アデリナは友達の家族に奴隷として売られてしまいました
すいません。いろいろ推敲を重ねて遅くなりました。
ここからおままごと王朝はどのように対処していくか。
国民が全てGAFAの奴隷と化してしまうのか。
暴風王女の我慢はどこまで続くのか?
赤い死神は?
シャラザールは?
乞うご期待!!
帝都ナッツァと同じような澄んだ青空は他の町々でも見られた。
帝都の青空はクリス達にこの先の希望を与えていたが、ミマスの青空は少女アデリナには絶望を与えていた。
手枷足枷されたアデリナらは馬車に乗せられて運搬されていた。
3日前、アデリナは自分の家の横に座り込んでいた。
お腹が空いていた。
心の中は絶望のあらしが吹いていた。
5年前まではまだ普通に食べ物は手に入った。
しかし、5年前くらいから人刈りによって働き手が減って、穀物の収穫量が減りだした。
父も王宮へ捕られてそれ以来帰って来なかった。
2日に一度は食べられたお米は1週間に一度になり、増税によってさらに少なくなった。
年に一度の収穫からしばらくすると食糧が不足しだし、子供たちも山や森に木の実や狩りに行った。
多くの人がそうするようになって山や森に食べられるものはどんどん減っていった。
先日聖女様が悪い皇帝を退治してくれたそうだが、それでも父は帰って来なかった。
そして10日前に森に木の実を探しに行ったアデリナが暗くなってから少しの木の実を取って帰って来たら母がいなくなっていた。
必死に探したが見つからず、周りの人に聞くと人攫いに攫われてしまったのではないかと言われた。
それ以来母の帰りを待つが、手掛かりは家の待ちに落ちていた母の櫛だけだった。
村の世話役に話に行っても、どこでもそんな話は多いと相手にもしてもらえなかった。
元々アデリナの一家はよそ者で魔術も使えずに、この村でも白い目で見られていた。
友達も自分らで生きていくだけで精いっぱいだった。
そのアデリナに隣のケビンの母親が家に来ないかとよんでくれた。
「さ、お食べ」
ケビンの母親は久しぶりにかゆをくれた。
「ありがとう」
アデリナは久しぶりに他人から与えられる親切にうれしくて涙が出た。
「辛かったんだね。母親がいなくなって」
ケビンの母がアデリナのかみを撫でてくれた。
アデリナはその胸の中で嗚咽した。
久々にアデリナの心が温かくなった。
気付いたらアデリナはケビンの母の胸の中で寝ていた。
アデリナはケビンの大声で目が覚めた。
「アデリナを売るってどういう事だ」
「でかい声を出すんじゃないよ。アデリナの母も金貨10枚になったんだ。アデリナも同じくらいになるだろう」
「人買いに売るなんて人間のやることか」
「何言っているんだい。生きていくためには仕方が無いんだよ。金さえ入れば食料も融通してくれるって言うんだから」
アデリナは母がとなりの友達の親に奴隷として売られたことを知った。
おばさんのやさしさも、アデリナを人買いに売るためだったんだ。
アデリナは皆が寝静まった時に逃げようとした。
しかし、気付かれて捕まってしまったのだった。
友人だと思っていたケビンはアデリナが目を向けると目を逸らしてくれた。
馬車にゴトゴトと揺られてアデリナは人生に絶望していた。
これから人身奴隷として他国に売られるのだろうか。
若い女が奴隷として売られる先など、娼館か嫁の貰い手の無い他国の寡だろう。
父は宮殿で殺され、母も奴隷として売られた。
そして今度は自分だ。貧しくて、お腹が空いたことも多々あった。
父親がいなくなって、母と二人きりだったが、食料が乏しくともまだ生きていけた。
そして、母がいなくなって今自分も売られた。
友達だと思っていた男の家族によって。
もう絶望しか残っていなかった。
「予算がないだと!」
内務卿になったオーウェンは復興予算の掛け合いに財務卿のメルヒオール・バウナを訪ねていた。
「前皇帝陛下が王宮の地下の太古の遺跡の発掘に多大なお金を使われましたからな」
メルヒオールは太った体を揺らして言った。
「ほとんどが徴用した人々をタダで使っていたのではないのか」
オーウェンが言う。
「人件費はかかっておりませんが、食費はかかります。
それ以外に魔人の育成には高価な魔石が大量に必要になりましてな。あと武器の購入費用もかかっておりまして」
「世界征服とか言うふざけた理由でか。卿は何も諫めなかったのか」
「諫めなかったから命が続いていたわけで」
オーウェンは頭を抱えた。この無能な官僚共が皇帝の暴虐を許していたのだ。
「何という国なのだ」
オーウェンが宣う。
「オーウェン。父の暴虐をメルヒオールでは止められなかっただろう」
その皇帝の息子で暴虐を止められなかったというか恐れていたヘルマンがかばう。
「私たちも同罪ですが」
ヘルマンの取り巻きだったシュテファン・キッツィンゲン子爵令息も言い訳する。
彼らは人材不足の折、人脈もあるという事でマーマレードから帰国させたのだ。
今はオーウェン付の事務官僚として働いていた。
王族の多くは収監されたのだが、ヘルマンはクリスの友人という事で許されていた。
「まあいい。金が無くても人力で何とかやって行こう」
オーウェンは二人に言った。
しかし、金が無くてはどうしようもない事にオーウェンが気付くのはもう少し先だった。
ドラフォードでも空は青かった。
ランベルト・アマダは広大な庭を見やりながら庭園で午後のお茶を楽しんでいた。
世界を影で牛耳るGAFAと呼ばれる四大商店の一つアマダ商店の会長だった。父は一代でこの商店をGAFAと並び称される大商店に築き上げた。ランベルトはそれを更に大きくしようと色々画策していた。
「ボフミエの小娘からはまだ何も言ってこないのか?」
補佐をしているモーリツに訊ねる。
「何も」
「さすがおままごと王朝だな。自らの国の危機が判らないのか?」
「まあクリス様らもお若いですから。海千山千の旦那様方に対してはお相手も出来ますまい」
笑ってモーリツが言った。
「それでは面白くも無いか。メルヒオールに借金の催促を送ってくれ」
ランベルトはモーリツに指示を出した。
「さて、おままごと王朝は果たしてこの危機をきちんと乗り越えられるかな」
そう言うとランベルトはニヤリと笑った。








