クリスの戸惑いと大国皇太子登場
皆さんお忙しいところこのお話読んで頂いてありがとうございます。
クリスが皇帝と言うか筆頭魔導師になり、建国編というか国の立て直し編です。
いきなり飢饉にクリスを情婦に出せば食料を援助してやると悪徳商人たちから言われて、さあ大変。貴族の反抗や商人たちの策略近隣諸国の思惑におままごと政権と揶揄される彼らがどう対処していくか。出来たての弱小国ですが、その戦力たるや最強。見た目可憐なクリスを虐めていると・・・・
怒りの鉄槌を下します。
毎日更新頑張ります。
夜の帳の降りる頃クリスが大きくため息をついた。
ボフミエの王宮はジャルカによって大きく破壊されており、その仮建屋の中でクリスは青い眼差しで外を見て悩んでいた。
「どうした?クリス!」
ジャンヌが聞いてくる。
「あっ、お姉さま。不安なんです。
ボフミエの筆頭魔道師なんて私には無理です。お姉様がボフミエの皇帝になって頂ければ良いのに!」
クリスはジャンヌに願望を言う。
「何言ってるんだ!
ボフミエの建国の三魔道師に選ばれたのはクリスだ。私じゃ無くてね」
「そうそう。クリス嬢。あなたが選ばれたのですから。我々もできる限りお手伝いしますから」
アレクが言う。
「本当ですな。クリス様。お二人のお約束、契約書か何かにしておいた方がよいですぞ!」
後ろから入ってきたジャルカが言う。
「しかしジャルカ様。お姉様達は学校があるのでは?」
「何言っているクリス。
王立学園なんて目じゃないぞ。お目付け役も殆ど居ずに好き勝手に出来るなんて!」
「そうだよ。クリス嬢。政治の練習がこんな地で出来るなんて本当にラッキーだよ」
二人はピクニック気分で言った。
「でも皇太子殿下の皆様にお手伝い頂くなど」
「気にするな。どのみち国政への参加の練習はしなければいけないんだ」
「それをここでやると考えれば良いよ」
二人はお気軽に言う。
どのみち国政にはいやと言うほどこれから関わっていくのだ。本来でも修行期間があるはずで、うるさいお目付け役もたくさんいるはず。
それが仲間とワイワイやりながら出来るなんてこれ程面白いことはない。
「お二人とも政治は遊びでは無いですぞ」
ジャルカが釘を刺す。
この二人に好きにさせたら国民はたまったものではないはずだ。と言うか一大侵略国家になりかねない。赤い死神に暴風王女、無敵の戦神シャラザールに正義の騎士とその戦力は下手したら世界最強にも十分になり得た。
ボフミエ国内は元より他国からしても脅威かも知れなかった
「気にしない。気にしない。気難しいことは全てオーウェンがやってくれるって」
ジャンヌが他人事の様に言う。
「ハックション!」
オーウェンは盛大なくしゃみをした。
誰かがろくでもない噂をしているに違いない。
目の前の騎士が汚いものでも見るように、実際に風呂には一週間くらい入っていないが、オーウェンを見下す。
「な、なんでこうなった」
オーウェンは頭を抱えていた。
愛するクリスが学園祭の演劇の時にボフミエ皇帝に攫われた。
転移して誘拐したらしい。
ジャンヌらは転移が出来るがオーウェンは出来ない。
無理やり何とかしてくれとジャルカに頼み込むと、人間ミサイルにさせられて敵の真っただ中に撃ち込まれていた。アレクが顔をそむけるはずだ。生きていたのが不思議なくらいだった。
ボロボロになりながらもクリスを取り戻そうとしたが、既に逃げられた後だった。
もう人間ミサイルはこりごりと馬を必死に走らせるがやはり馬は遅い。
飲まず食わずで走らせるが数日駆けてやっと帝都ナッツァにボロボロの状態でたどり着くが、クリスは南の森で東方第一師団が確保したとのこと。
喜んで南の森に行くが、行ってみると行き違いで帝都に帰ったとのことで、もう不眠不休で何とかボフミエ帝都ナッツァに再び来てみれば、愛するクリスはいつの間にかボフミエ皇帝になっているではないか。
そのボロボロの恰好のまま名前を王宮の入り口で告げても、不審者に間違われる始末だ。
「俺はオーウェン・ドラフォード。クリスの婚約者だ」
「ハンッ。何を言ってやがる。クリス様に婚約者なんていらっしゃらないぞ」
城門に立っていた騎士がきっぱりと言った。
マーマレードの王立学園を卒業したらドラフォードへ皇太子妃として連れて帰ろうと考えていたのに、
自分の知らない間にボフミエの皇帝になるなんて、どういう事。
ボフミエの皇帝なんてなったらドラフォードの皇太子の自分と簡単に結婚できなくなるじゃないか…
「貴様。人の言うことを聞け!」
オーウェンは考えていたので騎士の言うことを良く聞いていなかった。激怒した騎士がオーウェンを外に叩き出そうと出した手を無意識にかわす。
男はそのままオーウェンの上に倒れ混み、オーウェンが投げ飛ばした形になった。
「おのれ!」
騎士の後ろに控えていた男達がオーウェンに掴みかかろうとする。
「待て!」
その後ろから声がかかる。
その後ろには立派な成りをした騎士が立っていた。
その騎士の仕草からは相当の手練れだと知れた。魔力量も半端ではない。
「いつからドラフォードの皇太子殿下は嘘つきになられたのですかな?」
鋭い瞳で睨み付けられる。
「嘘などついていないが」
オーウェンはしらばっくれる。
「クリス様には婚約された方はいらっしゃらないはず」
はっきりと男は言う。
「申し込んではいる」
「そんな男なら山ほどおりますぞ。ここの元皇帝も申し込んだとか」
「あのくそ皇帝もか」
歯をギリギリ噛み締めてオーウェンが言う。
「クリス様はこのボフミエの宝。他国には渡す訳には参りません」
男ははっきりと言った。
「貴様名前は」
「これは申し遅れました。私クリス様の筆頭騎士を努めておりますジャスティン・ ギンズバーグ と申します」
下げた頭を上げたときに二人の間に火花が飛ぶ。
「あっ皇太子殿下!」
ジャスティンの後ろからミューラー東方第一師団長が現れた。オーウェンに駆け寄る。
「ミューラー。こんなところで会うなんて」
「それは私の台詞です。本国にすぐ連絡してください」
「何でだ?」
「国王陛下がみつけ次第連絡せよと」
「私はクリスに会いたいのだが」
「後でご案内しますよ。その前にすぐ」
オーウェンはやむ終えずミューラーに連れていかれた。
そして、徹底的に絞られた事は言うまでも無かった。








