領地の館に大国の皇太子のお母様からお電話いただきました
本日2回目です。
次は22時の予定です。
クリスは会場から出るとそのまま母のいる王都郊外の領地へウィルに転移で連れて行ってもらう事にした。
領地の邸宅に着いた時は夜中だった。
強引にウィルに魔法で扉を開けてもらう。
慌てて駆けてきた使用人に抱きかかえられるように邸宅の中に案内される。
「お母様!」
寝巻を着て出てきた母の胸に飛び込んでいた。
クリスは母の胸の中で泣き崩れた
「どうしたの?」
突然帰ってきた娘にシャーロットは驚いたが、優しく迎えた。
婚約破棄を皆の前でされたこと。
そこで今までの不満全てぶちまけた事。
ジャンヌにも啖呵切った事。
妃教育の不満もぶちまけた事。
泣きながら話した。
最後は皇太子に鉄拳制裁したことまで。
「もう恥ずかしくてこの国で生きていけません。
下手したら皇太子殿下を殴った事で処罰されるかもしれないの。」
「まあ大丈夫よ。クリス。
ごめんなさいね。今まで辛いこと気づいてあげられなくて。
でもここまで本当によく頑張ったわ」
シャーロットはクリスの頭をなでながら言った。
「でも本当に思いっきり皇太子殿下の事殴ってしまったの」
クリスは泣きながら言う。
「大丈夫よ。国王陛下も王妃様もそんなこと気にされないわ。
それにもし気にされてもお父様がいる限り何もできないわよ。
今お父様がいなくなったらこの国まわって行かなくなるもの」
笑ってシャーロットは言った。
「それより、お腹減っていない? パーティではほとんど食べられなかったでしょ」
「うん、お腹ペコペコ」
子供みたいな姉にウィルは驚いたが、とりあえず姉が落ち着いてほっとした。
その日は久しぶりにクリスはゆっくり眠った。
翌日には慌てた父のエルンスト・ミハイル侯爵が帰って来て久しぶりに水入らずの生活を送れてクリスは幸せだった。
シャーロットには王妃からも大変恐縮した謝罪の電話がかかってきたが、まだ落ち着いていないクリスにはつながなかった。
そんな中シャーロット用の個人魔導電話がつながった。
「王妃様。お久しぶりです。」
母の声を聞いて居間で母に甘えていたクリスはびくっとした。
よく考えてみるとお妃様に対して言い過ぎたと反省していたのだ。
良くしてもらっていたことは事実なのだ。
「えっクリスですか。
今横にいますけど。」
クリスは必死に手を振っていないふりをしようとしたが、
「大丈夫よ」
母が画面を傾ける。
慌てて見ると初めて見る人だった。
でもどこか王妃に似ていた。
「クリス嬢、お久しぶりね。こんな小さな子だったのに。
本当にきれいになって。」
感激して女性は言った。
「あの」
クリスは戸惑った。
「ああごめんなさいね。挨拶が遅れて。
キャロライン・ドラフォードです。
エリザベスの姉であなたのお母様の昔の知り合いよ」
、
「ドラフォード王妃様。失礼いたしました。
クリスティーナ・ミハイルと申します」
慌てて立ち上がると挨拶する。
「もう、そんなにかしこまらないでよ
昔は王宮でよく遊んであげたのに。
しばらくご無沙汰ね」
「すみません。全然覚えていなくて」
恐縮してクリスは言った。
「本当に残念だわ。息子の事は覚えていてくれたのに。」
悪戯っぽくキャロルは言う。
「えっ息子さんって」
クリスは固まった。そしてオーウェンがドラフォードの皇太子であった事を思い出した。
「すいません。オーウェン様のお母様なんですね」
真っ赤になってクリスは言った。
「息子はオウって覚えてくれていたって喜んでいたけど。
失礼な事されなかった?」
「失礼な事なんて。
皇太子殿下には、先日は本当に助けて頂きありがとうございました。
本来ならきちんとお礼言わないといけないのに、
何も言わずに失礼して本当に申し訳ありません。」
「ううん。良いのよ。
肝心なことは姪に邪魔されたって怒っていたけど
あんな時にそんなこと言うなんて非常識よね」
王妃は笑って言う。
「えっ。いえ、あの困った時に本当にかばって頂いて、
本当にうれしかったです。」
「あれっ、やっぱりきちんと伝わっていないわね。」
王妃は首をかしげた。
「えっ。何か変なこと言いました?」
慌ててクリスは聞く。
「ううん。気にしないで。
余計なこと言ったら息子に怒られるから。
それと出来たらエリザベスの事は許してあげて。
本当に悲しいほど反省していたから」
「いえ、私こそその時は無我夢中で大変な事言って王妃様のせいにしてしまいました。
私が悪かったのに」
「何言っているの。悪いのはエリザベスよ
クリスちゃんを囲い込んじゃって
オーウェンもクリスちゃんとはあんまりしゃべらないで。
エドが振られるからって言われたそうよ」
「いえ、振られたのは私の方ですから。」
「あなたを振るなんて信じられないわね。
エリザベスも怒り心頭で息子を許さないって。
甥がひどい事してごめんなさいね。
謝っても許してもらえないと思うけど。」
「いえ、王妃様に謝って頂けるなどとんでもございません。」
クリスは首を振った。
「でもあんなことあったら後が大変でしょ。
行く所なかったらいつでもうちにいらっしゃいね。
私はエリザベスにはがさつでいい加減って言われるけど、
堅苦しく無いし、お勧めよ。」
「はい、ありがとうございます。
行く所なかったらよろしくお願いいたします。」
「ちょっとクリス。そこは即答しない。
王妃様も、冗談でもそんなこと言わないでください。」
シャーロットは驚いて間に入った。
「あら、冗談ではないのよ。」
まじめな顔でキャロルは応えた。
「でもこれ以上言ったら本当に息子に怒られてしまうわ。
だから内緒ね」
キャロラインはウィンクした。
「そうそう、クリスちゃん。忘れるところだったわ
肝心の事を。」
キャロルは笑って続けた。
「あなたしばらく周りがうるさいでしょ。
良かったらウィルちゃん連れて遊びに来ない?。気分転換にもなると思うけど。」
「ウィルですか」
「そう、あなた1人だと心配でしょ。
でも、あなたのところの近衛師団相手に喧嘩売ってびくとも引き下がらなかった
ウイルちゃんがいたら安心じゃない。
我が家の娘どもも是非ともお会いしたいとか言っているのよ。
もっとも一番のお目当てはあなただけど。
シャーロットも良ければ一緒に」
クリスの母に最後はふる。
「王妃様。私は無理ですわ。領内の事もありますし。」
シャーロットは断った。
「そう?久しぶりに会いたいと思ったのだけど。
たまには気分転換も必要よ。
今は考えられないと思うけど。」
キャロルは畳みかける。
「王妃様。そこは主人とも相談して少し考えますわ」
シャーロットがいなす。
「本当に考えてくれる?
あなた会いに来るって言っておきながらもう15年もたつんだけど。」
「今度はきちんと考えます。」
「本当よ。クリスちゃん。お会いできることを楽しみにしているわ
また連絡しますね。」
王妃は電話を切った。








