャスティンの笑っている目元を見て諦める。
「皆さん。今回はご苦労様。魔導学園の合格者が今回は一人出た」
(やった。私だ)
ニーナは小躍りして喜んだ。
「そこの君」
「はいっ」
ニーナが喜んで一歩前に出る。
遂に受かったんだ。ニーナはうれし涙にくれていた。
「いや、君じゃ無くてその後ろの隠れている君だ。ビアンカ・ハイニッヒさん。」
「えっ」
思わずニーナの陰に隠れたビアンカは驚いた。
試験もいい加減に解いたし、魔術の実技もいい加減にやった。
何故選ばれたのかビアンカには判らなかった。
ロルフが魔力量の大小を判断できるなんて思ってもいなかった。
「なんで私じゃ無くてビアンカ何ですか」
信じられなくてニーナが言った。
魔術実技は絶対にビアンカよりもできたはずだった。
「すまない。総合力で判断した。君はまた来年頑張って欲しい」
ジャスティンが言う。
ニーナは正義の騎士ジャスティンに言われたのなら、諦めはつかないが、それ以上の反論も出来なかった。
「ビアンカ、どさくさに紛れて逃げないように」
ロルフがかがんで逃げようとしたビアンカに言う。
ビアンカは舌打ちした。
何故だ。絶対に目立っていないのに、ニーナの方が圧倒的に目立っていたのに…
しかし、次の瞬間巨大な魔力反応を感じた。
ジャスティンとロルフも反応する。
出てきた男は転移完了する前からジャスティンに剣で切りかかっていた。
ジャスティンは次の瞬間に襤褸のように弾き飛ばされていた。
ジャスティンの運命は…
3年前のビアンカの様子はこちら
「赤い死神の大侵攻作戦で王国を蹂躙します…しかし、その前に無敵の戦神が立ち塞がりました」
戦神は奴隷売買をしていた豚伯爵を城もろとも火炙りにしました。
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