暴風王女は奴隷商人とそれに手を貸した兵士を弾き飛ばします
アデリナらの乗った幌で覆われた4頭立ての馬車は市街地に入りつつあった。
窓がないのでどこを通っているかは判らなかったが、石畳の上を車輪が走っている音がしたので、街に入ったのが判った。
「そこの馬車。とまれ」
アデリナは乗っている馬車が急に止まった事に驚いた。
帝都ナッツァの手前だった。
街の手前で検問をやっていたのだ。
これで助けられる。
アデリナは喜んだ。
幌が開けられた。
兵士2人が顔を出す。
「おい。手かせがされているぞ」
兵士が指摘した。
「お役目ご苦労様です。こちらで如何でしょうか」
後ろから御者の男が金貨の入った袋を取り出して兵士に渡した。
兵士は中身を確認するとにやりと笑った。
「よく判っているではないか」
それを懐に入れる。
馬車の中で見ていた女たちは呆然としていた。
「うそ、何。あなたたち兵士なんでしょ。助けてよ。私たち攫われたのよ」
アデリナが思わず口を開いた。
そのアデリナの口を慌てて男が塞ぐ。
「へへへ、すいませんね」
男がアデリナの頬を張った。
アデリナは目の前が真っ暗になった。
「すまないな。姉ちゃん。俺たちもこれが仕事でね」
兵士は笑って言った。
女たちは信じられないように兵士を見た。
「うそ。そんな」
「皇帝が聖女様なのに」
女たちは呆然とした。
「ボフミエには神も仏もいないんだよ。皇帝が聖女様になったって?
聖女なんている訳ないだろ」
兵士はうそぶいて離れようとした。
その瞬間ぼろ布のように兵士が弾き飛ばされていた。
馬車の幌も爆風で飛ばされる。
「ヒィィィ」
横にいた兵士が悲鳴を上げた。
そこには怒りのモード満載のジャンヌが立っていた。
「おいっお前。今何した」
詰所からばらばらと兵士たちが剣を構えてかけて来た。
「貴様等もグルか」
ジャンヌは衝撃波をそのまま兵士たちに放つ。
5人ほどが壁に叩きつけられていた。
「貴様が責任者か」
階級章の高そうな男をジャンヌは睨みつけていた。
「貴様何者だ」
隊長が叫んでいた。
「こんな事をしてタダで済むと思うなよ」
「貴様。私が判らないのか」
ジャンヌが言い放った。
男はまざまざとジャンヌを見た
「げっ。暴風王女」
隊長は思い出していた。
ボフミエに現れた最強にして最悪の姫の話を。
ノルディン侵略戦においては3個師団を相手に殲滅させたという武勇伝を思い出していた。
そして、それが魔導師団長についた話も。
そう言う隊長も次の瞬間には襤褸布のように弾き飛ばされていた。
「誰が暴風王女だ。私はこの国の魔導師団長だ」
ジャンヌは叫んでいた。
「おいっ今その子に手を挙げた貴様。前に出ろ」
男を顎で指してジャンヌは言った。
「ここはボフミエ魔導国で奴隷は禁止されている。知っているか」
大声で言う。
周りに野次馬が集まりだしていた。
「俺はアマダ商会の手のものだ」
「何。尼さんだと。お前は男では無かったのか」
「何言っている。アマダだ」
そう言って前に出た男の顔を一瞬で殴り倒していた。
「女に手を出す奴は許さん」
「貴様。アマダに手を出してタダで済むと思うなよ」
男はすごんだ。
次の瞬間襤褸雑巾のように弾き飛ばされていた。
「ボフミエの民に手を出してタダで済むと思うなよ。次やれば地上から消滅させてやるよ」
ジャンヌがはっきりと宣言した。
多くの民がそれを見ていた。
「ライラ。ジャスティンを呼び出せ。こいつらの再教育もジャスティンにやらせろ」
「正義の騎士に…」
兵士たちは真っ蒼になった。
ジャスティンは曲がったことが大嫌いだった。
皇帝に対しても逆らうくらいだった。
今回奴隷を見逃していた点が判れば、どうなるかは火を見るよりも明らかだった。
「別に私がこのまま殺してやってもいいが」
ぎろりとジャンヌは目を見開いた。
「ヒェェェ」
「お許しください」
辺りにいた兵士たちは跪いて傅ずいていた。
アデリナは驚いた。
ノルディン帝国と言えどもその意向を気にすると言われている4大商店の1つアマダの手のものを一瞬で弾き飛ばした自国の魔導師団長を。
そう彼女はノルディンの侵攻を止めたマーマレードの英雄暴風王女ジャンヌ・マーマレードだ。
そして彼女とやり合った赤い死神も外務卿としており、今名の上がった正義の騎士ジャスティンもこの国にいるのだ。この国もまだこれから変われるんだ。
アデリナには希望の光が灯った。
皆さん、いつも読んで頂いてありがとうございます。
今回は1つ目のザマーです。
でも悪徳業者GAFAはこんな事ではびくともしません。
正義の王女の好意???いやいや暴走がクリスを窮地に立たせる!?








