婚約破棄されました クリス怒りの鉄拳
「いえ、何も無かった事はありませんわ」
その時クリスが前に出た。
止めようとしたオーウェンにやさしく頷く。
ー何この感じー
ジャンヌは最悪なことが起こった予感がした。
「これはミハイル嬢。お久しぶりです。」
慌ててアレクがあいさつする。
「お久しぶりです。アレクサンドル皇太子殿下。
相変わらずお姉さまと仲良さそうで結構ですね」
「いえいえ、ミハイル嬢のようにうまくいってないですよ」
こういいながらアレクは地雷を踏んだのに気付いた。
しまった。言い間違えた。それも最悪のタイミングで。
思いっきりジャンヌの肘鉄を食いながらアレクは後悔した。
「ええ、ええ、私どもはうまくいっておりませんわ。
たった今、エドワード皇太子殿下から婚約破棄を言い渡されたところです」
「えっそんな馬鹿な。あなたのように美しい方を婚約破棄するなどご乱心されたとしか」
「殿下。心にも無い事を。声が震えていらっしゃますよ。」
冷たい視線をクリスはした。
「お姉さまも最近は北方で楽しんでいらっしゃるそうですね。
ノルディンの皇太子殿下と。私だけこんなところにおいて。王妃様のお相手させて。」
「いや、待て。クリス。そんなひどい事したとは」
「あなたの弟様から散々言われましたわ。心が冷たいとか
平民の気持ちが判らないとか。勉強だけできる人の心の無い機械だとか。」
「いや、クリス。そこまでひどいことは言ってないぞ」
「心に思っていたんでしょ。目に出てましたよ」
きっとしてクリスは見た。
日頃クリスはおしとやかだ。
何をしても怒らないように見える。
でもある一点を越えるとその時点で終わりだった。
「今まで私なりに必死にやってまいりました。
本来要領は良くないし、お転婆で姿勢もなっていないし物理も全然できませんし。」
ジャンヌからエドに視線を移す。
「未来の王妃になるんだからと。少しでも手順を間違えたら一からやり直させられて。
でも、私なりに必死にやってきたんです。
でも、物理がどうしても覚えられなくて。
そんな時に王妃様のお妃教育が何故か終わらなくて。
次の日物理のテストで徹夜しても終わらなくて。
誰かに相談したくても異性に話しかけたらいけないとか
高等学園に入ってからは忙しくてずうーっと勉強とお妃教育で友達とも遊べなくて。
なのに、カバンひっくり返されて足蹴にされて、助けてくれたスミス君に対して色目を使ったとか言われて。
やっとテスト終わってほっとしたらエド。あなたなんて言った」
クリスの目は座っていた。
「いや・・・」
「出来る奴は平民の苦労が判らないって言ったじゃない。
あなた今回勉強したの?
私よりしたって言えるの?
私その日は徹夜明けよ。
ええ ええ そうでしょうとも。私はバカよ。
要領も悪いわよ。
でもね、あなた。自分だけ異性と仲良くなってパーティにはその子と出るって。
私は冷たくてかまってくれなかったとか思っているんでしょ」
クリスの手は震えていた。
「そんな余裕がどこにあるのよ。
来る日も来る日もほとんど睡眠時間削ってやっても終わらなくて。あなたと違って異性と話すことはおろかご飯食べる時間もほとんど無かったわよ。
王妃様もおかしく無い。
なんで自分の息子は異性と遊んでいるのに、私は話してもいけないのよ。
挙句の果てにサマーパーティのパートナーもいないなんて。
高等学園に入って初めて泣いたわ」
それでウィルが召喚されたんだ。
その時にすぐに馬鹿弟を成敗していれば…・
ジャンヌは遅かった事に気づいた。
「ウィルありがとう。そんな時に慰めに来てくれて。
でないと私どうしていいか判らなかった。
本来ならこんなパーティ出たくなかった。
でも出なかったらまた王妃様になんて怒られるか判らない。
下手したらあなたが皇太子に優しくしていないから他の女が出来たのよとか言われかねない。
死ぬ思いで、むちゃくちゃ勇気出して出てきたのよ。
無理やり忙しい弟についてきてもらって。
でも、無理してきたこのパーティで婚約破棄されました。
馬鹿ですよね。
お妃さまに言われてその通りに必死にやって
でも、その子供たちは好きにやっているのに。
そんな中私をかばっていただいたオウには本当に感謝の言葉しかありません。
本当にありがとう。
こんなにうれしかったことありません。」
クリスは泣き崩れた。
「クリス嬢」
その肩に後ろからやさしくオーウェンは手を添えた。
「ありがとう。オウ」
クリスは一歩前に出た。
「そこまで一生懸命やってきたのに、振られちゃった。
王妃様のいう事必死に守ったのに。
嫌だったのよね。エドは。」
やさしい顔でエドを見る。
「いやおれは・・・・」
何か言いたそうだがエドは何も言えなかった。
「でもね、私も学園もっと楽しみたかった。
もっと遊びたかった。
未来の王妃だから我慢しなければいけないって思っていたのに。
必死にやってきたのに。
今振られたら私の青春何だったのよ
もっと前に嫌だって言ってよ
あなたがもっときちんとお母様の面倒見なさいよ。
なんで私ばっかりひどい目になるの
私の青春返して」
クリスはエドの前に立つと襟を掴んで持ち上げていた。
「婚約破棄。上等よ。こっちから破棄してやるわ」
クリスは拳を固めた。
「馬鹿野郎」
叫び声とともに皇太子は10メート以上殴り飛ばされていた。
とりあえずパーティーはここまでです。
でもざまー編は更に今章の終わりまで続きます。
お楽しみください。
評価まだの方はして頂けるとありがたいです。








