領地の館で母と弟に呆れられました
本日3回目の更新です。
皆さんブックマーク誤字脱字修正ありがとうございます。
頑張って更新していきます
「キャロル様。相変わらず強引なんだから」
シャーロットはぶつぶつ言いながらクリスに向きなおった。
「クリスちゃん。あなたは何でも簡単に頷いちゃだめよ」
「ごめんなさい。お母様。
でも、王妃様からお誘い頂いたのに、無碍なく断るなんてできなくて。
それに大国ドラフォードにも一度行ってみたいなって思ってたので」
純真な笑顔で言われれば、それ以上きついことも言えない。
「あなた、オーウェン様に誘われたりしたの?」
シャーロットは肝心なことを確認する。
「まさか。私は先日までは皇太子殿下の婚約者でしたし、
異性とはあまり話してはいけないと考えていたので、ほとんどお話したこともありませんでした。
図書館等ではよくお見かけしましたが、お話しすることはほとんど無くて」
無邪気にクリスは答える。
「でも先日皆の前で助けて頂いたんでしょ」
シャーロットはその理由が知りたかった。
「はい。その前に一緒に踊って頂いて」
「えっあなたオーウェン様と踊ったの?」
シャーロットにとってこれも衝撃だった。
大国ドラフォード王国の皇太子。まあこの国の皇太子の婚約者だから踊ること自体はあり得る事だったが。
「はい。いけませんでした?」
「いいえ、そんなことはありませんよ。
踊るくらいは。2回は踊っていないんでしょ」
「はい。でもお世辞で2回踊りたいとは言われましたけど」
ニコッとしてクリスは言った。
「王太子殿下や家族以外と踊ったのは久しぶりで
王太子殿下はいつも無言なんですけど、
殿下は良くお話し頂いて楽しかったです」
「えっ?学園のパーティはいつもあるわよね。
なんで他の人と踊らなかったの?」
シャーロットには信じられなかった。
学園のパーティー等で徐々に社交になれていき
18過ぎて社交にデビューするのが基本だと思っていた。
「やはりいろんな人と交流して踊ったりしなければいけないですよね」
不審そうにクリスは頷いた。
「でも、王妃様からは社交の事はまたおいおい教えるから、
しばらくは他の人とは踊る必要はないと。」
-王妃様は何純粋培養に囲っているのよ
そんなことしたらすぐに甘い言葉に騙されちゃうじゃない。-
シャーロットはいない王妃に独り文句を言った。
「それから何か言われた?」
「いきなり王太子殿下に婚約破棄されて、
呆然としていたら怒ったウィルが殿下を攻撃しようとしたところで」
「えっ―ウィル、あなた殿下を攻撃しようとしたの。
脅しただけよね」
今までソファに横になっていたウィルに向かってシャーロットが叫ぶ。
はっきり言ってこの子たちは何をしているんだ。
「母上。お言葉ですが、私は騎士ですから。
守る姉上が侮辱されたら剣にかけるのは当然の話です。
王女殿下よりもたとえ皇太子でもその時は叩っ切るように
命じられております」
「はっ、あなたの方が圧倒的に皇太子殿下より強いでしょ。」
「そこは当然手加減するつもりでしたが。」
「当たり前でしょ。
嚇すだけで相手がひれ伏すようにもっと訓練なさい」
「えっ。そんな無茶な」
ウィルは文句を言う。
「侯爵家をつぶすつもり?
あなたは嫡男なのよ。
あなたは王族では無いのだから、何かあったらまずいでしょ。
王女殿下も司法関係は弱いでしょうから、フォローはしていただきにくいわよ」
「うっ」
ウィルは反論できなかった。
絶対にあの司法長官に王女が勝てるとは思っていなかった。
「でもウィルありがとう。
あなたが罰せられるなら、私が代わりに罰を受けるわ」
横からクリスが助け舟を出す。
「そんな、姉上は何も悪くありません。
あのボケ王子が」
「ああ、不敬な事を平気で言わない」
シャーロットはウィルを嗜めた。
でもこのままでは最後まで話がいかない。
「何もなかったんだからとりあえず良いわ。
今後の課題にしなさい。
で、そこでどうなったの?」
「オーウェン様が」
「えっいきなり名前呼びなの。さっきも思ったけれど」
クリスの言葉にシャーロットは過剰に反応した。
「お母様もそう呼ばれたではありませんか。」
クリスが反論する。
「私は小さい時から知り合いだし、」
「私もそうなんでしょ。
昔よく遊んだって。その時はオーウェンって発音できなくてオウって言ってたって」
「よく話しているじゃない」
シャーロットは揚げ足を取るように言う。
「踊った時に話しただけです。
それまで全く忘れておりました」
ブスっとしてクリスが言う。
「で、オーウェン様はウィルを止めて頂いたのよね」
「はい。そのあと皇太子殿下に対して私の言いたいことを代わって言って頂きました。
私の努力なんてまだまだ足りないと思うんですけど、私が努力しているとほめて頂きました。
あまり人に認めてもらったことなくて、本当にうれしかったです」
クリスは本当にうれしそうに話した。
「えっ姉様がいつも努力しているのは有名ですよ。
学園にいる僕の友達からもよく聞きますし」
ウィルが驚いて口をはさむ。
「本当に?
皇太子殿下からは氷のように冷たい女だとか、
頭は良いが出来ない者の事など慮った事のない傲慢な女だとかしか
言われたことしかなかったし」
「あんにゃろう。今すぐ叩き切ってきます。」
立ち上がって転移しようとしたウィルを
「待ちなさい。これ以上ややこしくしないで」
シャーロットが注意する。
「それだけ?」
「婚約破棄をされた私をかばって頂いている時に
ジャンヌお姉さまが転移されてきて皇太子殿下を蹴られて、
私も言いたいことがあったので
すいません。不敬だとは今は思いますが、その時は我慢できなくて
言いたいことを言って
皇太子殿下を叩いてしまいました。」
途中で謝りながらクリスが言う。
「まあそうだけど、みんなの前であれだけやられたら
私でもひっぱたくわよ。
王弟殿下が何か言っていたみたいだけど、
それで何かあったら国民が黙っていないから大丈夫よ」
「その前に私が叩っ切ります」
「あなたはややこしくなるから静かにしていなさい」
シャーロットが注意する。
近衛師団も戦慄するウィルだが母には頭が上がらなかった。
「でも変ね。キャロル様の話だともっと具体的な話がオーウェン様からあったと思うのだけれど」
「途中で王女殿下に邪魔されましたけど
ドラフォード殿下は姉上が好きだと告白されようとしたと」
ウィルが言う。
「えっ本当なのウィル」
シャーロットはまじまじとウィルとクリスを見比べた。
「まさか。オーウェン様は私をかばうために言おうとして頂けただけよ」
クリスが否定する。
「まあ、姉様がそう思われるならその方が僕としてもうれしいですし、良いですけど。」
ウィルが喜んで言う。
「お母様。それよりも少し遅くなりましたが助けて頂いた方々にお礼のお手紙出そうと思うのですけど。」
「そうね。すぐにした方が良いわ」
クリスが立ち上がる。
「で、本当はどうなの」
クリスが部屋からいなくなるとウィルに聞く。
「完全に結婚の申し込みしようとしたと思いますよ。
あの前振りは。
本来は国王陛下から父に話を通さなければならないとかおっしゃってましたから」
「えっあんな人前で婚約破棄された後に?」
母が固まる。
「よく判んないですけど、最後は姉様の前で跪いていらっしゃいましたから」
「大国の王太子を跪かせたの!」
「そうですよ。なのに姉様の感じでは、かばってもらっただけですから」
ありえないという顔でウィルは言った。
「えっじゃあ周りもそれが判ったの?」
「姉様以外はみんなそう思ったと思いますよ。
おそらく今頃は全ての貴族は知っているかと。
父上とかもご存知かと思いますが」
「だからキャロライン様にあんなこと言われたんだ」
「行く所なかったらうちに御嫁にいらっしゃいって言うあれでしょう」
ウィルが翻訳して言う。
「そうよね。普通判るわよね」
シャーロットはウイルが常識があってホッとする。
「姉様。そのあたり本当に疎いですから。
パーティの時もみんな必死にほめているのに
お世辞を言われているって感じで全然響かないですし。
僕なんて正装した姉様見て思わず、女神みたいですって言ったんです。
人に対して容姿を褒めた事無かったのに、
初めてそう思ったんですよ。それでぽろっと言ったら
ウィルもお上手が言えるようになったのねって。
姉様鈍すぎですよね」
ウィルは呆れた。
「弟のあなたが言ってもなとは思うけど。
じゃあ好意を匂わされても、まったく響かないわよね」
「そう思いますよ。
はっきり告白されても理解していないですから」
二人はため息をついた。








