カーンは逆襲して国王と王妃を一刀両断しました
一方後宮では王妃のオユンゲレルが今か今かと吉報を待っていた。
「国王様。最近、カーン様の目が怖いのです」
国王のワン・ハーンにしなだれかかって言う。
40超えたと言えどもまだ若々しさは保っており、モルロイ一の美貌と言われた容姿はまだそんなに衰えていなかった。魔術で若さを保っているとの噂もあり妖怪といって恐れる者もいた。
「カーンなど何ほどの事があろうか。お主が恐れる事などあろうはずは無かろう」
国王は笑って言った。
「しかし、ジョチ様らと最近夜な夜な集まって何やら謀をしていらっしゃるようなののです」
「ジョチらとか」
国王はカーンの亡き母の弟がジョチだったと思い出した。
「ジョチか地方の領主であるが、確かにジョチと組んで何かしでかすとすると看過できないことになるやもしれんな」
国王は腕を組んだ。
それを見てアラクシはため息をついた。
あまりにもわざとらしいではないか。
口には出しては話さなかったが、あまりにも単純すぎる罠だ。
これを罠と言うのか。
カーンをはめるように王妃に言われて始めたが、こんな簡単に引っかかるなど自分がわざわざ考える必要があるのか。
こんな事を考えた王妃も王妃だが、王妃が口だけで言う事をうのみにする王も王だ。
こんな単細胞で国が保つのか。
アラクシは自分がほとんど何も筋書きを描く前に謀が進んでいくのが信じられなかった。
自分のいる意味が無いと。
「大変でございます」
そこへ兵士が飛び込んできた。
「何事だ」
「カーン王子謀反です」
「何だと」
国王は驚いた。
「剣を抜き放って王宮に入ろうとされたので止めようとしたところで兵士に切りつけられました。
陛下の安寧を惑わす王妃と奸臣を切ると叫んで軍を率いて突入されたので応戦しております」
「何、直ちに全軍応戦。カーンを捕えよ。ついでにカーンの部下共もひっとらえよ」
国王は全て信じて宰相のアクラシに命じていた。
「御意」
アクラシは左右に合図する。
それを王妃は陰でにやりと笑ってみていた。
やっと第一王子を追い出せるのだ。
我が子が皇太子となるという苦節20年超の念願が遂にかなう時が来たのだ。
アクラシは三文芝居に苦笑しつつも既に王子の命は無いだろうと予想した。
しかし、いくら待ってもカーン討伐完了の知らせは入って来なかった。
カーンは己の得た力に驚いた。
一瞬にして黒服どもを殲滅出来たのだ。
信じられなかった。
おのれの体に黒い魔力が湧き上がってくるのが感じられた。
王宮に向けてカーンは駆けだした。
「いたぞ」
「逆臣カーンだ」
そのカーンを見つけて兵士たちが取り囲む。
「何が逆心カーンだ。王子に剣を向けるとは貴様等こそ、逆臣。
逆賊王妃とテムゲに組する者どもは許さん」
カーンは剣を振りぬいた。
目の前にいた近衛の司令官が一刀両断される。
「余に逆らうものは逆賊として成敗するぞ。そこをどけ」
衝撃波を王宮に向けて放つ。
間にいた者どもは一瞬で両端に弾き飛ばされていた。
抜剣したままカーンは駆けだした。
その怒りに燃えた目を見て兵士たちは思わず道をあける。
宮殿が衝撃波で大きく揺れた。
「キャー―――」
女官達が騒ぐ。
「どうしたのだ」
国王は周りに聞く。
しかし、周りも答えられない。
目の前の扉が蹴開けられていた。
扉が吹き飛ぶ。控えていた兵士たちが弾き飛ばされる。
そして真っ黒になったカーンが飛び込んできた。
「逆賊オユンゲレル、成敗」
叫んでカーンはオユンゲレルの胸元に飛び込む。
オユンゲレルは驚愕に顔をゆがめるしかできなかった。
国王ワン・ハンも同じだった。
カーンは一刀両断で一瞬にして王妃とその後ろの国王を処断していた。
周りの兵士や高官は呆然とそれを見ているしかできなかった。
次はボフミエに戻ります








