クリスと大国皇太子はGAFAとの交渉に失敗しました
ここまで、食料手配にはあまり成功しません。
クリスもオーウェンも、暴風王女も赤い死神も
世間の風は冷たく、おままごと政権は危機に。
ボフミエの地は餓死者で溢れかえるのか
明日の20時からクリスらの反撃が始まります。
結局当初の目論見ではノルディン、マーマレード、ドラフォードで2.5万トン手に入るはずが、1.7万トンしか手に入らなかった。次の穀物が収穫される9月までに、民が飢えないためには7万トンが必要だった。残り5.3万トン。
どうしても手に入れないといけなかった。
何としてでも、GAFAが押さえている4万トンの米は手に入れたい。
クリスはオーウェンとGAFAとの交渉に当たることにした。
真っ先に呼んだのはドラフォード出身のアマダだ。
ドラフォードの皇太后が先代と親しかったらしく、オーウェンも現会長とは面識があった。
まだ、アマダならば何とかなるはずだ。
オーウェンはそう考えて真っ先に呼んだのだった。
アマダが頷けば他の3商店も頷いてくれるに違いないと。
ボフミエ地区の統括責任者としてブライカーと言うひと癖もふた癖もありそうな男がやってきた。
「これはこれは筆頭魔導師様と内務卿自ら対応いただけるとは光栄の極みですな」
ブライカーは商人らしく頭を下げながら言った。
「お金のご返済の算段が出来ましたので?」
しらじらしく聞いてくる。
「ブライカー殿。実は折り入って相談があるのだが」
オーウェンが言いにくそうに言う。
「何でございましょう。内務卿のお願いは出来る限りお伺いするように現会長からは申し付かっております」
ブライカーは下手に出た。
オーウェンはホッとした。
「そうかそれはありがたい。出来れば担保にしている米1万トンをとりあえず、返して頂きたいのだが」
「それは金貨25万枚のご返済の算段が付きましたので?」
また、ブライカーが尋ねる。
「そこはまだ、なかなか難しいのだ。何しろ国も出来たばかり、本来ならば前帝国の借財。我々は返す必要は無いというものもいるのでな」
思わず、オーウェンが漏らしてしまう。
「ドラフォード様。そう言う事があっては困るのでお金を貸す時に担保を取らしてもらったのですが」
「だから、お金の返済をしないとは言っていない。少し猶予してほしい」
「それでは担保をお返しするわけにはいきませんな」
取りつく島もなくブライカーは言った。
「このままでは民が飢えてしまう。大商店となられたアマダとしても民を飢えさすのは本望では無かろう」
「確かにそれはその通りです。しかし、そこは内務卿様が何とかされる領域では。
私どもはボランティアでやっているわけではないのです。そんな事をすれば今度は我々が飢えてしまいます」
「半年間。米を貸してはくれまいか。半年後には必ず返す」
「しかし、25万枚。返す当てはありますまい。そこで踏み倒されては我々共も商売が上がったりでして」
「そこを何とかなりませんか」
クリスが頭を下げる。
「しかし、担保はどうされます。帝都の土地でも担保に入れられますか」
「さすがにそれは難しいですね」
「ならばクリス様ご自身を担保に入れられますか」
笑ってブライカーは言った。
「ブライカー。何を言う」
オーウェンは切れて立ち上がった。
こいつ未来のドラフォードの妃になんという不敬を働くのだ。
「6万トン貸して頂けるなら私自身が担保になりましょう」
「何を言うクリス。そんなことが許される訳ないだろう」
慌ててオーウェンがクリスの肩を掴んでいった。
「オーウェン様。民が飢えるのが防げるなら私が担保になるくらいなんでもありません」
「はああ、そんなの絶対に許さない」
オーウェンは切れていた。
「お二方とも何をおっしゃっていらっしゃるのですか。冗談ですよ。
それにクリス様には米1万トンの価値もございますまい」
笑ってブライカーは言った。
「貴様!」
思わず剣の柄に手をかけたオーウェンを必死にクリスは止めた。
後ろに控えていたアルバートとメイも思わず柄に手をかけていたのは言うまでも無かったが。
ほうほうの体で帰って行ったブライカーだったが、オーウェンは二度とアマダは使うものかと心に決めたのだったが。
残りのグルップル、ファス2商店も同じようなものだった。
米を買い取る場合は1万トンあたり25万枚の金貨がいるとみんな言っていた。
「25万枚だと。ふざけたこと言いやがって普通は高くても金貨10万枚だ。
担保と同じ値段にしやがって許せない」
オーウェンはいきり立っていた。
最後のアントは会長のバロン・アント自らが足を運んできた。
「これはこれはアント会長自らこのような弱小国にお足をお運び頂けるとは」
嫌味たっぷりにオーウェンは迎え入れる。
「何をおっしゃいます。ドラフォードの皇太子殿下とミハイル筆頭魔導師様にお会いできる聞いて喜んで参った次第でして」
「ふんっ。どのみち青二才のお手並み拝見とバカにしに来たの間違いではないのか」
もう飾るのはやめてオーウェンは素で話していた。
「相当、他の店にいじめられたみたいですな」
笑ってアントは言った。
そのアントをオーウェンは白い目で見る。
「アント様も1万トンは貸して頂けませんか」
クリスがオーウェンを見て聞いた。
どのみち断られるなら早い方が良いだろう。
そうあきらめに似た気持ちで聞くと
「いえ、そこまで言われたら我々にも矜持があります」
アントが言った。
「お貸し下さるのですか」
クリスが食いつく。
「そうですな。1万トンと言わず、6万トン何とかお貸しいたしましょう」
「ありがとうございます」
思わずクリスは礼を言っていた。
しかし、オーウェンは胡散臭そうにアントを見ていた。
「で代わりに何を求める」
冷ややかにオーウェンが言う。
「クリス様を担保に」
「私は喜んで」
「許さん」
オーウェンがクリスの言葉をぶった切った。
「オーウェン様。6万トンあれば食糧問題が片付きます」
「クリス。そんな事俺が許せるわけないだろう」
オーウェンが言い切る。
「まあ今すぐには無理でしょう。じっくりとお考え下さい」
不気味な笑いをしてアントは帰って行った。
そのアントに対してオーウェンは必ず滅ぼしてやると心に誓った。








