ボフミエ最終戦1 大国軍も国王命令を無視してクリスと一緒に戦います
遅くなってすいません。
ついにこのコーナーも最終コーナーに差し掛かりました。
今度は戦神シャラザールがついに出現します
魔王が勝つかシャラザールが勝つか
数話後に判明します
請うご期待!
「何だと、王城がマーマレード軍によって占拠されただと。残した兵たちはどうしたのだ」
アーベルは報告をしに来た兵士を睨みつけていた。
大半の魔導師を連れて来たとは言っても皇帝騎士団等1000名以上の兵士は守備に残してきたのだ。
そう簡単に魔法の塔で守られた王城が落ちるとは思えなかった。
「はっはい。マーマレードの軍千名とそれに扇動された群衆1万人が城門を突破、寡兵敵せず、防衛隊は全滅。魔法の塔も破壊されたと」
兵士が震えながら言う。
キールの港町を占拠されてまだ1日、1000名もの兵士が王城にたどり着くはずは無いとサロモンは不審に思った。実際はマーマレード側の人数はジャンヌら4人と100名強の群衆だったとはさすがに思わなかったが。
「王城に戻りますか?」
サロモンが聞く。
「ふんっ王城などどうでも良い。魔王さえ復活すればこちらのものだ。先に小娘を捕まえれば事は済む」
アーベルが冷静さを取り戻して言った。
「よし、全軍転移用意。反逆者たちの拠点を制圧してクリスを捕えろ」
サロモンは指示を飛ばした。
「クリスティーナ・ミハイルめ。
よくもここまで私をこけにしてくれたな。魔王の憑代となってせいぜい苦しむがいい」
ボフミエ皇帝アーベル・ゲーリングは高笑いした。
一方ベン・ドーブネルからクリスの身柄確保の報に沸き立つ東方第一師団本陣を尻目にミューラーはブスっとしていた。
「たかだかマーマレードの1侯爵の娘ごときに何故そんなに振り回されなければならん」
副官のレオン相手に愚痴る。
国王の戦線維持の命令もベンのせいで守れず、後で命令違反を問われるのは確実、その件でも頭が痛いのに、何故、他の兵士たちが下士官も含めてこんなに沸き立っているのかミューラーには判らなかった。
当然、クリスとは会いたくなかったし、わざわざクリスのいる地から1キロ南に下ったところで陣地を張ったてのもクリスに会わなくても済むようにしようとしたからだ。
「何だと、小娘があいさつに来ただと。必要無いと追い返せ」
ブスっと本陣のテントの中で指示を各地に飛ばしながらミューラーは嫌そうな顔をした。
「それが…」
報告に訪れた兵士が気まずそうに言うと横にどいた。
そこにはニコニコ笑っているクリスがいた。
「お忙しいところ無理やりお邪魔してすいません。
クリスティーナ・ミハイルと申します」
クリスが頭を下げる。
「あ、ミューラー・バーミンガムと申します。
どうも、御見苦しいところをお見せしてしまいましたな」
しどろもどろにミューラーは誤魔化そうとする。
「高名なミューラー・バーミンガム将軍がいらっしゃると聞いて、お忙しいのに都合も聞かずに無理やりお邪魔してしまいました」
「高名など、まだまだ何の戦功も無い若輩者ですよ」
言いながら何も知らないのにおだてるかとミューラーは心の中では思った。
「べラサの退却戦にてにしんがりを務められてドラフォード軍の壊滅を防がれた沈着冷静な振る舞い、
また、レトラ砦の戦いではノルディンの挑発の罠を見抜かれた御慧眼は素晴らしく敵に回したくはないとアレクサンドロ皇太子殿下がおっしゃっていらっしゃいました」
「えっノルディンの皇太子殿下がそのように…」
ミューラーは驚いた。両方とも小さな戦いで歴史の教科書にも載っていないし、自軍でも知っている奴は少ないだはずだ。
それを敵国の赤い死神と言われた皇太子が褒めてくれた。そして、その事をこのクリスが知っているという事が驚きだった。
「オーウェン様も常日頃から1軍の将を任すなら閣下だとおっしゃっていらっしゃいました」
「いやいや、それがしなどまだまだですよ」
謙遜するが悪い気はしない。
というか重鎮共はまだまだ戦功が足りんと会えば言う事しかしないし、ここまで的確にほめられると悪い気はしなかった。しかも、自らが推している国王ですら面と向かって褒めてくれたことは無かった。
この小娘は皆の前でそれも若輩者とはいえ今売り出し中の2人の皇太子が認めてくれているとほめたたえてくれたのだ。これは嬉しくないはずはない。
これで老人共は落ちたのか。
ミューラーはこれはクリスの手だとは思うし、警戒しようとするが顔がにやけるのはどうしようもなかった。
しかし、ドラフォードの虎の子の軍をボフミエとの戦いに危険にさらそうとは思わなかった。
が
「大変です。ボフミエ皇帝軍が攻めてきました」
ボフミエの反乱軍と思しき伝令が慌てて飛び込んできた。
「判りました。すぐに戻ります」
クリスが言う。
「将軍閣下とお会いできて良かったです」
クリスはニコッと笑った。
「それでは」
クリスはそのまま出ていこうとする。
「クリス殿。どうされるのですか」
思わずミューラーは聞いていた。
「ボフミエの皇帝と戦います」
クリスは振り返っていった。
「皆様方はドラフォードの方々です。
ここでボフミエの皇帝と戦っては外交問題になります。
ここは我々の戦いをご覧ください」
クリスが言い切った。
「はあ、何をおっしゃいます。
このミューラー・バーミンガム。未来の王妃様を見捨てたとあっては祖国に言い訳できますまい。
ここは我々も一緒に戦わして頂きます」
今まで思ってもいなかった言葉が口から出てきた。
その言葉に驚きもしたが、ここでかよわい女性を戦場に一人で行かすわけにはいかなかった。
そんな事が知られれば後程軍の重鎮共というか父も一生許してくれないだろう。
国王がなんだ。兵士たちも戦おうとしている。
これを止めるのはミューラーにはできなかった。
「しかしミューラー様。あなた様のお立場も」
「あなた様を見捨てれば未来の国王に許されますまい。
戦神シャラザールの再現と言われるあなた様と共に戦いましょう」
そう言うとミューラーは命じていた。
「全軍攻撃開始。敵はボフミエ皇帝」
その言葉と共に戦場にドラフォードの進軍ラッパがたかだかと響き渡った。








